春風とオオカミくんには騙されない(14)春風とオオカミくんには騙されない(14)
「…わからないです」
「何が?」
「あなたのしたいことがわからないです。この番組にはたくさんの視聴者がいることもわかる。その視聴者が私に期待しているなら…どうしてその恋の弊害を止めないんですか」
「弊害って?」
「わからないわけないでしょ?…真桜のことです。私だけならまだしも他の子たちにも影響が出ています。スタッフさんもこの状況は把握しているしあなたにわからないはずがない」
「ああ真桜ちゃんのことか。…残念だけどこちら側からは止めないよ。」
「!どうして…」
「それが彼女の恋のやり方だからだよ。真桜ちゃんは澄花ちゃんを蹴落としてでも幸多くんを手にしたいんだよね。…まあそれが純愛なのかまであわからないけど。…とにかくだ。君や他の出演者に危害が及ばない限りこっちは干渉は一切しない。」
私はそれを聞いて、なんとも言えない気持ちになった。
「…スタッフも言ってたけど、上手く編集するからね」
「…わかりました」
話が終わったのか、佐藤さんは私から離れていく。
「私、幸せになりますから」
佐藤さんに向かって私は言った。
佐藤さんは足を止める。
「成立しても成立しなくても私は私のやり方で幸せになりますから」
私がそう言うと、また佐藤さんは離れていった。
私はと言うと…もう半分ヤケになっていた。
まおに何を言われたっていい。
誰かに恋をして、最終日に誰かに告白して、それで円満に終わればいい。
そう思っていた。
…それでも、にとくんとこうたくんにはしっかり向き合わないとならないと感じた。
中間告白をしてくれた2人だから。
オオカミであろうとなかろうと私を好きだと言ってくれた人だから。
だから全部が終わる前に、はっきりさせなければならない。
もう、撮影もウォールアートも終盤に差し掛かっている。
そんな中、私は静かに決めたことがあった。
その日の夜。
某所。
「…ねえべにこ…」
「どうしたのあいな」
「すみか、大丈夫かな?呼ばれた後そのまま帰っちゃったし」
「ああ…ちょっと心配だけど大丈夫だって信じたいわね」
「…すみかは誰が好きなんだろ?この番組にいてあれだけど、よくよく考えたらすみかの第一印象誰とかそういう話一言も聞いたことなかったよ」
「…そうだね。確かにすみかは誰が好きかわからないけど、きっとまだ迷ってるんだと思うよ」
「え〜そうなのかな!」
その時だった。
2人のスマホが鳴った。
「え、なんだろ?」
「LINEだね!誰かな!」
2人は同時にLINEを見る。
『すみか:すみかです。太陽LINEと月LINE、同時に使います』
「…え?同時ってありなの〜!?すみか面白いことするね!」
「…どっちを太陽LINEにするのかな?にとくんとこうたくん…」
また2人のスマホが鳴った。
『すみか:こうたくん、2人でゆっくり話がしたいです』
…別の場所。
私は、にとくんの個人のLINEにLINEを送った。
『すみか:にとくん、2人でゆっくり話がしたいです』
「…すみかちゃん面白いことしますね!今まで太陽LINEと月LINE同時に使った子いないよ」
そばに居たスタッフさんが私に話しかけてきた。
「…え、何も考えてなかったです。大丈夫ですよね?」
一応聞いたが、もう遅いことはわかっていた。
「あ〜…こっちも同時に使われると思ってなかったからなんとも言い難いけどありだと思うよ?監督も面白いって言うと思うんだけど」
「ですよねよかった〜」
「…ちなみにどうしてか聞いていいかな?」
「…2人の気持ちにしっかり向き合おうと思ったから。2人が私を好きって言うならちゃんとその気持ちに応えたい。もう、どっちがオオカミだなんて考えられないです。私は自分が好きになった人を信じます」
オオカミくんは誰だ?