はじまりの雪の日の話 昨晩はやけに冷えるとは思った。天気予報はあまり見ないが、それでも「大雪警報発令」の文字が端末に表示されてしまえば、気にするなと言う方がおかしい。
案の定、朝目覚めてみればそこは一面の銀世界。マンションのこどもたちが住人専用の公園で遊んでいる声がする。
生憎と、白い景色にはしゃげる年齢はとうにすぎた。いや、年齢は関係ない、はしゃげない理由の方が多くなってしまったのだ。
「……こりゃ、今日は休みだな」
は、と呟いた分だけ、まるで綿あめのような息が視界を覆った。
「っつう訳で、一応店までは来れたから、俺このまま予約のお客様へ連絡するわ」
『了解した。すまないな、任せてしまって』
「いいって。お前ん家の方が遠いんだし」
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