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    hirose_anu

    一次創作

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    春風とオオカミくんには騙されない(10)

    かの過去回

    春風とオオカミくんには騙されない(10)春風とオオカミくんには騙されない(10)

    私は思わずその場でかのに返信した。
    『すみか:私?』
    返信はすぐに来た。
    『かの:どうしてもすみかと話がしたいの。明日、会えない?』
    『すみか:明日だったら大丈夫だよ』

    翌日。
    待ち合わせ場所は、カラオケだった。
    かのは全然カラオケに行きそうなタイプじゃないから、彼女が待ち合わせ場所にカラオケを指定したのに正直驚いた。

    かのはすぐ待ち合わせ場所に来た。
    「お待たせ」
    かのは深めの帽子に女優が付けてそうなサングラスをかけて来た。
    いつもはいかにも女子な服を着て作業場に来ていたので、思わず驚いてしまう。
    「…びっくりしたでしょ?今日はマネージャーが欠席だから変装しなくちゃならなくて」
    かのは帽子とサングラスを取りながらそう言った。
    「ごめんね、呼び出して」
    「ううん、大丈夫だよ。話って何?」
    「…そうだよね。そもそもなんでわざわざ月LINEですみかを呼び出したかって話だよね。」
    私は思わず緊張してしまう。
    「…すみかが唯一プライベートで話せる友達だからだよ。こんなこと言うと、すみかの一般公募っていう立場利用しちゃうみたいで嫌だったんだけど…」
    「私のことはいいの」
    「…ありがとう。じゃあ本題に入るね。」
    かのは深呼吸してから言う。
    「…番組を辞退して、芸能界を引退しようと思うの」
    「…どうして?」
    「番組にこれ以上迷惑かけられない」
    「私は迷惑なんて思わない」
    「でももう決めたことなの…前から引退を考えてた」
    「…前から?」

    「すみか、新庄はなのって子役知ってる?」
    …その名前を、私は久しぶりに聞いた。
    「…知ってる。私が小学生くらいの時にテレビに出てた子役だよね?毎日テレビ出てたような気がする…まさか」
    かのは首を縦に振った。
    「…私なの。」
    「…え」
    「私昔、新庄はなのって名前で子役やってたのね。…お芝居も大好きだったし、テレビに出るのも楽しかった。でも、有名になっていくと風当たりは強くなっていって…世間でも芸能界でも、同じ子役の子からも叩かれ続けた。アンチなんて誰にでもいるってわかってたんだけどね。アンチだけなら怖くなかった。…すみか、あの事件のことは知ってる?」
    「…あの事件…」
    これにも心当たりはあった。
    「…事務所に殺害予告と猫の死骸が届いた。ニュースに殺害予告が届いたって報道されたら、愉快犯がたくさん出てきてファンレターよりも殺害予告が届くようになった。…怖くてもう活動が出来なくなった。活動休止を宣言してから、新庄はなのは事実上芸能界から消えた。」
    泣きそうになりながら話すかのの手を私は握る。
    「小5で芸能界から去って、高校で芸能界に戻るまでは普通に暮らしていた。普通に学校に行って、友達を作って彼氏を作って。…そんな日々なかったんだけど。全部新庄はなのっていう名前のせいだよ。友達は名前のせいで近づいてこなかった。今まで付き合った人は全員私の名前が目当てで近づいてきた。それでもこの世界に戻ってきたのは、芸能界が好きだったから。どんな形であっても戻りたかった…でも、面影が残るのかな。モデルになっても密かに新庄はなのが戻ってきたってささやかれてた。…すみか、オオカミくんのインスタ見て」
    私はインスタを開く。
    「オオカミくんの私の紹介のコメント見て」
    私は思わず目を見開いた。
    『@xx.xx は?新庄はなのじゃん』
    『@oo.oo 身体的特徴が新庄はなのと完全一致』
    「…私は福寿花野として紹介されてる。それなのにどう思う?…福寿花野として私を見てほしかった。…すみか、ゆきくんとの太陽LINEデート、覚えてる?」
    私は何も言わずに頷いた。
    「驚いたよね…ごめんね。あの日ゆきくんと話した時、君は新庄はなのだよね?って言われた。…その時思ったんだ。普通の女の子に戻ろうって。もう芸能界には戻らない。って…これで私の話はおしまい」
    「…この後、どうするの?」
    「…ついてきて欲しい所がある。そこで月LINEデートは終わり」
    「そこに行ったら普通の女の子に戻る?」
    かのは何も言わなかった。
    「…だったらもう行こう。かのが望むなら、普通の女の子の生活が1秒でも長い方がいいでしょ」
    私たちはカラオケから出た。

    タクシーに乗り、私たちはある場所に向かった。
    都内にあるビルの前でタクシーを降り、自動ドアを抜けて中に入る。

    「…やあ、待ってたよ」
    ビルのエントランスで待っていたのは、番組監督の佐藤さんだった。
    「…突然呼び出してすみません。お話があります」

    オオカミくんは誰だ?
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