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    mtkz3zi

    @mtkz3zi
    神東とか富石とか
    落書きあるいはスケベ置き場

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    DOODLE富石 短文
    滝の流れのように富山の知る石川とは我儘放題傍若無人な隣人だ。しかし、あれが誰にでもそんな対応をしているかといえば全く違う。むしろ対外的には物分りのよい振る舞いをする生粋の猫被り、意地の悪い言い方をするなら内弁慶だ。杜撰な態度の差はなぜだか表沙汰になったことはなく、疑いの眼すらもうっとりと曇ってしまうのが常なのだからまったく石川は外面で得をしている。県民曰く、思いやりに溢れ、優雅な眼差しは思慮深く、そのかんばせは雪解けの雫のように儚げで美しい――――と熱弁されたところで富山としては首を傾げるばかりである。雪解けの雫とて急流へなだれ込めば山をも抉る鉄砲水となる。そういった表現と考えれば的外れとまでは言えない。少なくとも富山にとって石川とは治水のかなわぬ暴れ川のような存在だった。もはや生活に欠くことはできず、そして荒れ狂った日には耐え忍ぶしかない。いつの話だったか、富山を足蹴にする石川を現行犯で目撃した職員がいた。百年の憧れも醒めるだろうと思いきや、微笑ましそうに何と言われたか今でも鮮明に思い出せる。「おふたりは仲がよろしいんですね」。もっとほかに読みとるべきことがある。ただ遠慮が存在しないというだけで仲睦まじく捉えられる謂れはない。苦虫を噛み潰すような顔をしていた石川も多分同じことを思っていただろう。
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