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PROGRESSタダホソ進捗。居酒屋でU22の4人の会話。綿谷に例の彼女がいる。
居酒屋でのわちゃわちゃ 東京駅周辺で偶然見つけた創作料理の居酒屋は、完全個室で雰囲気もよかった。
テーブルに並ぶ日本料理を隣に座った細見が、目を輝かせて見つめている。メニューを眺めていた時、細見の瞳が天麩羅と刺身で止まっていたので、盛り合わせを注文したのだ。ちなみに大トロに真っ先に喰らいついたのは綿谷で、次は小室。最後の一切れに、お前は食いたいのかと細見に目線で尋ねられたので、食えよと笑顔で返しておいた。大分でも新鮮な魚はたくさん食える。次に開催された天麩羅争奪戦争は、細見が制した。
「そういえば、綿谷は今日どこに泊んの? 今から鹿島に帰るのは無理だろ」
地鶏の炭火焼を口に運びながら、横にいる綿谷に小室が尋ねる。小室も多田たちと同じように東京駅周辺で宿を取ったらしい。
2033テーブルに並ぶ日本料理を隣に座った細見が、目を輝かせて見つめている。メニューを眺めていた時、細見の瞳が天麩羅と刺身で止まっていたので、盛り合わせを注文したのだ。ちなみに大トロに真っ先に喰らいついたのは綿谷で、次は小室。最後の一切れに、お前は食いたいのかと細見に目線で尋ねられたので、食えよと笑顔で返しておいた。大分でも新鮮な魚はたくさん食える。次に開催された天麩羅争奪戦争は、細見が制した。
「そういえば、綿谷は今日どこに泊んの? 今から鹿島に帰るのは無理だろ」
地鶏の炭火焼を口に運びながら、横にいる綿谷に小室が尋ねる。小室も多田たちと同じように東京駅周辺で宿を取ったらしい。
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PROGRESSタダホソ進捗東京で過ごす2人
(ここら辺から飛び飛びになる)
東京でイチャつくタダホソ 成田空港と羽田空港は意外と遠い。
リムジンバスで約一時間。直通の電車を利用すれば、二時間半弱である。県を跨っているからといえば、そうなのだが、もう少し近ければ便利がいいのにと思ってしまうのは、自分だけじゃないはずだ。
細見に本屋に行きたいと誘いを受けてから数週間後。大分空港から飛び立った多田は、品川で乗り継ぎ東京駅の構内をウロウロと彷徨っていた。平日の午後は、通勤のピークはずいぶん前に超えていても、未だに多くの人で溢れかえっている。
目的の場所は、銀の鈴。駅構内の地図を頼りに、頼りない足取りで向かう。
慣れない東京駅での待ち合わせに、数日前ネットで『東京駅、待ち合わせ、分かりやすい』と密かに検索をかけ、見事銀の鈴がヒットした。細見にそこで待ち合わせしようと連絡したのだが、送った自分の方が迷子になりそうである。それでもなんとか辿り着き、オランダから戻ってくる細見を待つ。成田空港への到着時刻に合わせて、飛行機を取ったつもりだが、空港からの移動時間まではどうにもできない。大分以外で細見を待つ機会は、これまであまりなかったなと思った。
2141リムジンバスで約一時間。直通の電車を利用すれば、二時間半弱である。県を跨っているからといえば、そうなのだが、もう少し近ければ便利がいいのにと思ってしまうのは、自分だけじゃないはずだ。
細見に本屋に行きたいと誘いを受けてから数週間後。大分空港から飛び立った多田は、品川で乗り継ぎ東京駅の構内をウロウロと彷徨っていた。平日の午後は、通勤のピークはずいぶん前に超えていても、未だに多くの人で溢れかえっている。
目的の場所は、銀の鈴。駅構内の地図を頼りに、頼りない足取りで向かう。
慣れない東京駅での待ち合わせに、数日前ネットで『東京駅、待ち合わせ、分かりやすい』と密かに検索をかけ、見事銀の鈴がヒットした。細見にそこで待ち合わせしようと連絡したのだが、送った自分の方が迷子になりそうである。それでもなんとか辿り着き、オランダから戻ってくる細見を待つ。成田空港への到着時刻に合わせて、飛行機を取ったつもりだが、空港からの移動時間まではどうにもできない。大分以外で細見を待つ機会は、これまであまりなかったなと思った。
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PROGRESSタダホソ進捗その3。甘い。
第一章その3「おい、多田」
宿泊するホテルに到着したあと、今夜泊る部屋に移動しようとしていた時、誰もいない廊下で細見に呼び止められる。それだけで細見が何を言おうとしているのか分かってしまい肩を竦めた。隠そうとしていないのか細見の顔には、明らかな苛立ちが滲んでいる。想像していたよりもバレるのが早かったなと思った。
高校二年生の時、膨らんだ欲望を抑えられそうにないと感じた多田は、何年間も共に過ごしてきた細見との夜を避けた。男はオオカミという名言があるように夜が特にダメなのだ。一番理性が緩む。夜さえ別々になれば、昼間は健全にサッカーに取り組めるのだから問題はないと、選んだ最善の選択肢だった。
