あつきた「なんで治なん?」
考えるより先にそれは口を衝いて出た。部活の話題から唐突に方向転換した脈絡のない言葉に角名はこてんと首を傾げて「何が?」と言う。
「付き合うの、治がええなら俺でも良かったやん」
片割れの治と角名から揃って交際の報告を受けたのは一月ほど前のこと。一年の頃は自分と同じくらい彼女を取っ替え引っ替えしていた治が二年に進級してぱたりと彼女を作らなくなったことに少なからず疑問を抱いていたが、治曰く角名を好きになったから適当に付き合うことをやめたらしい。角名は角名で治に好意を抱いていたようで、このたび晴れて付き合うことになったというから驚きだ。
「それ本気で言ってんの?」
眉根を寄せた角名が正気を疑うように顔を歪める。しかし、何故そんな顔をされるのか侑にはさっぱり分からなかった。
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