酔生 見た目もスピードも悪い、歩く車の雑踏。
アドソンたちの呼び込み声。
Q-9がウィルスンを追いかけ回して轟かせるサイレンと声。
買い物や仕事に来たケーブロイドの発するスパークの音。
多種多様の喧噪が止む頃。
夜しかないこの世界の、一日の終わり。
ダークナーの眠る時間。オレの時間。
皆が起きている賑やかな時間はゴミ捨て場やゴミ箱で過ごし、皆が眠っている閑静な時間は街を歩いて食べ物を探す。それがオレの日常。
誰にも気付かれないように、誰にも悟られないように。
笑われないように、弱さを知られないように。
隠れて生きるのが、オレの人生。
栄華の頂点とは正反対を往く、惨めな人生。
遠くで聞こえた酔っぱらいたちのはしゃぐ声が聞こえなくなったのを機に、静かにゴミ箱から這い出した。
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