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    いろいろ置き場(現在全部ローラン)
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    オリロラ/全年齢/ED後

    リラ
    「これから俺がすることを、ちゃんと拒んで欲しいんだ」

    〜注意点〜
    残念ながらめちゃくちゃいい所で終わる(9/3追記:「リラとライラック」が続きです!)
    捏造多めの捏造が見ものシリーズ

    #Library_of_Ruina
    #LibraryOfRuina

    リラ「ゲストを呼び寄せてたにも関わらず、ゲストルームが無いなんてな」
    「まあ、ここでのゲストルームは本棚だからな」

     ローランがそう言いながら自身の部屋の扉を開けてくれる。その部屋に入る前からいくつもの本が見えて――、そしてオリヴィエはさっきの文句を取り消したくなった。
     この図書館で過ごすローランの自室だ。かつて背中を守りあった戦友が、今はどんな司書として過ごしているのかずっと気になっていた。それが垣間見えるとなれば、むしろゲストルームが無くて良かったのだろう。

     オリヴィエはこの図書館までハナ協会の指示で来ている訳ではなかった。多数の手続きを経て、個人の意志ではるばる外郭までやってきたのだ。協会の制服ではなく、私服でローランの部屋にあがるという行為はオリヴィエに遠く懐かしい過去を思わせた。

     部屋に入ると、ベッドとデスクが置けてなお余裕のある空間があって、壁は本棚になっていた。本棚には先程見えたようにいくつもの本が並んでいて、所々には本以外も置いているようだった。狭くは無いはずだが、この部屋の雰囲気とは異なるソファが場所を取っている。先程ローランの部下である司書補たちが慌てて運び入れていたところから、普段この部屋には無いものなのだろう。

    「お前の部屋に小難しそうな本があるのって、見慣れなくていいな」
    「俺も一応司書だしな。司書らしいことがようやく出来てるって感じだよ」

     ローランはそのソファに座り込む。曰く、今日はソファで眠るようで、オリヴィエはベッドを使ってもいいらしい。部屋の主を追いやったようで気が引けそうなものだが、ここまで来るのは大変な道のりだった。普段乗らないバイクで外郭の道なき道を駆け、任務とはまた違う疲労を感じていたオリヴィエは、素直にそのもてなしを受けることにしたのだ。
     先程は食事も風呂も用意してもらった。そのうえで、しっかりした睡眠が取れるのはこの上ないありがたい休息だった。

    「お前が司書らしくするなら、俺もゲストらしくちゃんとしたベッドを使わせてもらうからな」
    「どうぞ〜」
    「外郭に来るのがどれだけ大変か思い知ったよ」
    「本当によく来たよな。ここを探すの大変だっただろ、どうやって来たんだよ……?」

     ローランはそう聞いてくる。いつかは聞かれると思っていたので、オリヴィエは素直に答える。

    「以前持ち込んだあの装置に、発信機がついている」
    「なんだって!?」
    「図書館に向かった俺がそのまま消息を絶った時。一定の期間が経ってから、発信機の位置が公開されることになっていた」
    「なっていた? 公開はされていないのか」
    「早く戻れたから、この場所は俺しか知らない」

     あの時の図書館は見かけ上、L社跡地の霧の中に存在していた。しかし本当にその中に位置するのか定かでは無かったのだ。これは協会のフィクサーとして暴かねばならない事のひとつであった。
     ここまでやっていたのだと教えればローランに怒られるかもしれないとオリヴィエは覚悟していた。
     しかし、ローランが気にしたのはそこでは無かった。

    「そうか、死ぬ準備もして来てたんだな……」

     ローランはそう呟いて眉を寄せた。この部屋に入る前に、ロビーでこれまでの事は話し合ってきた。お互いにやるべきことをやっただけなのだと、そう言い合った。しかし、ローランの心の澱が消えることは無いだろう。そしてそれはオリヴィエも同じだった。

    「お互いどうしようもなかっただろ。それよりも、あの装置を取っておいてくれて良かったよ」
    「うん…あれは、お前の形見だと思って持ってたんだ……。お前の事も、あの瞬間も、少しでも忘れないようにしなきゃって。ここでやってきた数々の瞬間を、無駄にしないために」

