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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    アデアレ
    シュミーズドレスでアデルを誘惑するアレ
    致しておりません。


    プレイ中の人間が書いてます。設定・関係性に齟齬がある可能性があります。何でも許せる人向け。

    #アデアレ

    手折って騎士様、恋の花 アレインがアデルに恋をしたのは、アデルにとって自分は特別なのだということを知ったからだ。
    『殿下はすごいお人だなって……』
     酒で赤く染まった頬と溶けた瞳でアレインを褒める、あの姿。アレインはアデルのあの言葉が純粋に嬉しかった。"アレイン殿下"ではなくて"アレイン殿下になろうとしているアレイン"自身を分かって褒めてくれていると感じたからだ。
    『ほんとーに頑張ってるなって』
     思い出す度に顔が緩む。と、同時にアレインは夢想する。アデルのような兄が居たらどんなに良いだろう。アレインは、本当は兄や姉が欲しかった。ギルベルトやトラヴィスが羨ましかった。アラミスのように弟の前を行き、ベレンガリアのように弟を守る、心の柱が欲しかった。親でもなく、騎士たちでもない、アレインの隣で微笑んで頼りに出来る人が欲しかった。
    (アデルが俺の兄だったなら、頭を撫でて貰えたかな)
     空想の中では兄のアデルはいつも笑顔で、アレインのことを殿下と呼ばない。あの快活で晴れた空を思わせる声で「アレイン」と呼ぶ。空想の中のアレインは今よりもっと幼くて、アデルが抱き上げると腕の中にすっぽり収まる。アレインは胸元に顔を埋めて「お兄ちゃん」とアデルを呼ぶ。アデルは嬉しそうに頬擦りをして「俺の可愛いアレイン!」と言う。微笑ましい光景、有り得ない幻想。アレインは自分の頭を触る。撫でて、みる。自分の手のひらは、アデルほど大きくもなければ、硬くもない。ああ、アデルに撫でられてみたい!いつしか、アレインの心の中にはそんな願いが生まれていた。

    「アデル様!」
     街の女の子たちが黄色い声をあげて、アデルを呼ぶ。立ち寄った騎士領でアデルは当然ヒーローだ。アレインはジョセフを連れて武器屋を覗きに行った帰りで、アデルはアレインたちに気が付いていないようだった。
    「アデル様」
     女の子たちがうっとりと騎乗の好青年を見上げている。アデルはきりりと身を引き締めて、騎士らしい顔つきで彼女たちの話を聞いている。
    (あんな顔もするのか)
     それは自分と話す時とも、クライブと語り合う時とも、ゼノイラ兵と戦う時とも違う顔だった。柔らかい表情ながら、騎士の誇りを滲ませる、街の娘たちの騎士様の顔。騎士領を背負う一騎士としての尊厳を感じさせる佇まい。
    (……俺には見せない顔だ。俺には……絶対見せない顔だ……)
     そうだ、王の前では見せない表情。自らの守るべき民草が見上げるための後光。アレインは唇を噛んだ。
    (いいな……)
     その日、アレインは夢の中で騎士アデルを見た。馬を手足のように操り、鋭い槍を放つ麗しの騎士様。凛としたお姿を見かけて駆け寄ると、アレインにも笑いかけてくれる優しい騎士さま。夢の中のアレインも、また夢を見ていた。ああ、アデル様が馬から降りて、自分を抱きしめてキスをしてくれたらどんなに素敵だろう……。
     どさり、と身体に鈍い痛みが走り、アレインはベッドから落ちたのだと気が付く。身体を起こす暇なく、今の今まで見ていた夢がアレインの意識を覆った。
    「アデルに……キスを?」
     これがアレイン殿下の恋の目覚めであった。御年17の春、初恋。アレインは自らが王子として生まれたことで決して手に入らぬ景色の先に咲く花に、惚れたのである。青々しい恋だ、恋に恋する恋だ。窓の外には朝が来ている。アレインはまだ起き上がれないでいた。





