社畜忘羨AU いつも顔色を悪くして出勤してくる同僚がいる、名を魏無羨という仕事は出来るし愛想も良いいのだが嫌いな相手には徹底的塩対応する男だ。
「あーおはよう藍湛」
今朝も青白い顔をしているなと思いながら声をかけた。
「おはよう顔色が悪いが朝食はとっているのか」
んーと首を傾げて鞄の中からカロリーメイトを出しかじった後笑いながら答えるこのやりとりが私達の朝の恒例になっている。
「これが朝ごはん、あと本日はこれが追加されているぞ。豪華だろ」
エナジーチャージと缶コーヒーを机に並べた。
「帰宅した後はちゃんと食事はとっているのか」
「適当に食べて酒呑んでお風呂入ってお布団にダイブ」
はぁーと藍湛はため息をつくがその様子をにやけた顔で魏嬰は眺めていた。
「あんた俺の食事事情気になってるのはなんでだよ」
エナジードリンクを一気に流し込んでビニール袋に押し込んだ。
「・・・」
「以前営業担当だった時倒れた事があっただろう」
コーヒーをぐいっと飲み干し引き出しを開けてしまう、以前机の上に置いていたら怒られたからだ。
「そんな時代もあったなぁー何度か倒れて入院沙汰になったけらデスクワークに回されちゃったもんな、でもおかげでお隣の席にこんな色男が座ってる・・・」
目を細めて藍湛に微笑んだ。
「魏無羨、もう始業の鐘は鳴ったぞ」
「藍部長すいません」
「おい、あんたから話をもちかけたくせに逃げるなんてずるいぞ」
藍湛に近づいて小声で話しかけた。
「仕事に集中しなさい」
目線は合わせず小声で話し返す。
「はいはい」
「はい、は一回」
「はい」
うんと小さく答え俺達はPC画面とにらめっこする時間になった。
昼を告げる鐘が鳴るとオフィス内の社員達はお昼を食べに部署から出ていく
空調の音だけが耳に聞こえるほどの静かな部屋の中に残ったのは俺と藍湛だけであった
「魏無羨外に食べに行かないか」
「悪い、金欠」
椅子に座ったまま上体を廊下の方に向けひらひらと手を横に振って答えた。
「またか」
隣で違う部署の江澄とため口で会話しているのを藍湛は聞いていた。
「俺はお前と違って一人暮らしなんだよ。大変なんだぞ」
「同居の件断ったのはお前だろ」
腕を組眉間に皺を寄せている江澄の前にニコニコと笑う幼馴染が近づいて来る。
「それは学生の時までって約束してたし、後今月更新あるから余計な金使いたくねーの、ほら俺なんてほっといて飯食いに行けよ」
「いてっ、お前が羨ましいーって後悔する飯食いに行ってやるよ、行くぞ懐桑」
「はっ、はい。では行ってきますねー」
「ほら行け!」
バンと江澄の背中を叩いて追い出した。
「おやつ買って来てくれよな~二人分」
「二人分だと」
「俺と藍湛」
自分と藍湛を交互に指差してにこりと笑った。
「ない」
「だそうだ・・」
談笑しながら廊下を歩いていく二人を見送った後魏嬰はスタスタと藍湛の隣に立って頬を膨らませた。
「藍湛のり悪いぞ」
「君は何歳だ」
江澄達が談笑が聞こえなくなった頃を見計らって魏嬰に声をかけた。
「俺が何歳だって?もちろん3歳だ」
指を3本立て子供の様に彼は笑ったので私は首を横に振り違うだろと訂正した。
「冗談だ・・俺は」
「1歳くらいだな」
ぷっと魏嬰が噴き出し大笑いした、ああここに今私と彼だけで本当に良かった。
「あーお前やっぱり面白い奴だったんだな」
私を面白い奴というのはこの男位だろうと思う。
「やっぱ一緒に昼飯食おう、俺飲み物買って来る~」
ひらひらとご機嫌に手を振って部署から出て行った、そして部屋なの中が静かになる、空調の音が聞こえるほどの静けさ外の音も聞こえてくる。
「藍湛、今日の俺は運がいいみたいだ」
彼の陽気な声が響いて頭を抱えた、叔父の部長がいなくて良かったと・・・呆れながら振り向こうとした時頬に冷たい感触が当りペットボトルが視界に入った。
「自販機のルーレットが当たったからおすそ分け」
「ありがとう」
藍湛は魏嬰からのおすそ分けの紅茶を机に置くと鞄の中からお弁当箱を出した、それを横目に魏嬰はビニール袋から総菜パンを三つ並べる。
「魏嬰」
「ふっふっふっ、豪華なお昼で驚いたか」
首を横に振る藍湛を見て説明を始める。
「特売シール三連星だぞ、しかも違うカレーパンだ」
「ちゃんと食事をしなさい、また倒れる」
彼の食生活が本当に心配になると口に出したいがただの同僚だ・・・そうただの・・・私の気持ちは知られてはいけない。
藍湛はお弁当の蓋を開くと手を合わせる、魏嬰も真似して手を合わせて「いただきます」と元気に言ってパンの袋を開く。
「しかし、毎日お弁当作って貰ってるのか?お手伝いさんに」
「?」
彼の言葉に首を傾げる、確かに学生時代は作ってもらっていたが今は兄も私も成人しているから今はいない、それに今私は一人暮らしだ。
「あれ?藍家ってでかいからお手伝いさんがいるって聶懐桑が」
「それは私と兄が成人する前までの話だ。今はいない」
「じゃあ、まさか彼女とか?藍湛フリーって話聞いたぞ」
「彼女もいない。これは私が作っている」
「ええええええ、藍湛ご飯作れるの?毎日美味しそうなお弁当持ってきてるから良いなぁと思ってたんだ」
ひとつめのカレーパンを食べ終わったのか藍湛の綺麗な彩のお弁当を見つめていた。
『藍さん彼女がいるみたいですよ』
『ああ、俺の部署の女性達も言ってたな、毎日手作り持たせてるって』
江澄や同僚たちが同じ事を言ってる、俺も隣でその弁当を見ていたから自作だと聞いてホッとした。
「・・・気になるおかずでも・・・あるのか」
声をかけられ動揺しながら二つ目の袋を持ちながらお弁当の中身を見て小さく答えた。
「たまごやき」
卵焼きのひとつを箸でとり蓋にのせた、ついでにきんぴらもつまみのせるとそれを魏嬰に差し出した。
「君の口に合うかは保証はしない」
「良いの?ありがとう藍湛~本当今日は最高に良い日だ」
隣で引き出しから割りばしを取り出し大事そうに食べてくれている姿を見て藍湛もお昼ご飯に口をつけた。
「美味しい、こんなに美味しいご飯毎日でも食べたい」
「・・・」
その後藍湛から同居話を持ち掛けられ
「毎日君のご飯をつくりたい」
「何かそれプロポーズみたいだけど、うん良いよ俺なんかでいいなら」
魏嬰は平気そうな顔で答えていたが心の中では動揺しまくっていた、まじか本当に藍湛と同居できるなんて嘘だろ・・・夢じゃないよな、もしかしてバレてるとかはないよな。
実は両片思い同士だった二人が両想いと気づくのは同居生活して数年後のことであった。