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    Kakitu_prsk

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    Kakitu_prsk

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    リハビリするなら 性癖に素直なのが 一番じゃ
    とあるツイに感銘を受け、欲望のまま生み出したお話の産物(まだ途中)

    もう一度トルペを演じることになった🌟が張り切り過ぎた結果、トルペの負の感情に呑み込まれてセカイの舞台でぶっ倒れてしまうお話。
    いずれ🎈🌟へと至る(と信じたい)

    一等星にあくがれて(仮)――まだ幼かった頃、家族でプラネタリウムに行ったことがある。

    咲希の体調の良い日に、家族団らんで星空を眺めた。その暖かな記憶は、オレがショースターを目指すようになったあの日と同じくらいに、掛け替えのない思い出だ。

    都会では殆ど見られない満天の星空が天を埋め尽くす。オレはそれを見上げながら、遠い宇宙に思いを馳せていた。その時に感じたのは、何光年離れても輝き続ける光たちへの憧れと、自分もそうなりたいと願う、生まれたばかり想い。そして……

    (――×××)

    ふと過った謎の感情。
    それが何だったのか幼いオレにはわからず、結局は記憶の波に押し流され消えてしまった。
    ただ、一つだけ覚えていることがあるとするのなら――

    (もし、あの空にオレ一人で行ったら、きっと迷子になっちゃうな)

    そんな子どもらしい、頓珍漢な考えくらいだった。


    ***


    「『ピアノ弾きのトルペ』をもう一度?」

    寧々がオウム返しに告げた言葉に、類が頷いてみせる。事情がわからないのはオレもであり、寧々と顔を見合わせた後に類へと説明を促そうとした……が、それよりも早くえむが元気よく手を挙げれば「はいはーい!あたしが説明しまーす!!」と何時もの調子で、事のあらましを教えてくれたのだ。

    曰く、先日行った『ピアノ弾きのトルペ』を偶然見に来ていた児童館の施設長の方が、オレたちのショーに大変感銘を受けたらしく「是非ウチでもやっていただきたい!」と、わざわざフェニックスワンダーランドの経営陣まで頼み込んできたようだ。上での検討の結果、ワンダーステージのショーが準備期間であること、またつい最近やったばかりのショーで準備が容易であったことから、宣伝も兼ねてショーを行って欲しいと正式に依頼がされた……というのが事の全貌だった。
    正直言ってあまりにも突然すぎる話ではある。だが……

    「それは……とても素晴らしいことではないか!!」

    オレがありったけの声でそう叫べば、えむも満面の笑みで「でしょでしょ!!」と明るく同意する。

    「僕らのショーを心から喜んでくれただけでなく、もっとショーを見たいと言ってくれる人がいる……とても良い流れが出来ているね。僕も柄にもなく踊り出したいくらい嬉しいよ」
    「類くん踊っちゃう!?あたしもぴょんぴょんぴょ~ん!って跳ねたいかも!」
    「フフッ、じゃあここは間を取って司くんに小型ロケットを……」
    「全然間じゃないだろうそれは!!」
    「ちょっと、いくら何でも騒ぎすぎだって……」
    「む、寧々は嬉しくないと言うのか?」
    「それは……嬉しいに決まってるでしょ」

    小声で目を逸らしながらも、寧々から溢れる喜びの感情は隠せていない。照れ隠しをする歌姫に暖かな眼差しを向ける一幕もありつつ、オレは改めて類へと向き直った。

    「その依頼、ワンダーランズ×ショウタイムの座長であるオレが快諾しようではないか! それで、児童館での公演は何時になりそうなんだ?」
    「本番は二週間後の祝日で、丁度その日に児童館でお祭りがあるらしいんだ。施設長さんも協力してくれるらしくて、ピアノや楽器についても手配をしてくれるそうだよ」
    「そう、じゃあわたしたちは二週間後に向けて練習するだけで大丈夫そうだね」

    寧々の言葉に同意するようにオレも頷く。
    二週間とは普段なら急な話だが、公演を成功させたばかりの演目なら余裕がある。とはいえ、妥協して以前より悪いショーをしてしまうのは以ての外だ。そして、そう思っているのは当然オレだけではない。

    「うんうん!みんな演技はバッチリだけど、時間があるならもっともっと良いショーを届けたいなっ!」
    「オレもえむと同意見だ! あと二週間、先日以上の『ピアノ弾きのトルペ』を届けられるように、練習も頑張っていこうではないか!」
    ぐっと拳を握り締め、オレが高らかにそう宣言すれば、目の前にいる皆も強く頷いてくれた。その頼もしさを感じつつ、オレは脳裏でもう一度『トルペ』のことを形作る準備を進めるのだった。

    ***

    『トルペ』

    もし、オレが将来スターになった時『思い出に残る役はなんですか?』とインタビュアーに問われたら、真っ先に名前を挙げることのできる人物だ。
    気弱で、自分に自信がなく、いつも本番で失敗してしまう。その癖、まるで危機感を感じられずに星空を見てばかり……最初にオレがトルペに抱いた印象は、このように散々なものだった。だが、類からのアドバイスである『自分と役の共通点を探す』ということを実践し、咲希や冬弥の助力も得ることで、オレはトルペのことを深く理解することが出来た。トルペにもトルペの生き方があり、逃避のように見えた星を見ることも、トルペ自身の勇気に繋げるための”まじない”のようなものだったのだ。

    多くの困難を前にたった一人で戦い続けるため、星を友にしたトルペ。

    オレとトルペが何処までも似ていない存在だとしても、オレはその一点で深くトルペに共感し、そして感銘を受けたのだ。

    前回はトルペの在り方に敬意を表し、それを自分と重ねることでオレは『トルペ』を演じられた。ならば今度はもっとトルペを理解し、共感し、”自分”とすることができれば、オレはあの日以上の素晴らしい演技が出来るのではないだろうか?

