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    odenchikuwa2

    無極

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    勇尾転生現パロ
    1/22生まれではない今世の兄様に対しても1/22の誕生日祝をする勇作さん

    果たし得なかった約束を 「兄様、22日は誕生日のお祝いをいたしましょう」
     
     今日も爽やか濃縮還元百パーセントの笑みを浮かべた弟が宣った。この爽やかの塊の中に色気が浮かぶようになったことは自分しか知らないはずだ。
     「勇作さん、今の俺は一月二十二日生まれではありませんよ」
     「それでも私にとっては大事な日です。弟の我侭だと思って聞き入れてはくれませんか」
     
     前世、自分が手に掛けた腹違いの弟と今世で邂逅を果たしたのは成人してからだった。
     それ故に前世同様、兄弟として育った時間もないため弟は何かにつけてイベント事を見つけては自分と過ごしたがる。
     
     「今年は土曜日なのでしこたま飲んでお泊りするのも良いですね。ホテルでも良いですが、兄様がよりリラックスできることを考えれば自宅の方が良いでしょうか」
     嬉々として話してくるその姿勢は明治の頃を彷彿とさせる。今世でもこの弟は自分に対してだけ距離感がおかしい。
     
     「どうせ準備は勇作さんがしてくれるんですから貴方の遣りやすいようにどうぞ」
     顔も性格もスタイルも良いこの弟の好意を、一体誰が断れるだろうか。
     口に出すことはないが、何かを察したのか目の前の弟が嬉しそうに眉尻を下げたのが悔しくてデコピンを食らわしてやった。
     
     *
     
     「どうしてそこまで今日に拘るんです」
     
     結局金曜の夜からベッドにもつれ込み、そろそろ日付が変わる頃になってようやく弟の腕を枕に微睡んでいた。
     自分も弟も、日頃仕事が多忙なせいか金曜の夜はとかくリミッターが外れやすい。
     再会して初めての食事でホテルに行き、最後まではしなかったが互いの欲を吐き出してみれば前世の柵とやらはどこかへ飛んでしまった。
     あの頃の自分を客観的に見れば、弟の死後にあれほど執着していたのだから今世で関係を持つことは手っ取り早い方法だった。
     えいままよ、と早々に前世での自分の所行を洗いざらい弟に告げれば「まったく意に介しません」と笑われた。
     気にしないということなのか、無関心なのかは判じ兼ねたが「兄様のお役に立てたのならば幸いです」と言われてしまえば返す言葉もなかった。
     「天から与えられた私の役目はそこまでだったのでしょう」
     弟はどこまでも清廉だった。
     
     「生まれ変わった我々には別々の両親が居て、昔とは生まれた日も名前も違いますが前世の記憶があることには意味があると思っています」
     「ははぁ、勇作さんは何事にも意味を見い出すタイプですか」
     確かに記憶がなければベッドインまでの時間は年単位で必要だっただろう。それ以前に出会うこともなかったかもしれない。
     「私は兄様が生きていて下さって嬉しい。またお会いすることが出来て嬉しい。これはひとえに前世の兄様が居たからこそ持ち得る感情です。勿論、記憶がなかったとしても兄様に惹かれていただろうという自信はあります」
     「大した自信家だ」
     「ええ、兄様に関しては譲れません。あの時代、軍に入ってから兄様に出会えたこと、兄様が共に戦場にいてくださる事、それこそが僥倖でした。皆のよすがとなるべく生きて来た自分の、ただ一つのよすがが兄様だったのです」
     弟は俺の髪を撫でながら心底幸せそうに話していた。元より自分も多弁だと思っているがこの弟には敵わない。
     「ですから兄様。1月22日は私にとって祝福された日なのです。そして私を祝福してくださった兄様は神様のような存在です」
     
     祝福された道を模索していた俺自身が勇作さんを祝福していたのか。
     どうにもややこしいが勇作さんが言うのならきっとそうなんだろう。
     もうどうでもいいな。
     弟を前にしては考え込んでも意味がない。
     今世ではシンプルに生きようと心に決めている。
     
     「勇作さんの考えは理解出来ませんが分かりました。それよりせっかくですから言祝ぎをもらえませんか」
     枕元の時計が0時を回っていることに気づいた俺は勇作さんの後頭部に腕を回して顔を引き寄せた。
     「兄様、尾形百之助さん……お誕生日おめでとうございます。貴方は私の生きる存在意義の全てです」
     「そういう重いのは要りません」
     「えっ」
     慌てる弟の顔が面白くて、そしてとても可愛く思えて俺はその唇に噛み付いた。相手の耳を手のひらで塞ぎながら丁寧に咥内を舐め尽くすと、最後に思い切り舌を絡ませて吸い上げてやる。こいつのものだと思うと唾液まで美味く感じるから困ったものだ。
     口の端から溢れた汁まで綺麗に舐め取ってから弟の顔を見ると朱を注いでいた。やる事はやっておいてここまで照れるポイントが分からない。
     
     「はぁ、兄様はいつの世でも私を翻弄なさるのですね」
     「明治の世ではむしろ俺の方が翻弄されていたと思いますがね」
     「そこのところ、詳しく教えてください」
     
     至極真面目な顔をして覆い被さってくる弟の背に腕を回しながら、自分は今とても満ち足りていると思った。
     
     *
     
     「兄様の誕生日を祝う頃までには戦線が好転していれば良いのですが」
     徐ろにそう言い放った弟に俺は唖然とした。
     激戦のさなかでそのようなことを考える意味がわからない。
     「越年すれば皆同様に歳を取ります。生まれた日の祝いなど元より無用ですよ」
     自分の言葉に、上官である弟は緩く首を振って否定した。
     「兄様がお生まれになった日は私にとって特別なのです。ですから、この戦が終わって生きて本国に帰還できた暁には私に兄様の誕生日を祝わせてください」
    やると言ったらやる男だ。変に逆らわない方が話を続けずに済む。
     「そうですか。ではお互い生きて帰れたらということで」
     「どんなに遅くなってもお祝いしましょう。兄様と私との約束です」
      
     
     
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