ポストカード 風の季節が終わり、聖なる日々が始まると、書庫のオフィスではお祝いパーティーが行われるため、書庫の出入口には多くの星の子たちで賑わっています。
そんな星の子たちを、書庫の精霊たちは微笑ましく見ていますが、中には鬱陶しく睨むものもいます。
はしゃぐ星の子たちに苛立ちを募らせた精霊が少し怒鳴り散らしてやろうと腕まくりをして星の子の群れに近付きました。
星の子たちはそこでようやく自分たちが書庫の精霊たちの迷惑になっていたことに気付き、静かにしようと声を掛け合いますが後の祭りです。
怒りで顔を真っ赤にさせて近付いてくる書庫の精霊に星の子たちは怯えだしました。
せっかくのお祝いパーティ前なのに。星の子たちは書庫の精霊に怒鳴られる覚悟をするために目をギュッとつぶりました。
「おまちください」
凛とした声が書庫の入り口に反響します。隠し部屋の扉が放たれ、奥から現れた侍者は星の子たちの前に立ち、怒っている精霊を優しく制します。
「せっかくのお祝い事なのですから大目に見てあげてください」
大精霊さまから信頼の厚い侍者に言われては怒ろうとした精霊は何も言えません。渋々、引き下がっていきます。
「もう大丈夫ですよ。パーティを楽しんでくださいね」
侍者の言葉に、星の子たちは喜び、順番に侍者にお礼を言ってはオフィスへ向かうのでした。
出入口に集まっていた星の子たちは、様々な姿をしていました。ついこの前、訪れていた季節の精霊の服や髪型、特別な贈り物で手に入れたケープ。中には過去の季節の精霊の仮面もありました。
(……あれは、リズムの季節の仮面)
心が乱れそうになるのを、侍者は自身の青ケープの端を掴み自制します。
愛おしくて懐かしい仮面を眺めていると、侍者の元に光の鳥がやってきました。
書庫に現れた光の鳥に星の子たちは興味津々でしたが、侍者が光の鳥から手紙を受け取ると光の鳥は書庫の入り口から外へ行ってしまいました。
本来、書庫に光りの生物が入ることはあまり好まれていません。唯一許されているのはマンタの語り部の友人たちくらいでしょう。だから侍者は唇に人差し指を当てて星の子たちに向かって笑みを浮かべました。
「この事は内緒でお願いします」
星の子たちは皆、素直に鳴いて頷いてくれました。
墓所に戻ると、侍者は自分宛の手紙を開けて中身を見ました。
中には短いメッセージカードと美しい外の景色が描かれたポストカードが入っていました。
「ふふふ、メリークリスマス。座長さん」
侍者はメッセージカードを胸に抱き笑みを浮かべました。
遠い地で旅をしている座長へ、聖なる日々のお祝いを……。