    ふと過ったそんな考えがきっかけとなり、オレの二週間に及ぶ練習の方向性はひっそりと決まることとなった。
    類は「司くんはこれ以上なく『トルペ』が出来ていたよ」と大絶賛してくれていたが、スターを目指す以上は限界を決めつけるのはよくないだろう。それに加えて、今回の公演場所が児童館という子どもの集まる場であれば、感性豊かな子どもたちでも共感できる演じ方をした方が良いに決まっている。トルペは最初人前で過度な緊張をして、それによって失敗を繰り返してしまうが、同じような経験をして悩む子だっているかもしれない。そんな子に勇気を与えられるようなトルペが出来れば、役者としても更なる一歩を進められるのではないだろうか?

    「ふっふっふ、我ながら良い目標設定だ……。そうと決まれば早速『トルペ』に打ち込むとしようではないか!!」

    自室でペンを握り締め、オレは高らかに目標を掲げてみせる。
    「お兄ちゃんうるさいよ~!」とリビングから咲希の声が聞こえるまで、オレは高笑いと共にノートに練習方法の案を書き連ねることになるのだった。

    ***

    トルペは最初、人前で演奏すると極端に緊張してしまう欠点があった。昔からスターを目指し、あらゆる場所でショーを行えるオレにとって、中々想像ができない心境であったのは間違いない。
    物語において、登場人物の不必要な背景は省かれがちだ。トルペの緊張癖が生来のものなのか、何かしらのトラウマがきっかけとなったかは原作に乗っていない。前回こそ有効だった数多の翻訳本を読み込むことも、原作になければ参照しようがないのだ。

    「となると、オレの想像力でもって補うしかないのか……」

    自分が経験したことのない出来事を自分のものとするのは難しい。世にいる天才役者ならば、それこそ役を自分のことのように理解できるのだろう。……悔しいことだが、オレはまだその域まで達していない。そうなれば、やはり地道にトルペの欠点を理解し、呑み込んでいくしかない。
    幸いにも、調べる手段は沢山ある。ネット上での経験談や、トルペと同じように緊張してしまう登場人物がいる物語……そういった他の部分から情報を集めていけば、それをトルペに活かすことができるだろう。そう思いついたオレは、早速個人的な時間を使ってネットサーフィンを実行し、数日ほど研究をすることにしたのだった。


    そして三日後、セカイでの初回通し稽古の当日――オレは何とか納得できる『最初のトルペ』を手繰り寄せることに成功していた。

    「つ、疲れたぞ流石に……」
    「司くんお疲れ?だいじょぶ?」
    「あぁ、問題ない。自己研究に打ち込んだ甲斐あって、もっとトルペを理解することが出来たからな。今日の通し稽古でお前らにも見せてやろうではないか」
    「ほんと!?司くんのトルペだーいすきだから楽しみ楽しみっ!」

    相変わらず明るいえむの元気を密かに分けてもらいながら、オレはセカイに向かうためにスマホを手に取った。


    ――大丈夫だ。オレは上手くやれる


    「それじゃあカイトさん。今日は観客としての意見をよろしく頼むよ」
    「勿論。ぬいぐるみくんたちと楽しく見させてもらうからね」
    「ふっふっふ~、ミクたちの感想攻撃を楽しみにしてるのだ~☆」

    頷くカイトと何やら悪役のようなことを言うミク。その後ろの客席には満員になるほどのぬいぐるみたちが座っていた。
    今日は通し稽古という名目だが、同時に前回本番を見れなかったセカイの住人たちに、ワンダーランズ×ショウタイムとしての『ピアノ弾きのトルペ』をお披露目する目的もあったのだ。当然、公演後はカイトたちにショーの感想や改善点を教えてもらう予定ではあるが、その前にオレたちのショーを心から楽しんでもらいたいという理由があったことは確かだ。

    『ワタシ、ズットトルペを見タカッタンダ!』
    『オレモダゼー!楽シミダナァ』

    舞台袖に居ても観客席の盛況っぷりは手に取るようにわかった。あとはオレたちの全力でもって、素晴らしいショーを届けるだけだな!

