二度と喪わない何の因果か、アスク王国に召喚されて早数節が経った。
セーバー始め、優秀な団員達の健闘の甲斐あってかちらほら依頼も増え出した“シェズ傭兵団”は徐々に軌道に乗りつつある。
元の世界では雇われる側だった自分が、まさか自分の団を持つことになるとは。未だに団長などと呼ばれるのが気恥ずかしくもあるが、思いの外現状の環境に心地よさも感じていた。
「よう、団長。朝から精が出るな。」
そんな明くる日。団を構える小さな砦の近くで訓練を行っていると、隻眼の男性に話しかけられシェズは剣を振る手を止めた。
彼は団員のひとりであるセーバーだ。強面であまり過去については語らないが、腕は確かでセリカ王女からの信頼も厚く、また面倒見がよく紳士的な面も多いようでジェニーを始めアスクの女性達にも好かれている。年の功というものか、経験も場数もシェズとは段違いで助言を貰うことも多い。
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