春風とオオカミくんには騙されない(3)私たちは桜のきれいな公園に移動した。
公園と言うよりは、ちょっとした遊園地のような場所だった。
「今から男子たちに赤いブレスレットを渡します!第一印象で気になった女子にブレスレットを渡してください!もちろん相手が重複しても構いません!それでは赤いブレスレットタイムスタート!」
私は1人、スケートリンクでスケートをしていた。
…うん、やっぱり誰も来ない。
そろそろ他の人たちはブレスレット貰ったりしてるのかな?
…あいなちゃんはあすかくんからブレスレット貰えたのかな?
ゆきくんは第一印象誰なんだろうなぁ。
…私じゃないだろうなぁ…かのちゃんのこと知り合いみたいな目で見てたから、かのちゃんかな?
そう思いながら無心に氷の上を滑る。
その時だった。
「…すげぇ、スケート上手くね?」
誰かが話しかけてきた。
こうたくんだった。
「…友達とよくスケート滑ってたから得意だよ。」
「さっきからプロかよって思って見てた。ジャンプとかは出来る?」
「そこまではやったことないけど…」
ちょっと出来るかもしれないと思った私は氷の上を軽く飛んだ。
そのまま着地…と思った途端バランスを崩す。
「…うわっ」
まずい、このままだと頭から転ぶ…と思ったその時。
さっきまでスケートリンクの場外にいたこうたくんが私の手を掴んだ。
「…大丈夫?」
「…ありがとう。…足が子鹿のように震えてるけど大丈夫?」
「実はスケート出来ないんだよ俺。でもすみかちゃんが転びそうになったから助けなきゃって思って」
「…じゃあ一緒に滑ろう!せっかくここまで来たんだから」
私とこうたくんは手を繋いで氷上を滑った。
「こうたくん上手になったね!もう手離しても1人で滑れるんじゃない?」
「…そういえば俺すみかちゃんに渡すものあったんだ。」
私の手を離し、こうたくんはポケットから赤いブレスレットを渡す。
「…貰ってくれる?」
「ありがとう」
私は左腕を差し出した。
こうたくんが私の差し出した腕に、赤いブレスレットが結ばれる。
…私を第一印象に思ってくれる人が、いるんだなぁ。
「…ありがとう、嬉しい。」
「喜んでくれてありがとう、よかった」
喜びに浸ったその時だった。
「…すみません、いいですか?」
私たちの前ににとくんが現れた。
「…こうた、すみかちゃんと話したいんだけどいい?」
「…どうぞ」
にとくんから目をそらす様にこうたくんは言った。
「…ありがとう。すみかちゃんあっち行こう」
私とにとくんはスケートリンクから離れ、桜が綺麗に見えるベンチに座った。
「…呼んでくれてありがとう。」
「こちらこそ応じてくれてありがとう。…一般公募、なんだよね?」
「そうだよ。この番組に出られるの、本当にびっくり」
「…俺もびっくり。本当に一般公募なの?ってくらいすみかちゃんが可愛いから」
「…え」
「こうたからブレスレット貰ったのどっち?」
「…左」
「…じゃあ右腕は俺のつけて」
立ち上がって抱きつくように私の右腕を捲り、ブレスレットを結ぶ。
…え、初日からこんなに近くていいの?
もっと徐々に近づいていくものだと思ってたんだけど…
そう思っていると、いつの間にかにとくんが隣に座っていた。
「…顔赤すぎない?」
私の顔を覗き込みながらにとくんが言う。
「さっきまでスケートしてたからかも!」
私はにとくんから目をそらすように話す。
「…今まで付き合ったのは何人?」
「…1人。…にとくんは5人?」
「よく覚えてたね」
「…これが経験の差かな?」
「…俺ね、過去の恋愛精算したくてさ。」
左側に座っていたにとくんが、私の右隣に座った。
「…だから経験の差とか言わないで。ちゃんと俺の事見ててよ。」
「…うん」
しばらくして、スタッフさんが私たちを呼びに来た。
オオカミくんは誰だ?