    「司くん、準備は良いかい?」
    「あぁ、バッチリだ!この日のために更なる研究を重ねたからな。類たちも全力のトルペを楽しみにしていてくれ!」
    「全力のトルペって……全力し過ぎて司にならないようにしてよね。まぁ、そこまではないだろうけど」

    寧々の毒舌に混じった信頼に強く頷きながら、オレは自身の両手へと視線を落とした。
    どんなに苦しくてもピアノを手放さなかったトルペを脳裏に描き、”自分”とするために集中をする。

    今のオレは”天馬司”ではなく、”ピアノ弾きのトルペ”だ。

    オレがかき集めた情報の欠片を束ね、それを語られなかった”トルペ”の一部とする。オレならきっと出来る筈だ。
    “自分”を塗り潰すほどにトルペを自分のものとする……そうすれば、オレはきっと天上に輝ける星になれるだろう。


    「……司くん?」

    こちらを見たえむが小さく声をもらしたことに、オレはついに気づくことはなかった。


    ***

    『はぁ……。 やっとオーディションの最終選考まで来られた』

    安堵の溜息と共に、トルペが言葉を零す。もう何度も受けてきたオーディションだが、未だに慣れることはない。そもそも何度もオーディションを受けてしまう時点で失敗が一種の癖のようになっており、連鎖的に悪い記憶も思い出してしまうのだ。

    今日も駄目かもしれない。人前で緊張して、上手く演奏できないかもしれない。

    何とか前を向こうとしても、まるで自分を呑み込むようにその記憶たちはトルペを恐怖に陥れる。

    『……きっとできる。今度こそ、合格して入団できる。 いつものようなことにはならないはずだ……』

    震える自分を勇気づける鼓舞は、実に頼りないものだった。

    『それでは——次、トルペくん。 演奏を始めてください』

    そうしている内に、ついにトルペの出番がやってくる。団長さんの呼び出しに応じるように、オレは……"僕"は、壇上へと上がった。

    大丈夫だ。これまでの練習を信じれば、きっと今度こそ上手くできる。僕にはピアノしかないんだ。もし、ピアノすらできないなら、僕は――


    ――僕には、一体何があるんだ?


    (……あれ)

    最初に感じたのは、小さな違和感。
    壇上に上がり、演奏を審査する団長さんに小さな会釈をしてピアノに向かおうとした。ただ、頭をあげてふと辺りを見渡した時、僕は気づいてしまったんだ。

    ――たくさんの人

    団長さんと同じく、僕の演奏を審査するように……あるいは、純粋に僕の演奏を楽しみにするように、たくさんの人々が僕を見ている。
    いずれ楽団に所属するなら、このように大勢の客の前で演奏する時も来るだろう。それでも、酒場の片隅でしか演奏したことがなかった僕にとって、こんな日が来るのは初めてのことで……

    (――怖い)

    人々の眼、眼、眼……たくさんの眼差しが、僕を射抜いている。期待している。
    こんな場でもしも失敗をしてしまったら、彼らは失望の眼差しを僕に向けるだろう。それだけじゃない。今日という日を楽しみにしてきた皆の想いを、僕のせいで壊してしまったら……

    手足がじりと痺れる。頭が瞬く間に真白へと染められ、自分が今立っているかもわからなくなった。

    次に僕は何をすれば良いんだっけ――そうだ。ピアノを弾かないと。いつもと同じように……

    ”いつも”?いつもって何だ?
    いつも僕は失敗ばかりなのに、いつもの演奏をしても意味が無いんじゃないか?

    ぐるぐると視界が回り、壇上のライトがギラギラと目を焼きつぶす。
    米神を落ちる汗の冷たさしか、今の僕には理解できない。

    「……トルペくん?」

    唐突に隣から声が聞こえた。動かなくなった身体に代わり、視線だけを声の聞こえた方向へと向ける。そこにいたのは団長さんで、心配するような表情でこちらを伺っていた。

    そうだ。今はオーディションだった。早く大丈夫だと伝えて、ピアノを演奏しないと。そうしないと、僕は今度こそ団長さんに失望されてしまう。そんなことになったら――


    『残念だけど、君のピアノショーへの想いは、 とても程度の低いものだったみたいだね』


    ひゅ、と喉から嫌な音が鳴った。
    団長さんにそんなことを言われたことはない。それなのに、実際にそう言われたことがあるかのように、僕の脳裏に鮮明にその光景が浮かび上がったんだ。
    まるで全てを見放したかのように、”団長さん××”が僕に失望の眼を向ける。呆れたように溜息を吐いて、僕から背を向けた。

    違う。オレは最高の演奏ショーをするために、本気で頑張って来た。今回だけじゃない。いつか、×××になるために――


    ×××? 違う。それを目指しているのは”僕”じゃない。僕は……


    僕は、なんだっけ?


    「トルペくん」

    目の前で団長さんが”僕”の名前を呼ぶ。動けなくても、何とか応えようと僕は団長さんの顔をちゃんと見た。そして――

    「トルペくん、君は――」



    『君は×××になんてなれない』



    団長さんの言葉に重ねるように、誰かが僕に冷たい言葉を投げつけた。
    それが僕の心臓を突き刺す刃になれば――その瞬間、セカイが壊れる音を、僕は確かに聞いたんだ。


    ***

    ――最初に違和感を覚えたのは、トルペ役の司くんが舞台上に上がった時だった。

    一度舞台を成功させていることもあるけど、トルペとして不安を吐露していく司くんは、僕から見ても真に迫った演技をしていた。それこそ、本当にその不安や焦燥感を抱いているのだと見る者が感じられるほどに、司くんはトルペになりきっていたんだ。

    ――だからこそ、僕は違和感を覚えた。

    (演技にしては、少し力が入りすぎている……)

    か細い声に、微かに震える手足は『人前で緊張してしまうトルペ』そのものだ。でも、それを”演技”と片付けるには、今の司くんは真に迫りすぎている。不安が微かに過ったものの、司くんへの信頼を無下にすることだけは避けたかった。だから、僕は信じて彼の演技を見守ることにしたんだ。

    ……その選択が間違っていたと気づくのに、そう時間はかからなかった。

    トルペに演奏を促し、団長である僕は彼の演奏を審査する。ただ、トルペは緊張によって上手く演奏が出来ず、何度目かの落選をしてしまう。
    場面としては簡素なものであり、物語のほんの序盤の出来事だ。僕としても流すような感覚で、トルペの演奏を聞こうとしていた。

    (……おや?)

