朝焼けの邂逅半田桃は悩んでいた。吸血鬼の退治依頼の帰り、大きな吸血鬼の気配を嗅ぎとり駆けつけてみた公園のベンチには一人の男が寝そべっていた。黒いマントに時代錯誤な服装、唇から覗く鋭い牙、ダンピールである半田の探知能力が伝える強大な気配。その全てがこの男を吸血鬼だと示しているのに、子供の様な寝顔に思わず気が抜けてしまう。
(確か、ロナルドといっただろうか)
同じ退治人であるヒナイチが何度かギルドに連れてきたのを半田は見た事があった。何百年もの時を生きる高等吸血鬼らしいが、甘いホットココアを美味しそうに飲む姿はとてもそうは見えず困惑していたのを覚えている。今だってこんなに近くに退治人である半田がいるというのに、口の端から涎を垂らし、起きる気配は無い。
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