明けの星ごくごくたまにではあるが、眠るアグラヴェインが涙を流していることがある。
ランスロットが最初にそれに気づいたのは、本当に偶然だった。
深夜になんとなく目が覚めて、そのまま傍らに眠るアグラヴェインの顔をじっと見つめていた。
その、息をしているのか不安になるほどに静かに眠る彼の目元に、すっと光の筋が流れ落ちるのが見えたのだ。
涙だ、と思ったのはほとんど直感だった。
その時は見間違いかとも思い、その次に見たときには起きているのかとしばらく様子を窺ったが、そのどちらも違っていた。
常夜灯の微かな灯りの下、横臥しているアグラヴェインの漆黒の睫毛の下にゆっくりと涙の雫がもりあがり、やがて目頭から細い鼻梁に向けて滑り落ちてゆく。
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