    本来なら、僕に会釈をしたあとトルペはピアノへと向かう筈だった。それなのに、僕に会釈したあと、歩き出そうとした彼の動きが不意に止まった。
    彼はその視線を一点――満員の客席へと向け、呆然とした表情を浮かべた。まるで何かを見てしまったかのように、彼の身体は縫い留められてしまっていたんだ。

    司くんに何か異変があったのか?

    台詞忘れなど些細なミスはまず有り得ない。彼のショーに対する真摯な姿は何度も見てきたし、このショー自体が一度大成功を収めている。何より、トルペとなるために全力で打ち込んできた彼が、今更そんなミスをするとは思えない。

    「……トルペくん?」


    僕は司くんの名を呼びたい衝動をぐっとこらえ、あくまで『団長』として気遣うように、トルペの名を呼んだ。司くんのアドリブ力であれば、ここから元の流れへと繋げることも十分出来る筈だ。それすら出来ないのであれば、彼に深刻な何かが起こっている証となる。僕はワンダーランズ×ショウタイムの演出家として、すぐに公演を止めないといけない。

    ショーと司くんのどちらも尊重できるように、僕は公平な選択を取ったつもりだった。

    ……それが最も取ってはいけない行動であったと、僕は直後に気づくことになる。


    「……っ」

    トルペは、司くんは僕に視線を向けるだけで何も言わない。いや、言葉を紡ぐことすら出来ないのか?
    間近にいる僕だけが感じ取れる、彼の呼吸音――それは酷く浅く、早く、今にも途切れてしまいそうなほどにか細かった。その手は明らかに震えていて、ライトに照らされた肌が血の気を失っていく。その光景全てが、司くんに異常が起きていると示すには十分すぎるものだった。
    この時点で僕は、ショーの続行を考えていなかった。今すぐ彼を舞台袖へと導き、一度ショーを中断するべきだと考えていた。それでも、身内であるぬいぐるみくんたちを不安にさせてしまうことはできない。少なくとも、司くんがその原因となってしまえば、彼は酷く後悔してしまうだろう。だから僕は、表向きは『団長』として『トルペ』の体調を気遣い、自然な流れで彼を舞台袖へ運ぼうとしたんだ。

    「トルペくん、君は――」

    『君は体調が悪いようだし、今日のオーディションは一旦中止にしよう』

    即興で考えた台詞でもって、僕はこのショーを一度幕引きしようとした


    ――その瞬間だった。


    「……ひっ」

    僕を凝視した君が、恐怖に染まった悲鳴を上げた。
    僕から逃げるように一歩後ずさり、絶望に濡れた表情を彼は浮かべる。それを見てしまえば、僕も紡ごうとした台詞を失い、動けなくなってしまった。そして――

    「司くん!!!」
    「司!!」

    舞台袖から、観客席から、殆ど悲鳴じみた叫び声が聞こえたその瞬間――司くんの身体が崩れおちた。

    麻痺した頭とは対照的に、身体は反射的に動かすことができた。ステージに叩きつけられる前の司くんを辛うじて受け止め、そのまま僕らはステージへと崩れ落ちる。観客席ではぬいぐるみくんたちの悲鳴や泣き声、不安がる声が一斉に沸き上がり、瞬く間にセカイを塗り潰した。

    「みんな落ち着いて!司くんは大丈夫よ!」
    「ここはカイトや類くんたちに任せて、一旦お外に出ましょ~」

    メイコさんやルカさんが落ち着いてぬいぐるみくんたちへと呼びかける。混乱する場を僕らに代わって収めようと、彼女たちは迅速に動いてくれた。対する僕は、あまりに突然のことに頭が真っ白になってしまっていたものの、カイトさんやえむくんたちがこちらに辿り着くまでには、何とか思考を取り戻すことが出来ていた。

    「司くん大丈夫!?」
    「しっかりして司!わたしたちがわかる!?」
    「司くんっ!!」

    えむくんや寧々が必死に声をかける。ミクくんは今にも泣きそうな表情を浮かべながら彼の名を呼んでいた。
    ショーは一時中断だ。これが通し稽古である以上、彼が気負う必要はない。それよりも司くんの無事が最優先であり、それは僕らの総意でもあった。

    「司くん、大丈夫だよ。まずはゆっくり息をするんだ。出来るかい?」

    彼の背を落ち着かせるように撫で、僕はゆっくり言葉をかける。何も恐れることはないと言外に告げながら、司くんが落ち着くのを待とうとした――その筈だった。


    それまで地面を呆然と見つめていた司くんが、ゆっくりと顔を上げる。そして周りを取り囲む僕らの存在を、彼の琥珀色が捉えた。そして、

    「っ、いやだ…!!」

    僕らを認めた司くんが零したのは、安堵の溜息ではなく、恐怖に彩られた悲鳴だった。唖然とする僕にドン、と鈍い衝撃が走れば、僕は情けなくステージに座り込んでしまう。
    『司くんに弾き飛ばされたのだ』と気づいたのは一瞬後で、その頃には彼は逃げるようにステージを数歩走り、また崩れ落ちてしまっていた。

