家族 おれおまえと家族になりたかったのかもしんない、とロナルドがため息と共に吐き出したのは3時半のことだった。退治が終わり、事務所に帰宅し、にっぴきで夜食を囲み、ヒナイチもクッキーを抱えて引き上げ、キンデメと死のゲームが空気を読んだジョンに共に事務所に移動させられ、事務所のメビヤツをロナルドがひとなでしてから、ジョンと、ロナルドと、ドラルクのにっぴきで居住スペースに引き揚げていた。ドラルクはゲームをして、ジョンはその対戦をしていたがその内ドラルクが一人でやるようになって、ロナルドは急ぎではない原稿をしながらゲームに気を取られていた。そんな時のことだった。夜明けの方が近い時間だ。
家族ねえ。ゲームをしながらちらりと棺桶から背を倒したソファベッドを振り返り、ドラルクが思案する。
「君と私とジョンとキンデメと死のゲームとメビヤツは、とっくに家族だと思っていたが」
ぱちくりと瞬きをしてロナルドが体を起こす。
「同居人じゃなくて、家族なのか? 俺たち」
「もう一緒に住んで長いし、同居人ではあるけど、家族って言った方が正しいでしょ」
「そっか。……そうかあ」
かぞく。かぞくかあ。何度も噛み締めるようにロナルドが頷いて、二親がいて当たり前のドラルクには分からない感慨なんだろうなとドラルクは思う。分からないなりに想像はできる。
「世間一般のいう形ではなくても、君は立派に家族を持てているよ、ロナルド君」
「……そっかな。ありがとな、ドラ公」
目を細めて、ロナルドがひどく嬉しそうに笑う。いつのまにかゲームはゲームオーバーになっていて、ドラルクはロナルドのうれしそうな顔を撫でてやりたくなったので、体を起こした。変なところがグキッといって一度死に、凝っていて二度死に、足が痺れていて三度死んだ。ロナルドの側に寄っていって、ソファベッドの傍らに座り込む。
「ロナルドくんよしよし。どういたしまして」
「んだよ。バカにしてんのか?」
「してないさ。よかったね、どういたしましてのなでなでさ」
ジョンにもするもんねえ、とドラルクが寝床のジョンにも声をかける。ヌンヌンとジョンも頷く。
「……バカにしてるんじゃねえなら、いいけど」
よしよしなでなでとされるうちに、うとうとと舟を漕いで、ロナルド君は寝てしまった。こんな可愛い生き物がいるんだねえとドラルクは思った。
「ねえジョン、世界一かわいいのはジョンで揺るぎないけど、ロナルド君も可愛いもんだねえ」
ジョンはジョンが世界一ですよと改めて訴えるために、寝床からよっこいせと身を乗り出して、ロナルドの寝顔を眺め、ドラルクの穏やかな顔を見て、それでもドラルク様の一番はジョンですからね、と念を押すために降りたのだった。