春風とオオカミくんには騙されない(7)春風とオオカミくんには騙されない(7)
まおとこうたくんの太陽LINEデートが終わり、今日で番組に参加してから1ヶ月がたった。
参加者の解禁もされ、もうすぐ第1話の公開が始まろうとしていた。
私はいつも通り、家から作業場に向かおうとした。
「行ってきます」
「…あら、澄花!今日学校に行く日でしょ?」
「え」
家を出ようとした時私は思い出した。
今日は全員登校日だということを…
私の通っている高校は、受験に合格すると学校に来なくてもいいというルールがある。
私はもう既に進路が決まっているので学校には行っていない。
授業日数などは問題無いが、月に1回あるかないかの頻度で全員登校日がある。
文字通りその日は全員学校に来なければならない。
私は学校に行った。
校門をくぐるなり、同じ時間に登校した生徒たちがざわつく。
「…あの人次のオオカミくんに出る人だよね?」
「かわいい〜…え、サイン貰えないかな?」
遠巻きにざわついているのが聞こえる。
私は自分の教室に着いた。
「澄花〜!!!久しぶり!!」
入るなり友達のナコが話しかけてくる。
「おはよう、久しぶり」
「1人だけ早く受験終わってずるいよ〜!!もう毎日が寂しい…てか気づいたらオオカミくん出演とかって何なの!?びっくりだよ〜!!」
まくし立ててくるナコ。
「オオカミ一般公募私も応募したんだよ!でもやっぱり澄花くらい可愛くないと無理だよね…」
あー…あれナコも応募したんだなぁ。
実は応募していないということは黙っていよう、と思ってナコの話を聞く。
「え、てか出演者の人めちゃくちゃかっこいいしかわいいじゃん!顔面偏差値全員良すぎ〜!!」
「確かにそれは思う」
「…特になんかかのちゃん?っていう子?なんかどこかで見たことある気がするんだよね…」
「eighteenのモデルだからそれでじゃないの?」
「いや、モデルやる前からどこかで…」
その時だった。
私の携帯が鳴った。
『着信:クソ男』
「…さとしくんもマメだね〜…」
携帯を覗き込んだナコがため息混じりに言う。
すぐ電話は切れて、LINEが来た。
『クソ男:すみか??』
『クソ男:来てるだろ』
『クソ男:話すぐ終わるから屋上来てや』
「…行ってきたら?」
「LINEしつこいし番組にも支障出るからちょっと行ってくるわ」
「いってら〜」
私は屋上に行った。
「…よう」
私は無言で目の前の男を見る。
「元気だった?学校にも来ないしLINEも返信来なかったからさみしかったんだよ!会いたかった〜」
「…T大受験するのに随分暇なのね?」
「やだなぁちゃんとA判定キープしてるよ?…澄花、なんか有名人みたいになってさぁ…遠くに行っちゃったみたいで俺やだなぁ」
彼は私に抱きつく。
「…出演者同士でヤッたりしてんだろ」
「そういうことする番組じゃないんですけど?」
「ああいう純愛ぶっておいて裏でセフレ量産するような番組俺嫌いなんだよね〜!澄花がそういう下等に成り下がったみたいで嫌だなぁ〜」
私の体に触れながら彼はしゃべり続ける。
「ねえ澄花さぁ!番組辞退してくれない?」
「…え」
「まだ放送してないしさぁ、ね!いいでしょ?嫌なんだよ〜好きだった女の子が他の人に弄ばれるの!…俺の言ってること、わかるよね!」
「そんなのわかりたくもないわ」
私は彼を突き飛ばす。
「ふざけないでよ!誰のせいで別れたと思ってるの?それで俺のために辞退してよなんて都合良すぎる話ね」
彼は笑って私を見ている。
「辞退なんて絶対しない」
私は屋上を去った。
…全員登校日は午前中だから、学校が終わったら作業場に行こう。
心がもやもやしてしょうがない。
そう考えたその時だった。
私の携帯が音を立てる。
LINEが来ていた。
『ゆき:ゆきです。太陽LINE使います』
程なくしてまたLINEが来た。
『ゆき:かのちゃん、話がしたいです』
文面を見た瞬間、またチャイムが鳴った。
やばい、教室に行かなくちゃ。
私は教室まで走った。
午後、私は作業場に向かった。
「おはよう〜」
「おはようー」
今日は私以外全員来ていた。
「制服だー」
「今日学校だったから…着替えてきます!」
私は更衣室に向かった。
更衣室で作業着に着替えていると、誰かが入ってきた。
…かのだった。
「かの!どうしたの?」
「すみかにお願いがあってきたの」
「何?」
「…午前中の太陽LINE見た?」
「うん、見た」
「ゆきくんとの太陽LINEデート、付き添いで来て欲しいの」
オオカミくんは誰だ?