    「司くん、なんで…なんであたし達が怖いの……?」

    えむくんが絶望にも似た表情で疑問を口にする。人の感情に聡い彼女がそう言ったことからも、司くんが僕らに恐怖心を抱いているのは演技ではなく本心だと、僕は嫌でも理解してしまった。

    「う、ぐぇ……」

    僕らから逃げるように蹲った彼は、口を押さえてえづくような声をあげる。身体は小刻みに震え、見ているこちらの胸が締め付けられるほどに、今の司くんの様子は悲惨だった。

    一刻も早く、司くんを安心させなければいけない。ただ、声をかけ、背を撫でても彼を蝕む恐怖は取り除けなかった。それなら一体どうすればいい? 考えろ、ワンダーランズ×ショウタイムの演出家。彼を落ち着かせるには――


    『トルペさん、今日のオーディションは中止になりましたよ』


    ――その時だった。混乱する場に凛とした声が響き渡ったのは。

    僕らの間を縫うようにその人――カイトさんが踏み出せば、彼は何故か司くんではなく『トルペ』の名を呼んで、彼の隣にしゃがみこんだ。
    一体何故『トルペ』の名を? そう疑問を覚えたのは一瞬で、僕は視線の先にいる『司くん』の反応に目を奪われた。

    「……でも、”僕”は今日のためにピアノを練習したんだ。それなのに、僕は――」
    『気にしないでください。今日の中止はトルペさんが原因ではありませんよ』

    落ち着いて語り掛けるカイトさんは、”楽団員の一人”の役を纏っている。そして、司くんは”トルペ”として、彼の後悔を滑らかに口にしていった。さながら、今の彼が"天馬司"ではなく"トルペ"であると言外に示すように。

    それを理解した時、僕はようやく司くんに起こった異変の正体へと至った。それと同時に、今の”彼”を救うためにどうすれば良いかも、カイトさんの行動を通して教えてもらうことができた。なら、僕が今すべき事は……

    『……そうだよ、”トルペくん”。君が恐れる必要は何もない』

    司くん――いや、『トルペ』に呑み込まれた彼を掬い上げるように、『団長』の”私”は落ち着いて言葉を紡ぐ。

    「団長さん……」

    僕を見上げる彼の瞳は、少しの安堵と多くの恐怖に塗り潰されている。僕を"神代類"ではなく、"楽団の団長"としてしか見ていない彼に、ほんの少しの寂しさを覚えつつ、それでも僕は台詞を紡いていく。

    『オーディションはまた日を改めるから、君はよく休むと良い』
    「でも、僕にはピアノしかないのに……」
    『心配いらないよ。私はトルペくんのピアノに可能性を感じているんだ。今回のことで君を見捨てることはないと約束しよう』

    この時点ではただの他人同士でしかない『団長』と『トルペ』だけど、団長がトルペを特別気にかけていたのは確かだ。たとえ物語にハッキリ書かれていなくても、トルペの名を覚え、何度も彼にチャンスを与える彼の行動から、団長のトルペを想う心を読み取ることはできる。だからこそ、トルペにこうして語り掛ける姿も『団長』として違和感はなかった筈だ。そんな僕の推測を証明するかのように、トルペの中にあった恐怖が薄らいでいくのを僕は目の当たりにしていた。

    トルペくんごと、彼の震える身体を抱き締める。僕の身で周囲の眼から彼を庇うように、僕の作り出した暗闇で彼を包み込んだ。

    『さぁ、少し眠ると良い。次に起きたら、全部元通りだよ』

    「――だからゆっくりおやすみ、司くん」


    ゆっくりとしたテンポで優しく背を叩き、彼を眠りへと誘う。彼を蝕む恐怖は何もないんだと示してあげれば、強張った身体から徐々に力が抜けていく。そうして数分もしない内に、規則正しい寝息が僕の腕の中から響いてきたのだった。


    「っ、はぁ……」

    峠を越えたのだと理解した瞬間、それまで忘れていた僕の呼吸が戻ってきた。深い安堵と、それ以上に司くんが壊れかけていたことへの恐怖が、じわりと僕の心臓を蝕んでいた。

    「お疲れ様、類くん。とても良い判断だったよ」
    「いや、礼を言うのはこちらの方だよ。カイトさんが手本を見せてくれなかったら、僕はもっと司くんを追い詰めていたかもしれない」

    腕の中で眠る司くんを強く抱き締め、僕は隣で膝を立てるカイトさんに礼を告げた。
    カイトさんが『司くんが”トルペ”という役に呑まれていること』と、『"天馬司"ではなく、"ピアノ弾きのトルペ"に語り掛けること』を示してくれたからこそ、僕はさっきの行動へと至ることができた。こういう時、頼れる大人がいることはとても心強いことだった。

    「類……」

    僕がやっと胸を撫で下ろした頃、後ろから寧々の声が聞こえてきた。振り返れば、へたり込んでしまったえむくんに寄り添うように、寧々とミクくんがその背を撫でている光景が見えた。僕が司くんをケアしている間に、寧々たちはえむくんを気にかけてくれていたようだ。
    感情豊かなえむくんにとって、司くんに本心からの拒絶を受けたのは相当なショックだったのだろう。僕ですら大分参ってしまったのだから、彼女の苦しみはよく理解できていた。

