甘えていいよ「はぁ…全くもう」
楽曲制作に集中し出すと、自分の身の回りの事は日に日に疎かになっていく恋人に『大丈夫?欲しいものある?』とラビチャを送ったのが2日前。その後既読がつくことはなく、少し寂しくて泣きたくなったがこんなの毎度の事だと自身に言い聞かせた悠は、どうせろくに食事も取っていないであろう巳波の胃に優しいものレトルトのお粥、スポーツドリンク、あとシュークリームを買うとコンビニのレジ袋をぶら下げてアポ無しでマンションへと来ていた。こういう時に、合鍵を渡されていて良かったと思う。慣れた足取りで部屋に向かい玄関の扉を開ければ、負の空気が途端に漂い出して眉を寄せた。
「巳波ー?」
返事は確実に返ってこないと確信していたものの、取り敢えず人の部屋に上がるのだから声は掛けてみる。案の定何も返ってこない。だが靴は揃えてある、居るのは確かだ。悠は意を決して靴を脱ぐと上がり込んだ。きっと作業部屋に居るはず、と真っ直ぐにその扉の前に足を向けるとノックをする。
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