     ローランの声は、何かを抑えるようだった。無理もないだろう。あれは、ローランが前に進むために、沈まないよう足場にしてきたことの一つだ。振り返ることが出来る今だからこそ思う苦しさもあるだろう。
     後ろめたいのか、ローランは顔を伏せる。だが、昔のように平気な振りをされるよりは良いだろう。オリヴィエに出来ることはそう多く無いが、座ったローランの目線までしゃがみ込んで言う。

    「でも、ローラン」

     そしてオリヴィエはローランの手を両手で握る。そして、遠いいつの日かに寄り添ったいくつもの記憶を思い出して告げる。

    「それがどんな理由だったとしても……、俺を忘れないようにしてくれたってこと自体が、今、無駄にはならなかったんだ」

     ローランと目線があって、ふと、オリヴィエは自分の抑えた感情の事を思ってしまう。あの日一度命を失って、それより前にはお互いいくつもの後悔があった。こうやって向かい合って話せるこの瞬間は奇跡のようなものだった。そしてそれは、自分を忘れなかった愛しい存在がいるからある奇跡なのだ。

    「ローラン」
    「何?」

     二度と会えないと思っていた上に、今後また会えるかは分からない。それに、都市で待ち受ける「規約」だってある。そう思えば、オリヴィエは、その抱えた心が伝わらずに潰える道へ進むことは出来なかった。

    「これから俺がすることを、ちゃんと拒んで欲しいんだ」

     ローランに一つ宣告をする。
     何をされるのか、ローランは分かっていないだろう。しかし真剣な声音で伝えたからだろうか、ローランは怪訝な顔をする。
     そしてローランは何も言わなかった。何も言わずに、ただ待っている。
     オリヴィエがこれからしようとしている事とは裏腹に、ローランの表情は、戦場で相手の出方を伺う険しさに似ていた。警戒されているのだ。

     オリヴィエはゆっくりと手を伸ばす。警戒を解くようにゆっくり、弱々しく、その手のひらをローランの頬に添える。
     両手で頬を包んで、右手の親指でローランの唇をそっとなぞる。ローランはびくっと肩を震わせる。きっともう気づいただろう。オリヴィエはローランが拒んでくれるのを少し待った。しかしローランは、何もしない。
     理解が追いついていないのだろうと判断して、それをいいことにオリヴィエはローランのその唇に自らの唇をギリギリまで寄せた。
     それでもローランは、何も拒まない。

    「ローランっ…このままだと……」

     そう呟くように伝える時、すでに唇が少し触れてしまう。思わず感じる生暖かい感触にもっと触れたくなる。ローランが呼吸するのが分かって、吐息が混ざり合う。もう少しくらいなら、と近づけば、そこに二人を隔てる空間はもうない。生暖かい唇に触れている。そしてローランは、それを受け入れている。

    「なんで…、お前っ、」
    「っ…」

     喋りながら、途切れ途切れに口づける。笑ってあしらわれたり、無言で拒まれたかった。そうでもしてくれなければ歯止めが利かなくなる。

    「拒んで、くれないんだよ…っ」

     角度を変えて、そのまま長く口づける。唇を少し舐めてもローランは受け入れている。気を使っているのだろうか?
     なすがままにされるローランの唇に舌をねじ込む。ここまですればさすがに押し退けられるだろう。ローランの舌の裏側を舐めて、出方を伺えば、ローランはオリヴィエの肩に手を置いた。そのまま突き飛ばしてくれ、とオリヴィエは寂しげに思った。それなのにローランは、オリヴィエの舌の側面を舐めてくる。

    「ろ、ら…っ!」
    「ふ…ッ」

     舌が絡み合うように重なる。隠してきた抑えきれない気持ちを見せて、それがただ伝わってくれるだけでよかったのに。ローランはオリヴィエの一挙一動全てを受け止めている。さっきまで雑談していた旧友と、恋人のような深いキスをしている。