    「司は大丈夫…?」
    「うん、もう落ち着いているよ。まずは司くんをゆっくり休ませて、起きたら何があったか聞いてみよう」
    「司くん、あたし達のこと『すっごくこわい』って思ってた……もしかして、司くんに嫌われちゃったのかな……」
    「えむくん、心配しないで。恐らくだけど、あの時の司くんは『トルペ』に呑み込まれていたんだ。あれはトルペの感情であって、司くんのものではないよ」
    「ほんとう……?」
    「うん、僕も類くんと同じ考えだよ。えむちゃんたちやミクが怖いというより、大勢の人を怖がってしまったんだろうね。僕らが司くんに呼び掛けても反応がなかったのも、彼が自分を『トルペ』だと思い込んでいたからだと思うんだ」
    「そういうことだったんだ……よかったぁ……」

    カイトさんの語る仮説は僕が考えていたものと同じで、僕は無言で頷くことでそれを肯定する。彼の丁寧な説明によって、えむくんは自分が嫌われたわけではないのだと、やっと安堵することができたようだった。

    「……わたしも、少し前までトルペと同じ立場だったから、トルペが抱えていた怖さも理解できるよ。それに、司ってトルペを掴むまでにすごい努力をしてたから、今回はそれが行き過ぎちゃった……ってことだよね?」
    「多分そうだろうね。こればかりは、あとで司くんに聞いてみるしかないかな」
    「で、でも!もし司くんが起きてもトルペくんのままだったらどうしよう…!」

    あわわ、と慌てた様子のミクくんに、カイトさんが「大丈夫だよ」と優しい声をかける。

    「司くんが眠る前に、類くんがちゃんと呼び掛けてくれたからね。もし、起きた時にまだトルペくんだったとしても、僕らがちゃんと『司くん』に呼び掛けてあげれば、司くんは必ず戻ってくる筈さ」
    「ほんと?それならミク、たっくさん司くんの名前を呼ぶからね!」
    「あたしもあたしも!!寧々ちゃんも、司くんの名前を一万回くらい呼んであげよーよ!」
    「そこまでいったら逆に洗脳みたいじゃない…?まぁ、別に良いけど……」

    意気込む女性陣の様子からしても、一先ず起きたあとの心配はいらなそうだ。僕は密かに安堵し、それから司くんが目覚めるまで休める場所を聞こうと、カイトさんに問いかけることにするのだった。


    ***


    「本当にすまん!!!!」

    数時間後、はちきれんばかりの大声がサーカステントに響き渡った。
    目が覚めた時、司くんはちゃんと自分を取り戻せていた。倒れた時の記憶が残っていたのか、目覚めてからぼんやりと天井を見ていた司くんは、僕らの姿を見た瞬間に勢いよく飛び起きてみせた。そしてすぐにでも土下座をしようとした彼を全員で止めつつ、何とか彼を落ち着かせることに成功したというわけだ。

    「練習とはいえ、ショーを台無しにしてしまうとは……オレはもう、お前らに合わせる顔がない……!」
    「いや、そこまで深刻に考えなくて良いから。そのための練習でしょ。武士みたいに『切腹する』とか言い出しそうなテンションやめてよね」
    「切腹で償いが出来るなら…!」
    「本当にやめて。取り敢えず落ち着いてよ」
    「そーだよー!司くん、そんなこと言わないで~!」

    寧々やえむくんの必死な言葉もあり、司くんも一先ず冷静さを取り戻した。項垂れる彼を見るのは心が痛いが、まずは彼が倒れた原因を明らかにしようと、僕は努めて冷静に彼へと問いかける。

    「取り敢えず、その様子だと倒れてしまったことに心当たりはあるんだよね?僕らに話してみてくれないかい?」

    その言葉に少し迷いの表情を見せた後、司くんはゆっくりと僕らに心当たりを語り出した。

    そうしてわかったのは、ここ数日の間に司くんが行った個人練習……前以上に『トルペ』を理解しようとした、彼の努力についてだった。
    前回の公演によって、司くんはトルペを自分と同じように考えられるようになった。僕のアドバイスもあり、司くんは文句の言いようが無い『トルペ』となれたのだけど、彼としてはそれだけでは満足できなかったらしい。トルペの良いところだけではなく、悪いところも含めて『トルペ』となれるよう、司くんは前以上に努力を重ねた。

    ただ、その研究は当人ですら知らない内に一線を越えてしまう。役への共感を通り越し、司くんは『トルペ』を自分と重ねようとした。その結果、今日の舞台で過剰なまでに刷り込まれた『トルペ』は容易く司くんを呑み込み、彼は自分を『トルペ』だと錯覚してしまった……というのが今回彼に起きた異変の全てだった。

    「なるほど。憑依型役者に近いことが起こってしまった……ということだね」
    「あぁ。――正直、全く予想していなかったな。オレとしては、前回以上に上手く『トルペ』を演じられるよう、全力を尽くしただけのつもりだったのだが……」
    「う~~~ん、司くんの考えはミクも素敵だなって思うけど、おはようからおやすみまでずっとトルペくんを考えてたら、ミクもお目目がぐるぐる~ってなって、ミクがミクだってわからなくなっちゃうかも……」

