後編3. Eat to live, don't live to eat. (生きるために食べよ、食べるために生きるな)
一見変わりのない日々が粛々と続いた。江澄と藍渙の関係は相変わらず友人の形を保ちながら、週に一回だけ契約の顔つきになる。藍渙の愛撫は回数を重ねるごとに、江澄の息づかいに合わせて上達していった。
気がつけば藍渙が現れてからひと月以上たとうとしていた。すっかり秋は通り過ぎ、忍び寄る冬の気配に人々が肩を寄せ合う。この街の人間達は夏はバカンスだなんだと弾けたように盛り上がるが、冬は冬でまた夜な夜なパブに集まってホットラム片手に陽気に笑うのだ。
「江澄、今週末なんだけれど少し出かけられない?」
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