     しばらく絡み合って、どちらからともなく離れる。ここで元に戻れるなら良かったのに、ローランの頬は朱に染まりオリヴィエをじっと見つめている。

    「なぁ…嫌じゃないのかよ……」

     ため息混じりにローランに聞く。ずっと無言だったローランが、湿った唇でようやく答える。

    「拒めるわけ無いだろ……」
    「俺に気を使ってるなら、それは俺のためにならないからやめてくれよ」

     そんなはずはないのに、まるで次の手を待つように、ローランはオリヴィエを見ている。もし拒む理由がないとしても、受け入れる理由も無いはずだ。熱を持った瞳に見えるのはきっと一線を超えてしまったからで、もっと触れたい願望が見せる誘惑の姿なのだろう。
     オリヴィエはそう思って、まずは落ち着こうとする。しかし、ローランは思いもよらない事を告げるのだった。

    「そうじゃなくて…。ずっと昔、都市悪夢の任務をしてたくらいの頃……。俺は、オリヴィエが好きだったのかもしれない」
    「なに!?」

     初めて聞く事実。突然の過去の告白にさすがのオリヴィエも動揺する。脳裏ですぐさま一字一句繰り返してみても、聞き間違いではなさそうで、心のざわめきを抑えられない。

    「というより、なぜかオリヴィエは俺を好きなんじゃないかって思う時があって、少しお前を思ってみたことがあるんだよな…」
    「うわ、なんでだよ…」
    「うわって言うなよ、本当にそう見えたんだから」
    「いや…、お前が自意識過剰って話ならそうじゃなくて、なんで気づかれてたんだよって話だ」
    「本当に好きだったのか……」
    「そうだよ……。付き合うとか、そういうのは考えたこと無いけどな」

     実は両思いだった、というのとは少し違うようだ。ローランのそれは恋ではないのだろう。曖昧なオリヴィエへ真摯に向かい合おうとしてくれた真心だ。
     残念ではなかった。そもそもオリヴィエ自体、ローランと結ばれたいと思ってはいなかった。
     ただ、ローランには自分を受け入れてくれる真心があって、実はすごく優しくしてくれてるんじゃないかと微笑ましくなる。
     しかし、その束の間にローランは言う。

    「それに、オリヴィエに手出されるのは初めてじゃないし……」
    「俺が手を出したって!? どれもお前を落ち着かせる流れで起きたことじゃないか!?」

     急に言いがかりのような事を言われる。
     確かに、ローランと目まぐるしい日々を送る頃、勢いだけで体の関係を持ったことがある。経験はあるが、それは愛情表現ではなく、お互いに持て余すもやもやした感情のはけ口にしていたのだった。

    「オリヴィエから一方的にってのも何回かあっただろ!」
    「でも無理やりとか、暴力じみたことはしてない!」
    「でも流れでセックスはした!」
    「うーん…そうだな、そうだけどな…」
    「流れじゃないセックスもしてみる?」
    「え…?」

     急に聞こえた言葉に驚く。
     今のはお誘いの言葉ではなかっただろうか? そして、本当に言いがかりをつけてきた人の発言だろうか?
     思わずローランを見つめると、平然と言っておいて恥ずかしくなったのか、手で顔を押しのけられる。どうやら聞き間違いではないらしい。そんなことを言われてしまえば、オリヴィエとしては歓迎なのだが、キスをする分の覚悟しかしていなかったことが理性を押し留める。

     そして不思議に思う。あの頃と状況が違う今、ローランはどうしてそこまで受け入れようとしてくれるのだろうか?

    「こういう所にいると性欲がおかしくなるのか?」
    「んなわけないだろ」
    「それなら……、本気で誘ってるのか? 俺を試したりしてるんじゃなく?」
    「あー…本気だけど、その…もしかしたら昔好きかもしれなかったからとか、そういう重いのじゃなくて……? 記念に…?」
    「記念でそんなことするな!」
    「いいじゃん別に」

     押しのけてくる手のひらが耳の裏辺りを掠めて、後頭部へ向かう。そのまま抱き寄せられるようにローランに引っ張られる。脳裏が見せた誘惑だと思った姿は、幻ではないらしい。やはりローランは続きがしたいのだ。そして、そう欲しがられるなら、オリヴィエが理性を追いやる事は容易い事だった。