    むむむ、と難しい顔をするミクくんの言うことは最もだ。加えて、司くんの演じ方は『役への共感』が占める部分がとても大きい。要は役からの影響を受けやすい性格のように僕には思えたんだ。最初の頃はトルペくんが司くんに呑み込まれたような形だったけど、トルペくんに共感を抱いた今となっては、全く逆のことが司くんに起こってしまったことになる。

    「別にそこまでしなくても、前のトルペで十分良かったと思うんだけど…」
    「確かにそうかもしれないが……もう一度演じられる機会を得られたからな。トルペはオレにとって思い入れが強い役なんだ。だからこそもっとトルペのことを理解し、皆を魅了できるようにオレの全力を尽くしたかった……んだがなぁ……」

    がっくりと肩を落とす司くんを気遣うように、えむくんが「元気だして司くん~!」と声をかける。彼は深く責任を感じているようだけど、ショーをより良くするための努力を非難する人間なんて、この場にいる筈がない。それに責任で言えば、彼の向上心に寄り添えなかった演出家の僕にもあると言えるだろう。……まぁ、これを言えば司くんと押し問答になりそうだから、敢えて言葉には出さないけどね。

    「司くんには言いたいことが沢山あるけど、少なくともスターを目指す役者がオーバーワークをしてしまうのは褒められたものではないよ?その点に関しては反省してほしいところかな」
    「うぐっ、返す言葉もないな……」
    「……それに、僕も司くんがスターになることを楽しみにしているんだ。役について悩むことがあるなら、まずは僕に頼ってくれると嬉しいな。別に君の努力を辞めさせる気はないし、相談さえしてくれれば、僕はいくらだって君の力になるよ」

    心から想っている言葉を司くんへと告げる。ほんの一年前まで捻くれていた僕からは考えられないほどの、誰かへの信頼の言葉……それを引き出したのは、他でもない司くんの努力があってこそだ。

    「……!」

    僕の言葉を受け、司くんが目を見開く。そこには驚愕と、少しばかりの喜色が滲んでいるように思えた。

    「類、お前……」
    「まぁ、今日のところはしっかり休んでほしいかな。明日も練習はなしにするからね」
    「何故だ!?」
    「いや、倒れたんだから当たり前でしょ。意気込むのも良いけど、まずは体調を整えてからにしないと。スターを目指すのに体調管理も出来ないとか情けないし」
    「ぐぬぬぬ……」

    寧々の援護射撃もあれば、司くんは大分呻いた後に休むことを了承してくれた。本番まであと二週間しかない訳だけど、トルペの置かれた状況よりはまだ良い筈だ。
    僕がここで休むように提案したのは、倒れた司くんを気遣ったからに他ならない。一度体調を整え、トルペに入れ込みすぎた精神を落ち着かせてからでないと、彼はまた"トルペ"に塗り潰されてしまうだろう。とはいえ、今の司くんはいつも通りであり、傍から見ればすっかり元通りとなったようにも思えるけど……。

    「じゃあ、片づけはわたしたちがやるから、司は先に帰って良いよ」
    「……うん!また明後日、ワンダーステージで練習しようね!」
    「むう…わかった。ここは任せるとしよう」

    えむくんと寧々の言葉に押される形で、一先ず司くんを帰すことはできそうだった。
    「ぬいぐるみくんたちには、司くんの体調が悪かったと伝えておくよ」とカイトさんのフォローもあれば、司くんはようやく安心したような表情を浮かべ、セカイから帰っていったのだった。


    帰る姿を見送った後、僕は改めてえむくんへと顔を向ける。

    「――えむくん。司くんは”まだ”怖がっていたかい?」

    「えっ?」と寧々が呆気に取られたように言葉を零す中、えむくんは先ほどまでニコニコとしていた顔をしゅんと曇らせながら頷いてみせた。

    「うん…。司くん、ニコニコ笑顔だったけど、ちょっとだけビクビクしてた……」
    「それって、まだ司の中で『トルペ』が抜けきってないってこと?」
    「恐らくそうだろうね。それだけ司くんが真摯にトルペに向き合ってきたということだけど、このままだと司くんの精神に負担がかかってしまう。だからこそ、一旦トルペから抜け出す意味でも、休みを設けた訳だけど……」

    セカイから出る前の司くんを脳裏に描く。
    努めて『普段の自分』を演じながら、その裏で彼は人の眼に怯えていたのだろう。演じるのが"トルペ"ではなく"天馬司"に逆転しているあたり、彼を蝕んでいる”役”の影響は重い。

    「ねぇ、類。明日は司のことを気にしといてくれない?アイツ、今日のことに責任を感じてひっそり練習とかしちゃいそうだし……」

    「隣のクラスならすぐに気づけるでしょ?」という寧々の言葉に、僕は頷いてみせる。元より寧々からの提案がなくても、僕も司くんを気にかけるつもりでいた。隣のクラスであるのが少し歯痒いけど、大体の休み時間は実験にでも誘えばずっと一緒にいれるし、放課後は適当に遊びにいくとでも言えば、彼を誘うことは容易だろう。

    「……言っておくけど、司を振り回しすぎないでよ。休ませるのに類があれこれやらせたら本末転倒だからね」
    「フフ、勿論心得ているとも」
    「その楽しそうな顔、不安しかないんだけど……」

