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    南條 史

    @Fumi91112110

    山河令登頂!山頂遭難中。
    二度目の成人もとっくに過ぎて…。
    リバイバル二次創作リハビリ中。
    @Fumi91112110

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    南條 史

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    前に書きかけてたお話の前日譚。現代転生記憶なし温周の出会い編。書きかけのお話にちゃんと続けられるといいなあ(他人事🥳) 

     気を付けているようで、距離感バグってる温様にまんまと絡めとられそうな周様。
     何でも許せる方のみお進みください。

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    #山河令
    mountainAndRiverOrder
    #温周
    temperatureMeasurement
    #現代AU
    modernAu

    甘いキスは思い出の香りプロローグ



     俺の名は周子舒。
    広告代理店に勤務している。ほぼ会社と自宅マンションを往復するだけの毎日を過ごしている、いわゆる社畜だ。

     幼いころから武道を修練しており、拳法・剣術・棒術・槍術など一通り習得している。武道の師は秦懐章。尊敬する師匠だ。ちなみに俺の勤務している会社の社長でもある。大学を出て就職するときに政治家の従兄上の秘書にと請われたが、尊敬はしているが何となく性格の反りが合わない従兄上の傍で秘書なんてごめんだ。「政治に興味がないので」と丁重にお断りした。「ならばうちに来い」と言ってくださった師匠の会社でプロジェクトリーダーを任されている。道場にはしばらく行けていないが、頑張り甲斐のあるこの仕事が好きだ。

     学生時代には、人並みに何人かの女性とお付き合いをしたこともあるが武道バカだった俺は女性を優先することはできず、振られるか泣かれるかで長続きしなかった。付き合う前に言ってあったはずなのに。今は信頼のおける部下に囲まれて社畜まっしぐらだ。期待に応えようと頑張ってくれているあいつらは可愛い。

     今日は、先日決まったCMの打ち合わせだ。クライアント様と起用するタレント、弊社からは部下である韓英と九霄と俺と三人で向かう。初顔合わせだから少し緊張している。



     僕の名は温、温客行。
     8歳の時に医師だった両親を事故で亡くした。だが不幸な生い立ちではない。子をなせなかった遠縁の叔母、羅浮夢が引き取ってくれて…自分で言うのもなんだが、たっぷりと愛情を注いで育ててくれた。学費は心配しなくても良いからと羅姨が言ってくれたので、頑張って医大に進み医師免許を取得した。
    学生時代は恵まれた見た目のおかげで良くモテた。羅姨に迷惑が掛からない範囲で男とも女ともよく遊んだが、本気になれる相手とは巡り合わなかった。

     せっかく医師免許を取得したが、恩返しがしたくて女優だった羅姨が設立した芸能事務所にモデルとして所属している。最近では随分と忙しくなり、売れっ子と呼ばれるようになった。今日は新しいCMの打ち合わせのために羅姨と一緒にマネージャー柳千巧の運転する車でスタジオに向かっている。



    「もうすぐ着きます。車は地下の駐車場に入れますので。」
    「りょーかーい……。」
     信号で止まった車の窓から何気なく外を眺めていた僕の目に飛び込んできたのは、歩行者用の信号が青になるのを待つ数人のスーツの男たちだった。

     その中で一人、春というには少し強い日差しを眩しそうに手で遮って空を見上げ、風に舞う柳絮の綿のなかでサラリーマンにしては少し長めの髪と薄手のコートの裾をひらめかせて立つ長身の男性に僕は目を奪われた。
    『完美……!』
     声を出す間もなく、仕事仲間であろう数人で談笑しながら横断歩道を渡って車の前を横切る。笑顔がキラキラと輝いていて目が離せない。胸を締め付けられるような焦燥感と追いかけたいという衝動にかられてドアロックに手を掛けた瞬間、車道側の信号が青に変わり車が動き出した。

    「ぁ……。」
    「客行? どうしたの?」
     隣に座っていた羅姨が僕の顔を覗き込んだ。
    「…っ、羅姨……何でもないよ…。」
     微笑んで返事をしてから、窓ガラスに押し当てていた手を額に当てて背もたれに身体を任せ、項垂れた。

     運命の人なんてありえない。と思っていたのに、いくら何でも信号で見かけた人に一目惚れなんて、どうしようもなさすぎる。本当に運命の人ならもう一度会えるだろうか……。ざわめく心を抱えた僕を乗せたまま車はビルの駐車場に滑り込んだ。

     美しい人を見つけた高揚感と、その人には二度と会えないだろうという絶望感に苛まれながら車を降りてエレベーターに向かう。仕事に差し障りがあってはいけない。気持ちを切り替えなくっちゃ。



     約束の時間より早めに指定されたスタジオに着いた。広告代理店の者が時間に遅れるなんてもっての外なので、時間に余裕をもって到着するのは当たり前のことだが、なんだかいつもと違ってそわそわする。
     オファーした温客行というモデルは高身長で色白のイケメンだが、CMに出演依頼するタレントは美男美女ばっかりだから今回だけが特別というわけではない。なのに俺の心が落ち着かないのはなぜだろう。

     プロジェクトリーダーなんて役職を戴いているが、実働は韓英たちが綿密に準備をしてくれているので俺は責任者として後ろに控えていればいい。お気楽ではないが気負うこともない、はずだ。

     打ち合わせのために用意された小さめの会議室のような部屋に案内され、韓英がノックしてドアを開けた。
    「失礼します。」
     韓英、九霄がきちっと礼をして部屋に入った。かなり早めに着いたので先客がいるとは思っていなかったのだが、続いて俺も
    「失礼します。」
    と会釈をして部屋に入った。
     ガタガタッ!!
     部屋に足を踏み入れた途端に割と大きめの音がした。音の方向に顔を向けるとまん丸な目で、えらく顔の良い男が立ち上がってこちらを見ていた。

     温客行と目が合って……一般的に言うと見つめ合っていたって事になるんだろうが、俺にはその自覚もなく……息をするのも忘れるほど……一瞬だったのか、数分だったのか、その時の俺は運命の扉が開いたことにまだ気づいていなかった。



     そうして僕たちは運命の出会いを果たした。
    (僕にとっては交差点からの再会になるけど。うふ。)


     
     それから僕は不審に思われないように細心の注意を払いながら彼との距離を縮めていった。僕が行かなくてもいいような打ち合わせや現場でも彼が来そうだと思えば必ず顔を出して、まずは秦九霄と韓英の二人と仲良くなった。仕事以外の話も雑談できるようになって、笑顔を見せてくれた時には心臓が止まるかと思った。美人の笑顔には殺傷能力がある。マジで。

     大人数での食事会の時に連絡先を交換し、しつこくなりすぎないように気を付けながら(何故だか強く押しすぎると野良猫のように牙をむかれるような気がしたんだよね……嫌われたくないから注意したつもり。)食事や呑みに誘った。最初こそ遠慮がちだった彼も、二人で会ってくれるようになった。

     二人でたわいもない話しをしながら過ごす時間はとても楽しくて……会話が途切れても、その空白の瞬間すら愛おしかった。

     少なくとも嫌われてはいない。と思う。

    「じゃあまた……」
    と別れ際に口にする彼の表情が少し寂しそうにみえるのは、僕がそう思っているからだろうか。
    「うん。また連絡するね。」
     できるだけ明るい声色で別れを告げて、決心した。



     次に会うときに告白する。



        つづく……。


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