     初恋は実らぬと言うが、アレインの初恋は半分が実り、半分は実らなかった。つまりアレインの夢見た"街娘と恋をする騎士アデル様"への恋慕や"末弟を甘やかす兄アデル"への憧れは夢のまま潰えたが、現実のアレイン殿下率いる解放軍の一番槍アデルとの恋路は、叶った。奇跡みたいな話だ。この恋が実るまでには酒と涙とジョセフの苦難、アデルが驚きで尻もちをついた時に臀部に出来た大きな痣、クライブの馬の暴走、メリザンドとスカーレットの助力などなど、一冊の冒険絵巻の如き大奮闘があったのだが、そこは割愛する。結ばれて、春。アレイン少年とアデル青年の清らかな恋は未だ触れ合いが含まれなかった。いや、何も避けているわけではない。触れようとして避けられるというわけでもない。二人は恋人である前に王と騎士であり、また解放軍の長と兵士なのだから、食事の時に皿を渡すだとか、古くなった防具を取り替える時などに手が触れることはある。でも、それだけだった。街の恋人たちがするように肩を寄せ合うこともなければ、手を繋ぐこともない。あの夜夢で見たように抱き寄せることもなければキスなど以ての外だった。
    (触れ合いの数で言えば、レックスとのほうがよっぽど多い!)
     ということで仄かな怒りと焦りを胸に、アレインが用意したのはシュミーズドレスだった。これはメリザンドとスカーレットが用意してくれたもので、アレインが乙女のようにうっとりと語った初恋の風景を、彼女たちはどうも「アレインは女性のようにアデルに愛されたいのだ」と思ってしまった節がある。ともあれ、そのおかげでメリザンドは「じゃあ、どっちにしろ妃は必要ね」と安心したようで、心置き無くアレインの恋路の背を押してくれているのだ。今回も逃げ場のない所で余すところなく触れて仕舞えば後が楽だという策を練り、スカーレットと二人でああでもないこうでもないと知恵を絞り、この薄いモスリンのドレスを買い求めてくれた。
    「……柔らかい」
     シュミーズドレスは箱から出すと、思ったよりもボリュームがあり、何より美しかった。リボンを模した肩紐でレースで出来た身頃を吊っており、身頃ぽわんと膨らんだ袖が小さな羽のように生えていて、腰から下は透けるほど薄いレースが幾重にも重なって八重咲きの薔薇のようだ。アレインは破かないように、そうっとドレスを持ち上げる。スカーレットに着付けを頼んだら、頬を赤らめて「被るだけよ」と教えてくれたので、その通りに薔薇のスカートに恐る恐る頭を潜らせる。着てみると、ドレスはアレインが想像していた何倍も繊細で頼りない感触だった。どこもかしこも透けて居るような、裸のままで居るような。
    (おかしくないだろうか)
     先程まで着ていた夜着を畳み、シーツの下に押し込む。いつも着ている夜着は麻で出来たしっかりしたシャツとズボンで、洗い晒して少しくたびれて、色も薄くなっている。確かにこの夜着ではアデルも触れたいと思わないかもしれないな、とアレインは思った。ドレスの裾をつまむ。
    「ふわふわ……」
     箱の底には手鏡が入っていたので、アレインは手鏡を何度も持ち直しながら、全身を点検する。ランタンの程よい灯りもあって、アレインはこのドレスに包まれた自分がなかなか上等に仕上がっているのではないか、と思えた。膨らんだ袖のおかげで鍛えた腕も隠れ、たっぷりとしたレースがアレインを少女のように見せていた。真剣に手鏡を見ながら、アレインは髪を整える。ちら、ちら、と顔の角度を変えて、上目遣いを作ってみる。
    (アデルは触れてくれるだろうか)
     果たして夜は更け、アデルが部屋に戻ってきた。

