花火/kksg露店をしばらく歩いたあと、俺たちは木陰のベンチに座ることにした。これから上がる花火をゆっくり見るためだ。
買った食べ物を口に運び、他愛のない話をしながら、カキツバタとその時をゆっくり待つ。
ふと会話が途切れ、次は何を話そうか、なんて考えているうちに、ベンチに置いた俺の手にカキツバタの指が触れてきた。
俺の手をなぞるようにして覆い被さってくる彼の手から、ひと際優しい温もりを感じる。
「花火もうすぐか?」
「うん、もうすぐ。」
カキツバタは手を覆いかぶせたまま、俺の指へ自分の指を絡ませる。
-ドォン!!-
大きい音が鳴り響いた。夜空に上がる鮮明な花火を二人で静かに眺めていく。
「すっげ…!迫力満点だねぃ。」
初めて見る花火に少し興奮気味のカキツバタを見て、誘って良かったと心から思った。俺は以前から、この自慢の祭りに彼を連れて来たいと思っていた。学年も違うし、リーグ部でしか会えない俺たちは、お互いの仲を深める機会に欠けていると感じていたからだ。
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