     しゃがむ体勢では近づけず、しかしソファへ座りなおすまでは我慢できず床からローランを引っ張り返すと、腕の中へ素直に滑り込んでくる。それを見たオリヴィエは、懐いている大きな飼い犬のようだと思った。愛おしくて撫でたくなるのをまずは堪える。
     腕の中でローランは言った。

    「オリヴィエ、今でも思ってくれていてありがとう」
    「お前と同じで、ただ忘れなかっただけだ」
    「じゃあ、絶対、今日の事も”忘れちゃだめ”だ」
    「……お前、知ってたのか」

     ローランは頷く。
     オリヴィエがあえて伝えなかったことが、ローランには見透かされている。

    「俺に拒まれても都市に帰ればそんなの記憶ごと消されるんだもんな?」

     そしてそう告げた。
     何もかも気づいていたらしい。

     外郭へ出て、そして再び都市へ戻る以上、都市に不要な情報を持って帰ってはいけない。邂逅を終えて都市に戻ったのなら、外郭のいらない存在の情報を消す記憶抹消手続きを受けることになっているのだ。

    「ローラン…、お前の洞察力が鈍ってなくて良かったよ…。お前も分かるだろ? 不純物の情報を持ってるってだけでかなり危ないんだ」
    「そうだろうな」
    「でも、お前を大切に思ってるって気持ちだけは伝えたかったんだ…」

     それでも、拒絶されることは無かった。想像よりもずっと、ローランはオリヴィエを含めた周りの存在を慈しんでいるのだろう。

    「でも、俺はお前を覚えてるのに、オリヴィエは俺を忘れるとか不公平だろ。だからやっぱり再会した記念になるような、インパクトあるイベントが必要じゃないか?」
    「記念ってそういうことだったのか…確かにインパクトはあるが……」

     回す腕に力がこもって、ローランが抱きついてくる。大切な旧友として大切にしたい気持ちと同時に、愛でたい気持ちが跳ね上がる。自分だけこんなに焦がされるのは大丈夫だろうかと思えば、ローランは言う。

    「だからオリヴィエ…、我慢するのはダメだ」
    「ダメと言われてもな…。お前も苦労することになるんだぞ」
    「それはまあ、なんとかなるよ。お前とこういうことするのは、結構好きだったし…」
    「そ、そうなのか…」
    「だから、頭から記憶が消えても肉体で忘れないように、俺の体を教えてあげるから……」
    「どこで覚えてくるんだよそんな言葉!」

     どちらかといえばローランのほうが既にその気らしい。
     腕の中のローランは淡々と伝えながらもどこか羞恥心があるようで、オリヴィエにもそれが伝染しそうになる。どうにか相手を絆そうとする健気な所があるのがローランの美徳で、そして愛らしいところだと再確認する。

    「まあ、分かったよ、ローラン。お前がいいって言うなら、俺が出来ることは覚悟することだけだ……」

     ローランの体をきつく抱いて、そのまま持ち上げる。痩せた様子がなくて安心する。ベッドに優しく横たえて、その上に覆いかぶさる。眼下にローランがいるこの光景もすべて忘れてしまうのだろう。

    「言わないようにしてたけど、やっぱり忘れたくないな」
    「ここに住む?」

     いつしかそんな質問を聞いたことがある。それは遠い昔にまだ一人で住むローランの家を訪ねた時だった。任務のことを忘れて楽しいひと時を過ごし、特に脈絡もなく尋ねられた言葉だったが、あのせわしなくも懐かしい記憶の一つとして覚えていることだ。

    「それは出来ない」

     その時ローランに伝えた言葉を再び返す。それでもあの時と違って、部屋は本に囲まれていて、住む場所はある意味で違う世界ほどかけ離れてしまった。
     同じ場所にいてもどこか隔てられたようだったのに、ずっと遠くなってしまったのだろう。それぞれ留まる所も、進む未来もあるのだ。

     しかしこうやって、思うことでまた出会えるなら。変わっていく日々の一頁と、変わらない瞬間を確かめ合えるなら。
     オリヴィエは、ローランと共に少しだけ抗ってみようと、そう思ったのだった。

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