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    Satsuki

    短い話を書きます。
    @Satsuki_MDG

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    Satsuki

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    無双の妄想。ユーリスとシェズくんと灰色の悪魔の何か。当て馬にするのは好きじゃないのでシェズくんのことも灰色の悪魔さんが抱いてくれると思う(3Pの話をするな
    220424

    「悪いが、何度ここへ来られてもお前のいる学級にゃ興味ないね」
     アビスと呼ばれる地下街で、シェズは何度目かの玉砕に拳を握り締めた。ユーリス=ルクレールと名乗っている灰狼学級の級長は、長い足を放り出すようにして組み、机に頬杖をついてシェズの方を斜めに見上げる。その後ろには、眼光の鋭い生徒たちが二名控えて、シェズの動きを探っている。なにかおかしな動きをしようものなら、一瞬で取り押さえられてしまうだろう。ひりついた空気には慣れっこだが、士官学校でそんな騒ぎを起こす気はない。シェズは溜息を吐くと、差し入れだった焼き菓子を横の机に置いた。算術の本、盤上遊戯、甘い焼き菓子……全てユーリスの好むもののはずだ。なのに、何を贈っても、幾度頼んでも、彼を口説き落とせない。自分の所属する学級にスカウトすることができない――
    「遠からず、争いが起きるぞ。……国同士の、でかい奴が。そうなればガルグ=マクも、ここも、巻き込まれる。……ユーリス、俺と一緒に戦ってくれ」
    「断る。……お前、しつこいぞ」
     爪の先まで整えられた指が、忠告するようにシェズを差す。
    「しつこい男は嫌われるぜ」
    「ッ……俺は、あんたの腕を買ってるんだ」
    「だから何だ? 俺がどんな稼業をやってるか、以前に教えてやったろうが」
     王国西部の貧民窟を中心に、暗黒街で縄張り争いを続けている組織のひとつ……その頭領が、彼だった。人食い燕の噂は聞いたことがある。女神像よりも美しく、髪は絹、その歌声は歌姫を超越し、人々の心を掴む。甘い台詞で誘惑されて、金や心を差し出す貴族が後を絶たない。しかしその正体は、人心を喰い荒らし、季節が移るより前に飛び立って行く、無情な燕。残された者の嘆きは虚しく虚空に響くのみ。絶世の美女だとも、色気匂い立つ美男子だとも言われていたが――まさかこんな場所で本人に会うことになろうとは。
    「……関係ない。俺は……」
    「はいはい。聞きたくないね。近く戦争が起きることも、ここが巻き込まれそうな事情も、情報は掴んでる。……俺様は二、三日中に手を打たせてもらうよ。もう会うこたぁねえだろうが、ま、お前も達者でな」
    「お、おいおい!? どこに行く気だよ!?」
     立ち上がり、灰狼教室を出て行こうとしたユーリスに追いすがったシェズの手を、白いマントが振り払う。振り返った勝気な眼には、美しい、しかし背筋が冷えるような酷薄な光が宿っていた。
    「……俺は、勝ち馬にしか乗らねえ主義でね……これは独り言だが……とある勢力が、傭兵団を雇ったって噂だ」
    「なっ……まさか」
    「壊刃ジェラルトに、……灰色の悪魔。傭兵やってたなら聞いたことがあるだろ」
    「ッ……!!」
    「俺はそっちにつく。悪く思うなよ……じゃあな」
     ひらり、肩越しに手を振ると、ユーリスはコツコツとアビスの石畳に靴音を響かせて去って行ってしまった。クソッ、今日が最後のチャンスだと思って会いにくれば、これだ。シェズは置いてけぼりを喰らった焼き菓子と、無様な己を睨みつける。
    「灰色の、悪魔……!」
     まさかこんな場所でヤツの名を聞くことになるとは。しかも、間接的にユーリスという駒を奪われるなんて。恨めしい。そう思うと同時に、復讐の機会が巡ってくるであろう未来に感謝した。次は必ず、あの無表情で冷淡な男に一泡吹かせてやる。唇を笑みの形に引き結んだシェズの体から湧き立った殺気に、灰狼学級の生徒たちは顔を顰めた。戦場が呼んでいる。天涯孤独な少年には恐れるものもなどない。今は自分ができる限りの力で、雇い主のために戦うのみだ。キッと顔を上げ、シェズは前だけを見据えて大股で歩き出すと、二度と訪れることはないであろう灰狼学級を後にした。
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    Satsuki

    BLANK全然明記していなかったのですが当方が書いている捕虜フェリは全てざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリのファンフィクです。
    また書きたいところだけ書きました。シルヴァンにおいたをする悪い捕虜フェリです。全裸だけどえっちではないです。多分この後えっちなお仕置きをされる。されてほしい。
    ぼんやりと、冬の朝日が雪の上を照らし出すように意識を取り戻したのは幸運だった。フェリクスはその身を包んでいる温もりが、毛布ではなく湯によるものだと知覚したあとも、寝息を装い瞼を閉じたままでいる。ちゃぷ、と水面を揺らして、背後にいる誰かがフェリクスの肩に湯をかけている。その誰かの裸の胸板がフェリクスのぐったりと力の抜けた背を受け止めて、首を肩に凭れ掛からせている。小さく聞こえる機嫌のよさそうな鼻歌。フェリクスはまだぼんやりとする頭で薄っすらと目を開き、蝋燭の炎にちらちらと揺れる湯船を見た。
     そこから先は、ほぼ脊髄反射で体が動いたと言って良かった。
     まず最初に、背後の人間以外、周囲に人の気配が感じられなかったことがフェリクスをそうさせたと言える。それに、狭い浴槽の中に大の男が二人詰め込まれていたことで、足が不自由なフェリクスでも相手の足の間で体を支えることができた。なにより相手が油断しきっていたことが勝因だったが、彼も数時間にわたっての性交に疲労していたのだろう。だからフェリクスは、瞬時に身を翻して彼の濡れた赤い髪を掴み、渾身の力を込めて浴槽の縁に頭を叩きつけてやることができた。
    1988