痛む胸を誤魔化して 脈動する大地の音を聞きながら横になり、涙の流れるに任せて泣いて。流石に落ち着いた頃、見計らったかのようなタイミングで翔蟲の羽音がした。
「なァにやってんだァ?」
「……音を、聴いてる」
「音?」
不思議そうに見下ろす目をちらりと見上げて、黙ってまた瞼を閉じた。
「この音に、溶けたらいいのにって」
生命の円環に還りたい。ずっとそう願い続けている。それを実行するだけの勇気が、まだ無いだけで。
「…それは、ダメだ」
驚いて目を開けると、思ったより近くに顔があってまた驚いた。
「お前はまだ、死んじゃダメだ」
どうして。
「お前は、まだ、お前の人生を生きてねェ」
ぐい、と引かれてそのまま腕の中に閉じ込められる。ぎゅう、と抱き締めてくれる腕は逞しくて、優しくて、温かかった。
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