第一章 細見との出会いは、約十年前まで遡る。
小学生の頃にはキーパーとして活躍していた多田は、中学に上がる頃には全国でもそれなりに有名な選手になっていた。早めに成長した身長は、高校生の選手と変わらない高さになり、現在進行形で伸び続けている。
そして、北海道のジュニアユースに所属していた時、初めて日本代表に選抜されたのだった。
「お疲れ様でした!」
日が暮れ始めた練習場に響く高低差のある声。声変わりした低音とまだ幼さを残した声が交じり合って、不思議な和音を奏でている。それをどこか他人事のように俯いて聞いていた。
知らない面々、知らない場所。
練習初日は本当に緊張して、上手くいかないことばかりだった。
名前と顔、そしてポジションも何人か合致していなくて、コーチングが思うようにできず、サブ組で参加したミニゲームは散々な結果に終わってしまったのだ。
2025