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    佐々木

    @mochi_moch15

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    佐々木

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    りおわたの始まり方が永遠にわからない(から妄想が捗る)

    『人はそれも愛と呼ぶ』僕らの関係は、少し不思議な始まり方をしていたと思う。
    雨だれが石を穿つように、四季を通じて木々が彩りを変えるように、ゆっくりと、けれど着実に心に芽生えた想いはあったのだろう。それを自覚する前に、ある日何気ないきっかけで、煮詰めた果実みたいに深い赤紫の瞳に僕の視線は絡め取られた。
    相手の体温を肌で感じる距離まで顔が近づいた時、何をされるのか頭ではちゃんと理解していた。けれど体は、手を伸ばしてそれを遠ざける事はしないで受け入れるように瞼を閉じた。
    その直ぐ後に唇に触れた熱は少しだけカサついていて、だけどとても優しくて、その時初めて僕は桔梗が好きなのだと理解した。



    不思議なもので、一度自覚してしまうと僕らの関係は急速に縮まっていった。初めてキスをした日から程なくして二回目、三回目と数は増えていき、まるでそうなることが自然なようにそれ以上も求め合うようになっていった。
    今もそうだ。部屋に二人きりの状況で、さっきまで見ていた映画が思いの他恋愛要素が強くて、自然と感情が引っ張られて隣にいる相手を求めるように体が動いた。
    「……的場」
    「ん……なに…?」
    「舌を」
    「……」
    キスの合間に僅かに唇が離れて、短く告げられた言葉に無言で口を開いた。再び重なった熱にぬるりとした感覚が加わると、背筋に甘い痺れが走る。
    「……っ、ふ……」
    ぴちゃ、くちゅ、と唾液の混じり合う音が耳の奥で響くのは、ひどく羞恥心を煽られる。でもそれ以上に気持ち良さが勝ってしまい、結局大した抵抗もできずに心地よさに飲まれてしまう。
    「ん、ぁ……」
    表面を擦り合わせるようにして絡み合っていた舌が解かれ、上顎をなぞるように口内を撫でられる。ぞわぞわとした感覚が背中を走り抜け、僕は思わず伸ばした手で桔梗の服を握りしめた。
    「っ、は……ぁ」
    「……ふ」
    それを静止の合図だと正しく受け取ってくれた桔梗は直ぐに動きを止めてくれた。最後に小さく音を立てて離れた唇をぼんやりと見つめると、濡れた口元を親指で拭いながら、桔梗は小さく笑っていた。
    その手が僕の目にかかっていた前髪を払い、邪魔にならないようご丁寧に耳に掛けられ指の腹で目元を撫でられると、急に堪らない気持ちになって目を逸らしてしまった。
    「どうして目を逸らすんだ」
    「いや、何か……」
    「今更照れるのか?」
    「煩いな」
    余裕のある言い方に不満は沸いたが、今は視線を合わせる気にはなれなくて顔を背けたのに、頬に添えられた手で強引に正面へと戻されてしまった。そのままじっと瞳を覗き込まれ、至近距離から見つめられる事に耐えきれなくなった僕はぎゅっと目を瞑って最後の抵抗を試みた。
    「的場」
    「……やだ」
    「分かった」
    主語のない言葉に対して桔梗はあっさり引き下がった。その代わり向こうも主語はなく、何に対して分かったというのか問いかけようと口を開きかけた時、桔梗の手がゆっくりと僕の体を押し倒し、柔らかなベッドへと体が沈んだ。そして背中を支えていた手が引き抜かれ腹部に触れると、下に向かって撫で下ろされてある場所に辿り着く前に止まった。
    「無理強いはしない。だからここで止めるか、続けていいかだけ聞かせてくれ」
    「………」
    まるで聞き分けのいいように聞こえる物言いに、僕は思わず桔梗に視線を向けてしまった。物言いたげな目に気付いてはいるだろうに、澄ました顔で僕の答えを待つ桔梗に言いたい文句はひとつじゃ収まりそうになかった。
    桔梗の手はまだ腹の上に置かれたままだ。あと少し、下へ滑らせれば誤魔化せないくらい昂った熱に届いてしまう。それは向こうも同じで、足の間に割り込ませた桔梗の体と僕の体が触れ合う場所で、同じ様に熱く脈打つものを感じていた。
    「聞き方に悪意があるんだけど」
    「そうか?」
    「そうだよ」
    自分だってそんなになってるくせに、と言い返せば、「的場が答える事に意味があるだろ?」としれっと言われてしまった。本当にずるい。
    今更止まることなんて出来ないのに、続けてと返したらどうなるかは分かりきっているのに。それでも僕に決定権を委ねようとする。
    「おまえって案外面倒臭いよね」
    「でも好きだろ?」
    「……煩いな」
    さっきまでの甘やかさは何処へやら。嫌味の応酬を始めてしまうのは今日に始まったことではないけれど、結局最後は流されてしまうのだから、僕も大概趣味が悪いみたいだ。
    続けていいと返したら、きっと桔梗は文字通り全身くまなく触れて愛して、体も思考も溶かそうとする。さっきよりも激しくて、そのくせ優しさも残した愛撫で頭の中が真っ白になるような快楽に溺れさせられる。
    それを分かっていて、同時に期待をしてしまっている時点で、既に答えは決まっていた。ただそれを素直に口にするのは少し悔しい気がして、言葉にする代わりに首に回した腕に力を込めて桔梗の顔を引き寄せた。いつのまにか羞恥心は薄れ、代わりに対抗心が芽生えた僕は、自分から桔梗に視線を絡めて挑むように目を細めた。
    「──早くしてよ」
    「ふっ。ああ、了解した」
    そんな可愛げのない答えに桔梗は笑い、耳元で囁かれた声に、ぞくりと背筋が震えた。そして同時に服の裾から侵入して胸元を撫でた手の感触に、今度こそ僕は観念して桔梗に身を委ねた。



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