「部屋割りのことか?」と分からないふりをして尋ねると、「あぁ」と吐き捨てたような答えが返ってくる。
1813宿泊するホテルに到着したあと、今夜泊る部屋に移動しようとしていた時、誰もいない廊下で細見に呼び止められる。それだけで細見が何を言おうとしているのか分かってしまい肩を竦めた。隠そうとしていないのか細見の顔には、明らかな苛立ちが滲んでいる。想像していたよりもバレるのが早かったなと思った。
高校二年生の時、膨らんだ欲望を抑えられそうにないと感じた多田は、何年間も共に過ごしてきた細見との夜を避けた。男はオオカミという名言があるように夜が特にダメなのだ。一番理性が緩む。夜さえ別々になれば、昼間は健全にサッカーに取り組めるのだから問題はないと、選んだ最善の選択肢だった。
「部屋割りのことか?」と分からないふりをして尋ねると、「あぁ」と吐き捨てたような答えが返ってくる。
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PROGRESS新刊のタダホソの進捗。独自設定なので……。
第一章 細見との出会いは、約十年前まで遡る。
小学生の頃にはキーパーとして活躍していた多田は、中学に上がる頃には全国でもそれなりに有名な選手になっていた。早めに成長した身長は、高校生の選手と変わらない高さになり、現在進行形で伸び続けている。
そして、北海道のジュニアユースに所属していた時、初めて日本代表に選抜されたのだった。
「お疲れ様でした!」
日が暮れ始めた練習場に響く高低差のある声。声変わりした低音とまだ幼さを残した声が交じり合って、不思議な和音を奏でている。それをどこか他人事のように俯いて聞いていた。
知らない面々、知らない場所。
練習初日は本当に緊張して、上手くいかないことばかりだった。
名前と顔、そしてポジションも何人か合致していなくて、コーチングが思うようにできず、サブ組で参加したミニゲームは散々な結果に終わってしまったのだ。
2025小学生の頃にはキーパーとして活躍していた多田は、中学に上がる頃には全国でもそれなりに有名な選手になっていた。早めに成長した身長は、高校生の選手と変わらない高さになり、現在進行形で伸び続けている。
そして、北海道のジュニアユースに所属していた時、初めて日本代表に選抜されたのだった。
「お疲れ様でした!」
日が暮れ始めた練習場に響く高低差のある声。声変わりした低音とまだ幼さを残した声が交じり合って、不思議な和音を奏でている。それをどこか他人事のように俯いて聞いていた。
知らない面々、知らない場所。
練習初日は本当に緊張して、上手くいかないことばかりだった。
名前と顔、そしてポジションも何人か合致していなくて、コーチングが思うようにできず、サブ組で参加したミニゲームは散々な結果に終わってしまったのだ。
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PROGRESSタダホソの新刊はくそ甘い話を書きたいです。プロローグ『行こう、本屋』
そう言って、細見が電話を勢いよく切った。ツーツーと電話を終了した音が、続けてスマホから聞こえてくる。
「え……?」
——本屋へ、行こう?
またな、という締めの挨拶でもなく、次の代表戦で会おうという選手としての挨拶でもなく、細見は恋人である多田との通話を本屋に行く誘いで終えたのだ。
本屋の次に何かが続いているようだったが、力強いタップ音でかき消されてしまい、電話口ではよく聞こえなかった。おそらく「へ」だろう。
そんなに日本の本屋が恋しかったのか。いや、もしくは日本語そのものだろうか。少し首を傾げたが、それもそうかと多田はすぐに納得した。細見が住むオランダでは、身の回りにあるのはアルファベットばかりで、漢字やひらがなをお目にかかることはないのだから。今度細見に会う時には、日本で流行っている小説でもプレゼントしよう。
1124そう言って、細見が電話を勢いよく切った。ツーツーと電話を終了した音が、続けてスマホから聞こえてくる。
「え……?」
——本屋へ、行こう?
またな、という締めの挨拶でもなく、次の代表戦で会おうという選手としての挨拶でもなく、細見は恋人である多田との通話を本屋に行く誘いで終えたのだ。
本屋の次に何かが続いているようだったが、力強いタップ音でかき消されてしまい、電話口ではよく聞こえなかった。おそらく「へ」だろう。
そんなに日本の本屋が恋しかったのか。いや、もしくは日本語そのものだろうか。少し首を傾げたが、それもそうかと多田はすぐに納得した。細見が住むオランダでは、身の回りにあるのはアルファベットばかりで、漢字やひらがなをお目にかかることはないのだから。今度細見に会う時には、日本で流行っている小説でもプレゼントしよう。