    「殿下……?」
     アデルは思わず、漏れ出た呼び名に信じられない気持ちだった。夜の訓練を終え、クライブに「汗をかいている」と執拗にたしなめられ水浴びをして部屋に帰ると、年下の恋人がお姫様のような風貌でアデルを待っていたのだった。
    「アデル……」
     アデルを熱っぽく呼ぶアレインの瞳は潤んでいる。彼は真っ白なレースで出来たドレスを着ていた。夜着というには豪奢で、外に着ていくには艶がある、可憐さ、薄さ、頼りなさ、愛らしさ。アデルはふらふらよろめきながら、後ろ手に部屋の鍵をかけた。いいや、何もこの愛らしい夜の妖精を逃すまいと閉じ込めたわけではない。彼の若く気高い忠誠心が、未来の王が傾国の美女に育つ可能性を秘めている危険性を外に漏らすまいとしただけだ。決して下心ではない。……多分。
    「殿下、ど、どうなさったんですか、その格好は……」
     生唾を飲み込み、なるべく平静を装ってベッドに近付く。アレインはベッドに腰掛けたまま、アデルから目を離さない。ランタンの中で蝋燭がちらちらと燃えて、ドレスの中から覗くアレインの鎖骨をぬらりと照らす。
    (あー……普段隠れている場所だから、ここは日に焼けてないのか……)
     アデルは堪らず目を背けた。と、アレインがアデルの襟を掴み、ぐいと引く。鼻先が触れるほど近くで見る恋人の目は爛々と燃えていた。指先が熱い。
    (殿下の爪、綺麗だな。ジョセフ様が磨いてるって言ってたっけ……)
     皮のグローブに守られたアレインの手は、まだ発展途上の少年の手をしている。日に当たらない手は剣を握り続ける生活の中で硬くなっていたが、すらりと伸びた指先に乗るつやつやとした薄桃色の爪は割れてはいない。アデルの恋人は王として磨かれ続けている。王は国の象徴であり、宝である。彼の身体と魂は国民にとっての太陽だ。それが、今アデルの手をとって、ねだるように撫でている。腰をもじもじとくねらせて、レースのさざ波を作っては唇から、ほうと熱いため息をついてアデルが触れるのを待っている。
    「……アデル……」
     微笑みの、美しさったらない!アデルは思わず指を伸ばして、アレインの耳元の髪を掬い、擦り付けるように撫でた。
    「んぅ……」
    と、甘い声が鼻から抜けて、アレインはますます潤んだ瞳でアデルを見るのだ。
    「殿下っ、風邪を召されます!」
     ぱ、と我に返ってアデルは毛布をアレインに被せた。突然のことにアレインは「わっ」と少年らしい声をあげ、顔で受け止めた毛布を退かし、恨めしそうにアデルを睨む。
    「アデル!」
    「そんな薄着じゃ、いけません!俺、俺……目閉じてますから、何か着てください」
    「……あでる」
    「アレイン殿下の大事なお身体に何かあったら、俺はジョセフ様に申し訳がたちません!」
     言ってから、アデルは後悔している。そりゃないだろと自分の小心さに憤慨すらしていた。なんてもったいないことをしたのだろう!どうしてこんなふうに言ってしまったのだろう!頭の中で先程の、アレインの姿が何度も再生される。ああ、白い布の花びらに鮮やかな、殿下の青い髪の煌びやかさ!夜の霧を纏った身体の艶めかしさ!
    「……アデル」
    「殿下、き、がえました?」
    「そのままだと、目をつむったまま、朝を迎えることになるぞ……」
     衣擦れの音がする。アデルが下がった分だけ、アレインの足音が近づく。
    「アデル……」
     麗しの恋人様の吐息が、鼻先にかかった。
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    ナンデ

    DOODLEルノとアマ

    ・プレイ中の人間が書いてます。設定や関係性の齟齬が出ている可能性があります。
    たくさんお食べ、おおきな良い子ルノ+アマ


     闘技場での激戦を越え、三日。アーマリアは自身が言う通りよく食べた。大鍋いっぱいに作ったスープを吸い込むように食べ、焼いたパンは端から消えていく……解放軍が備蓄していた食料は矢の如き速さでどんどん彼女の腹に収まっていった。だからクロエが「買い出しに行きましょう」と言い出した時、みんなは安堵した。解放軍の料理番と自称する彼女の手には、アーマリアの食べる量を計算にくわえた計画表があったからだ。
     ところ変わって、バールバチモ。ルノーは街の真ん中で、さてどうしたものかと立ち尽くしていた。
     クロエに連れていかれた荷物持ちのレックスやホドリック、クライブやアデルの他は皆好きなように街に消えていった。ギャメルとマンドランはセレストに髪飾りを買いに。リディエルはアレインとトラヴィスを引きずってクロエへのプレゼントを買うのだと息巻いていた。オーシュはセルヴィやヤーナに連れられて古書店の方へ、ロルフとリーザは魔術トリオの護衛だと後ろをついて行った。魔術を使うあの三人と、弓を使うロルフやリーザは日々の戦闘でもアシストに回ることが多いからか、近頃は仲が良い。先日はオーシュが鍋いっぱいに作った料理を全員で車座になり粛々と食べていた。セルヴィが言うには「一言では言い表せない味がする」らしい。美味いのか不味いのかすら、誰も口にしなかった。
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