ともしびを手に 3「長沢からの手紙だ」
手紙を取り上げた江楓眠は、それを魏無羨へと差し出した。思いも掛けぬ江楓眠の言葉に、魏無羨は瞳を丸くすると身体の動きを止める。
「……えぇ、と」
口も固まってしまい、常は過分に回る少年とは思えない、歯切れの悪い言葉しか出てこなかった。
長沢。魏長沢。知っている。
父の名前だ。
江家の家僕であり、江楓眠とは親しい間柄であったということは聞かされている。だから手紙の一つや二つ、残っていても何らおかしくは無いのだ。
しかし魏無羨は今まで父の残したものを、己という存在以外に知らなかった。それが江家に迎え入れられて数年経った今になって急に現れたものだがら、本来であれば喜ぶべき筈なのに酷く戸惑った。
「読んで……良いの?」
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