カーテン カーテンを開けないでほしいと言った日のことを覚えている。それから、遮光カーテンを買ってきた日のことも。
「ドラ公さぁ、夜の間にカーテン開けるのやめてくんね」
「そうか、君、退治人だったな」
「話がはえーな、その通り俺は夜も朝も働く可能性あるから、夜も朝も寝る可能性もあんだよ」
「わかったよ」
何度か頷いて、ドラルクは了承していた。
本当は。ロナルドはただ、開けられたカーテンを閉められないほど、疲弊していただけだ。寝る前はカーテン閉めなさいよとそれから何度も言われたけれど、開ける気力もなく、また閉める余力もなく、ソファに倒れ込んで寝ていた。見兼ねたドラルクが、夜起きるたびに開け、眠る前に閉めてくれるようになった。
それがいつのまにか、夜もやってるホームセンターで遮光カーテンをドラルクとジョンとにっぴきで選ぶ日が来るとは思わなかった。いるだろ、遮光カーテン。お前が昼も動けるし。ぶっきらぼうにかけた声に、ひどく嬉しそうにいそいそとドラルクはいつもの手ぶらにジョンだけ抱えて着いてきたのだ。
事務所はブラインドだったから、遮光カーテンはリビングにだけかけた。ロナルドが付けた。ドラルクは夕飯を作るので忙しかったので。カーテンレールの金具一つ一つにカーテンをかけていって、閉じれば闇の完成だ。これでもうドラルクを日に晒さなくて済む。このまま閉じ込めてしまえればどんなにいいか。ロナルドは自分以外がドラルクを殺すことに嫉妬さえ覚え始めていた。日光であろうともそれは変わらない。
カーテンをぎゅっと抱きしめて、皺になるぞと手を離されて、いい匂いに呼ばれて振り返る。泣きたくなるほどあたたかな団欒の食卓が待っていて、ロナルドは、ほんの少しだけ泣いた。