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    敦隆、龍握、タダホソの人。

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    ペットショップで世良君みたいなワンコと戯れる堺良則(31)

    サクセラ、セラサク
    (両方とも好きなので、読む人によってお好きにカプは捉えてくださいね!)

    #サクセラ
    saxella
    #セラサク

    セラサクセラ 下町らしい活気ある浅草の通り。爽やかな青空に浮かんでいた太陽が西に傾き始め、街が茜色に染まっていく。
     堺は帰路を急ぐ子供たちの横目に、丹波たちと約束していた居酒屋に向かっていた。約束の時間まで十分余裕がある。今日も一番乗りは自分であろう。まぁ、時間通りに始まればそれでいいと思い、早くも遅くもない足取りで歩いていた。
     年代の近い固定化したメンバーで、馴染みの場所で、いつの時間に集まる。いつの間にか変化がないことをつまらないだとか、飽きたとか文句を言う年齢ではなくなっていた。未知との邂逅で鼓動を躍らせるより、心は安心感を求め始めている。
     チームでも若い歳ではない。しかし、それがネックだと思いたくはない。
     それ故、食事にもコンディションにも気を遣っていた。それは丹波も心得ているのか、野菜中心の塩分控えめの料理を予め店にお願いしているようで、毎回アスリート向けの料理を提供してくれている。
     家での食事に店の料理を参考にしてみようかと考えた時。
    「キャン!」
     高音のポンと弾んだ鳴き声が耳に入ってくる。
     視線を横に向けると、通行人に見やすいように置かれたガラスショーケースの中で、ひと際小さな子犬がケースをこれでもか舐め散らかしていた。タピオカ店から空きテントなってしまっていた一角。知らぬ間に、そこはペットショップになっていたのだ。
     犬種はポメラニアンだろうか。ジャンプをしてようやく届く位置を一舐めしては落ち、再びジャンプして真っ赤な舌で透明な板を器用に舐める。そんな必死にジャンプする必要はないだろうに、堺と目が合ってからは、より真っ赤な舌を見せつけるようにベロベロと舐め続けていた。舌が乾きそうである。
    「ガラスなんて味しねぇだろ」
     フッと鼻で笑って、子犬の涎でべちょべちょに濡れたガラスを覗き込む。自然と足は止まっていた。
    「キャン!」
     はっ、はっと舌を出した子犬が、どこか阿呆っぽい表情で返事をして、今度は先ほど舐めていた場所よりも高い位置を舐めてみせる。他の身長の高い犬種であれば、苦労しなくても届く位置。なんなら隣のケースで眠っているゴールデンレトリーバーの子犬ならジャンプをしなくとも届くはずだ。それなのに、こいつは馬鹿の一つ覚えみたいに……。
     意地悪をしようとしたわけではない。純粋にどこまで努力をするのだろうかと気になっただけ。
     指先をそっとガラスに這わす。届くか届かないかギリギリのライン。それを合図にして、指に向かって躊躇いなく子犬が飛んだ。
     あと少しで届きそうなところで小さな身体が落ちる。しかし、諦めてたまるかとどこかの誰かみたいにキリッと顔を整え、再び飛んだ。
     あぁ、今度は届くだろうな、と力強く踏み切った足を見て確信する。結局、努力しようとしてる奴を目で追ってしまうのだ。馬鹿みたいに単純で、それでいて諦めない奴を。
    「キャン! キャン!」
     お世辞にも華麗とは言えない着地をしたあと、褒めてくださいと全力で尻尾を振る。このまま放置すれば、ふさふさした尾がちぎれてどこかに吹っ飛んでいきそうだった。
    「あー……」
    「キャン!」
    「俺は何もおやつとか持ってな……」
    「気になりますか? よろしければ抱っこしてみます?」
    「えっ」
     キャンキャンと吠え続ける子犬の声に気がついたのだろうか。ペットショップの店員がわざわざ店の外までやってきた。残念ながら飼うつもりで見ていたわけではない。ただなんとなく目に留まっただけ。
    「……クーン」
     潤んだ瞳が、お願いしますと訴えてくる。
     おい、そんな目で見るな。十年以上前に見たチワワのCMと自分の置かれている状況が被って、ヒクリと頬が引き攣った。しかも、一瞥した腕時計は、まだ時間に余裕があると悪魔の囁きをしてきている。
     そう。少しくらい抱いても問題ない時間。ここでモダモダしている方が時間の無駄だ。
    「少しだけなら……」
     そうポツリとこぼし、子犬がショーケースから出てくるのを待ったのだった。



     そして子犬を抱き、いよいよ大変な目にあった。嬉しションをされかけたり(辛うじて免れたが)、頬をガラス並にベロベロと舐められたり、帰らないでくれと服の袖を嚙まれて身動きできなくなったり……。
     結局、居酒屋に到着したのは、集合時間ギリギリ。
     足早に居酒屋にやってきた堺に、丹波は「堺が一番遅いとか、珍しいこともあるもんだな。あっ、なんかいいことあった? いい顔してんじゃん」と笑いかけたのだった。
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