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    ゆとくん

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    ゆとくん

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    妄想⚠「あれ、久しぶりに見ましたねぇ〜…」

    ゴミ箱に捨てられて姿の見えなくなった紙達のことをふと思い出す。
    あれを見ると思い出してしまう、昔被検体をしてきた研究の数々を。
    辛くて苦しくて、でも己の目標のために頑張って頑張って頑張って……その末にあったのは、孤独だった。
    学会の人間には研究結果を蔑まれ、挙句に追放されて、今まで私のことを賞賛していた人間は離れていった。
    あれだけ自らの身体を犠牲にして、精神をズタボロにして作った研究を馬鹿にされただけでなく、周りには誰も居なくなった。
    私に残ったのは、少しの資金と研究結果だけだった。


    今では良い被験者に恵まれ、仲間もできて、研究者としての地位も取り戻してきたとはいえ。
    昔のトラウマの夢に苦しまされ、汗と涙で最悪の目覚めとなった朝は少なくない。

    「…ッ…はぁ…」

    …こんな言い方は小っ恥ずかしいが…私はただ愛されたかったのだ。
    私の努力の結晶を、私の生きてきた証を、私という人間を認めて欲しかっただけだった。
    それなのに、私を見る目線は…
    酷く、冷たかった。まるで豪雪の降りしきるシベリアに1人取り残されたかのような感覚に襲われて、身体が震えて堪らなかった。
    呼吸が苦しくて、浅くとめどないの息を吐き、酸素を求めて必死に吸った。
    あぁ、私とはなんと惨めで憐れなのかと。ただ、ただ、悲しかった。

    ………やめよう。こんなことを思い出すのは。
    胸ポケットから少々乱暴にHOPEを取り出し急いで火を付けて深く吸う。
    …そういえば、毒煙を吸い始めたのもこんな理由だったか。
    嫌なことをただ忘れたくて、吸い始めたら存外ハマってしまった。
    気づけば多い日は20本以上吸うほどにはヘビースモーカーになってしまったのは想定外だったが。
    誰かの持っている煙草は怖いくせに、自分が所有権を握っていると考えると不思議と怖さはなかった。
    初めは、あんなにもビビっていたと言うのに。

    はぁ…と溜息を混じらせつつ毒煙を吐くと、灰色に濁った毒煙が風に吹かれてユラユラと揺れる。
    その姿が、昔のトラウマに引き摺られて身動きを封じられている私を嘲笑っているかのようで…

    …ッふは…

    思わず自らを嘲笑してしまった。


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