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    敦隆、龍握、タダホソの人。

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    タダホソ進捗
    東京で過ごす2人
    (ここら辺から飛び飛びになる)

    #タダホソ

    東京でイチャつくタダホソ 成田空港と羽田空港は意外と遠い。
     リムジンバスで約一時間。直通の電車を利用すれば、二時間半弱である。県を跨っているからといえば、そうなのだが、もう少し近ければ便利がいいのにと思ってしまうのは、自分だけじゃないはずだ。
     細見に本屋に行きたいと誘いを受けてから数週間後。大分空港から飛び立った多田は、品川で乗り継ぎ東京駅の構内をウロウロと彷徨っていた。平日の午後は、通勤のピークはずいぶん前に超えていても、未だに多くの人で溢れかえっている。
     目的の場所は、銀の鈴。駅構内の地図を頼りに、頼りない足取りで向かう。
     慣れない東京駅での待ち合わせに、数日前ネットで『東京駅、待ち合わせ、分かりやすい』と密かに検索をかけ、見事銀の鈴がヒットした。細見にそこで待ち合わせしようと連絡したのだが、送った自分の方が迷子になりそうである。それでもなんとか辿り着き、オランダから戻ってくる細見を待つ。成田空港への到着時刻に合わせて、飛行機を取ったつもりだが、空港からの移動時間まではどうにもできない。大分以外で細見を待つ機会は、これまであまりなかったなと思った。
     そもそもジャパンリーグとヨーロッパリーグのシーズンオフは被ることはない。どちらかが休みの時は、どちらかがシーズン真っ最中だ。初めは時間を気にせずゆっくり出かけられないなと残念に感じたが、オランダでプレーする細見を生で見た時は、これはこれでよかったかもしれないと多田は考え直した。自分も幼い頃からサッカーに触れ合っているサッカー小僧なのだ。すごい選手の有り得ないプレーを目の当たりにしてしまえば、プロでも興奮もする。日本のサッカーよりレベルの高い試合内容は、多田の頭の中から『観光』の文字を消滅させた。試合がある日はスタジアムに足を運び、細見を応援しつつ、選手のテクニックに一気に目を奪われる。選手してのモチベーションも当然上がったが、純粋に楽しかった。
     そして、細見の方がオフシーズンになった時は、細見も大分までわざわざ足を運んでくれていた。オランダの方がレベルの高い選手が多いと分かっているので、見応えがないんじゃないかと心配したが、試合後、笑顔で拍手をする細見が自分のレプリカユニフォームを着ている姿を見つけてしまい、試合を楽しんでくれたという安心感よりもくすぐったさの方が勝ってしまった。すぐに見つけてしまった自分も自分だが、あれは彼シャツよりもタチが悪い。「顔が真っ赤だぞ。もしかして、母ちゃん来てたか?」とチームメイトにからかわれたほどだ。しかも次の日の地元新聞記事に、そのユニフォームを着てファンサする細見の写真が載った。そして、ネット記事にも。綿谷からは「クラブ公認カップルおめでとう」と皮肉めいたメッセージが送られてきて、もう色々と大変だった。
     しかし、今日、細見と会うのは、大分でもなければオランダでもない。
     巨大な鈴の前で立っていると、人混みの中から明るい茶色が微かに見えた。
     軽く手を振るとすぐに細見と目が合い、鼻筋の通った顔がフワリと綻ぶ。
    「よう、久しぶりだな。代表戦以来か?」
     目の前に立った細見は、友人との再会を喜ぶように爽やかに笑っていた。
    「そうなるな。電話は一昨日したけど」
     しれっとそう言うと、細見にフイッと目を逸らされる。
    「そういうことは、わざわざ口にしなくていいんだよ」
     化けの皮が剝がれたように、可愛い恋人の顔が出てきた。
     照れ隠しだということは、分かりやすい表情から読み取れたので、「悪い」と軽く受け返す。
    「それじゃ、さっそくチェックインしにホテル行くか。細見も時差ボケでつらいだろ?」
    「つらくはねぇけど……チャックインできるまで時間あるだろ?」
    「大丈夫。アーリーチェックインできるとこ、選んどいたから」
     できる男だろと得意げに笑ってみせた。
    「多田にしては珍しく気が利くな。今日の試合は雨が降んのか?」
    「おいー、降らねぇって」
     ホテルに向かって歩きながら、冗談を交えて話す。
     軽口を叩き合う時間すら、かけがえのないものに思えてしまうのは大げさだろうか。
     ずっと会いたかった細見が隣にいる。
    ——嬉しい。マジですごく。めちゃくちゃ嬉しい。
     小学生の時に書いた読書感想文より酷い出来である。
     週二のビデオ通話は、細見と再会してからの僅か数分の時間に負けてしまっていた。足りないピースが埋まるように、細見の存在が多田の心を満たしていく。
     会えない日々が続いていた中、ようやく手にした細見とのオフの日。一日オフの前日、多田は午前だけの軽めの練習を終え、飛行機に乗って東京に来ていた。明日の夜には大分に戻る予定であり、細見もいったん実家に帰ると話していて、今日と明日しか恋人の時間はない。
     本当なら、すぐに抱き締めたいところだった。
     ビデオ通話で顔と声は感じられても、体温や匂い、感触までは分からない。アーリーチェックインができるホテルを選んだのは、もちろん細見を休ませる意図もあったが、早く二人きりになりたかったからでもある。
     駅からホテルまでの徒歩三分が、アディショナルタイムの三分と同じと納得できないくらい、とてつもなく長く感じられた。
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