お裾分けの甘口カレー ——ピンポーン。
インターホンの呼び出しに、爪弾く手を止める。
確信めいた予感を持って時計を見れは、時刻は十時四十分を指すところ。
扉に向かって声だけ掛けて、抱えたベースをスタンドに戻す。広げたままの楽譜も片付けるべきかと一瞬迷ったけれど、結局そのままにして立ち上がる。リカオは普段より大股で玄関へ向かうと、そそくさと鍵を回した。
「……おはようヤス、いらっしゃい…です。」
「おはようリカオ。悪い、ちょっと早すぎたか? 今日は配達、無かったからさ」
「別に問題ない…です。」
「そんなら良いけど」
訪ねて来たヤスに上がってくれと促せば、お邪魔しまーすとやや間の抜けた返答。
彼は背負っていたギターケースを床に置いてしゃがみ、靴を揃えた。
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