    若干引いたような表情をする寧々にもお構いなしに、僕は明日の計画を組み立てていく。
    寧々はああ言ったけど、司くんが『トルペ』から一旦離れるには、刺激的な日常を過ごすのが一番だ。そして、僕ならばそれを提供することができる。最近は宣伝公演のために忙しくて実験が出来なかったし、明日の休みを使って司くんと遊ぶのも悪くはないだろうね。

    (……こんな普通のことをワクワクしながら待つなんて、それこそ思いもしなかったな)

    かつて屋上から眺めていたような日常が、僕の身近に存在する。
    その事実に場違いな嬉しさを感じながら、僕は今日のショーの後片付けをするべく、その場を歩き出したんだ。



    ――鈍感な錬金術師は、何処までも楽観的な空想にひたっていた。

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    Kakitu_prsk

    PROGRESS相互さんに捧げるF/F/1/4の世界観をベースとしたファンタジーパロ🎈🌟の序章
    兎耳長命種族冒険者🎈×夢見る冒険者志望の幼子🌟
    後に🍬🤖ちゃんも加わって🎪で四人PTを組んで冒険していく話に繋がる…筈。

    ※元ネタのF/F/1/4から一部用語や世界観を借りてますが、完全同一でないパラレルくらいに考えてください。元ネタがわからなくてもファンタジーパロとして読めるように意識しています。
    新生のプレリュード深い、深い、森の中――木々が太陽すら覆い隠す森の奥深くに、小さな足音が響き渡った。


    「待ってろ、お兄ちゃんが必ず持って帰ってくるからな……!」

    そんなことを呟き足早に駆けているのは、金色の髪をもつ幼い少年であった。質素な服に身を包み、不相応に大きい片手剣を抱くように持っている。

    人々から『黒の森』とも呼ばれているこの森は、少年の住む”森の都市”を覆うように存在している。森は都市から離れるほどに人の管理が薄くなっており、ましてや少年が今走っている場所は森の比較的奥深く……最深部ほどではないものの、危険な獣や魔物も確認されている地帯だった。
    時折、腕利きの冒険者や警備隊が見回りに訪れているものの、幼子一人が勝手に歩いて良い場所ではないのは明らかだ。だというのに、その少年は何かに急かされるように、森の中をひたすら走っていたのである。
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    Kakitu_prsk

    DOODLE人間🎈がうっかり狛犬🌟の封印を解いたことで、一緒に散らばった大量の悪霊を共に封印するために契約&奔走することになるパロの冒頭ができたよ!!
    書きたいネタをぶつぎりに入れたりもしたけど続く予定はないんだぜ。取り敢えず投げた感じなので文変でも許してちょ
    大神来たりて咆哮す(仮)――ねぇ、知ってる? 学校から少し離れた場所にある森に、寂れた神社があるんだって。
    ――そこに深夜三時に訪れて、壊れかけてる犬の像に触れると呪われるんだってさ
    ――呪われる?
    ――そう!なんでも触れた人は例外なく数年以内に死んじゃうんだって!
    ――うわ~!こわ~い!!


    ……僕がそんな噂話を耳にしたのは、昨日の昼休みのことだった。

    編入したてのクラスには噂好きの人間がいたのか、やたらと大きな声でそう語っていたのを覚えている。
    現実的にも有り得ない、数あるオカルト話の一つだ。そう信じていながら、今こうして夜の神社に立っている僕は、救えないほどの馬鹿なのだろう。

    絶望的なまでに平凡な日々に変化が欲しかった。
    学校が変わろうと”変人”のレッテルは変わらず、僕は何時だって爪弾き者だ。ここに来て一か月弱で、早くもひそひそと噂される身になってしまった僕は、この現実に飽き飽きしていたんだ。
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    recommended works

    hukurage41

    DONE #ritk版深夜の60分一発勝負
    演目)七夕
    ※画像でもあげたのですが、なかなか見にくかったのでポイピクにも同時にあげます。

    ・遠距離恋愛ルツ
    ・息をするように年齢操作(20代半ば)
    ・かつて書いた七夕ポエムをリサイクルしようと始めたのに、書き終えたら案外違う話になった
    星空を蹴っ飛ばせ「会いたいなぁ」

     ポロリと口から転がり出てしまった。
     声に出すと更に思いが募る。言わなきゃよかったけど、出てしまったものはしょうがない。

    「会いたい、あいたい。ねえ、会いたいんだけど、司くん。」
     類は子供っぽく駄々をこねた。
     電子のカササギが僕らの声を届けてくれはするけれど、それだけでは物足りない。
     
     会いたい。

     あの鼈甲の目を見たい。目を見て会話をしたい。くるくる変わる表情を具に見ていたい。
     絹のような髪に触れたい。滑らかな肌に触れたい。柔らかい二の腕とかを揉みしだきたい。
     赤く色づく唇を味わいたい。その奥に蠢く艶かしい舌を味わいたい。粒の揃った白い歯の硬さを確かめたい。
     匂いを嗅ぎたい。彼の甘く香ばしい匂い。お日様のような、というのは多分に彼から想像するイメージに引きずられている。チョコレートのように甘ったるいのともちょっと違う、類にだけわかる、と自負している司の匂い。その匂いを肺いっぱいに吸い込みたい。
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