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    いなほのほ

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    いなほのほ

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    縦書きです🍱⚖️
    お題ガチャで出て息抜きに書いてたヤスリカの今日のご飯です。
    【夜風】特製大人の甘口カレー(お裾分け)。
    もう一度言いますが縦書きです。
    横にスクロールして読んでね。

    #ヤスリカ
    ##ヤスリカ

    お裾分けの甘口カレー ——ピンポーン。
     インターホンの呼び出しに、爪弾く手を止める。
     確信めいた予感を持って時計を見れは、時刻は十時四十分を指すところ。
     扉に向かって声だけ掛けて、抱えたベースをスタンドに戻す。広げたままの楽譜も片付けるべきかと一瞬迷ったけれど、結局そのままにして立ち上がる。リカオは普段より大股で玄関へ向かうと、そそくさと鍵を回した。
     
    「……おはようヤス、いらっしゃい…です。」
    「おはようリカオ。悪い、ちょっと早すぎたか? 今日は配達、無かったからさ」
    「別に問題ない…です。」
    「そんなら良いけど」
     訪ねて来たヤスに上がってくれと促せば、お邪魔しまーすとやや間の抜けた返答。
     彼は背負っていたギターケースを床に置いてしゃがみ、靴を揃えた。
     何をするにもおっかなびっくりだった頃と比べ、すっかり馴染んだその手つきに、あぁ通い慣れたんだなと、そんな事をぼんやり思った。
    「荷物少ねえから落ち着かなくてさ。なんとなくでギター持ってきちまった」
    「あぁ、それでなのか。てっきり午後に練習でもあるのかと……です。」
    「この連休中はジョウが入院してるから、ずっと個人練なんだよな。俺は別に構わねえけど……たまには合わせねえと鈍っちまう」
    「に、入院⁉︎ 大丈夫なのか? …です。」
    「あぁ、検査入院いつものだから大丈夫だ。心配要らねえ」
    「そうか……。いや、本当に安心していいのか微妙なところだが。」
     胸を撫で下ろすリカオに、ヤスが頷く。リカオのベースの隣へ荷物を置くと、彼はいつものように袖を捲る。
    「じゃあ飯作……ってそうか。そうだった、今日は違えんだったな」

     彼はしっかり時間をかけて手を洗いながら、だから荷物無えんだもんなと呟く。
     勉強を教える代わりにヤスと昼食を食べるこの不思議な会は、どういう経緯で生まれたのだったか。ただ勉強を教えるだけだった頃、教師役の対価として差し出されたサウンドルを、受け取れないからと突き返したのが始まりだったかもしれない。
     ならばせめて、とリカオの分まで店の弁当を持参していたのが、いつの頃からか下処理済みの食材に変わった。
     そして昼前に訪ねて来たヤスが料理をして、二人で食事をして、後片付けを終えてから勉強する。自然とそういうルーティーンになった。
     けれど、今日は違うのだ。
     
    「腹が減っているなら今からでも構わないが……お前はどうしたい? …です。」
    「俺はどっちでも……。ちなみに、あんたが言ってた『とっておき』って、何だ?」
    「カレーだ。」
    「へぇ」
     予想外に薄い反応に、リカオは机上を整理していた手を止めて、唇を引き結ぶ。
    「む。ただのカレーじゃないぞ。ウララギ特製、大人の甘口カレーだ……です!」
    「あまくち……って、ウララギの⁉︎」
    「あぁ。なんでも、冷凍庫の調子が悪いらしくてな。調理済みのメニューが軒並み使えなくなったらしい…です。一度溶けかけている以上、店で出すには衛生面に不安があるので廃棄する、と。個人的に消費する分には問題ないらしいがな。」
     トントン、と楽譜の束をまとめながら言えば、大丈夫なのかよとヤスが眉をしかめる。
    「めちゃくちゃ一大事じゃねえか」
    「修理は今日だと聞いている。業者はクースカの紹介だから心配ない…です。」
    「そっか。そんなら良いけど」
     そっと胸を撫で下ろすヤスに、今度はリカオが頷いた。
     
     結局、温めるだけならばと食事は昼まで待つことにして。
     片付いたばかりの机には、ヤスの勉強道具を広げる。
     授業内容のどこが分からないかすら分かっていない彼に、リカオはやれやれと肩をすくめる。それでも地道に基礎を教えながら、ヤスに課題を解かせていく。
     そうして宿題の三割ほどが終わる頃、正午を告げるメロディーが窓から流れて来たのだった。
     
    「……設問のキリもいいし、ここまでにして食事にするか…です。机の片付けを頼んでもいいか? …です。」
    「分かった。俺もちょうど、腹減ったなって思ってたとこだ」
     散らばった教科書や筆記具をヤスがまとめて、空いた机の上をウェットティッシュで拭き上げる。
     リカオはその間に、厚手のビニール袋に小分けされたカレーを三つ、レンジにかけておく。湯を沸かしながら二人分のカップと食器を用意し、レンジの中身を覗き見る。
     溶けた頃合いを見計らい、中身を皿に移す。それから、ラップをかけて再加熱。
    「ん、良い匂いだな。……すげえ腹減る」
    「片付け、ありがとう。俺はコーヒーにするが……お前は何を飲む?」
    「リカオと一緒がいい。ミルクも一緒で。あ、砂糖はあんたの三分の一でいいや」
    「分かった…です。」
     リカオが頷き、並べたマグカップにコーヒーの粉と砂糖を入れたところでレンジが鳴った。
    「かき混ぜてもう一度かけてくれないか? …です。念のためよく加熱するようにと、ウララギに言われているからな…です。」
     そうヤスに指示を出して、淹れかけのコーヒーに湯を注ぐ。スプーンでくるくると混ぜ溶かして、ミルクのポーションを二つずつ。カップを机まで運んで戻ってくれば、丁度カレーも熱々の頃合いだった。
     
     リカオは濡らした杓文字しゃもじを片手に、勉強会の日以外ほとんど使われていない炊飯器の前へ立つ。ぱかりと蓋を開ければ蒸気と共に米の香りが一気に溢れて、二人の腹をきゅうと鳴かせた。
     そわそわと落ち着かない様子のヤスが差し出してくるのは、彼が頻繁に出入りするようになってから買い足した、専用の食器。元々リカオが使っているものとデザインが似ているのはただの……家主リカオの趣味、という事にしておこう。
     
     きっちりとカレー用の目盛で炊いておいた、少し硬めの白ごはん。リカオの分は普通盛り、ヤスの皿にはこんもりとよそう。大盛りだから、ヤスの分にかけるカレーは二食分。程よくとろけた具材となめらかなルゥが、米の山をつたって転がっていく。
    「うわ、やべぇ。絶対美味いやつだ」
     ごくりと唾を飲んだヤスに急かされながら、二人揃って食卓に着く。
     
    「準備とかコーヒーとか、いろいろありがとうな」
    「あぁ。別に、これくらい構わない。こちらこそ、いつもありがとう…です。」
    「おう。俺も別に、好きでやってるから気にすんな。……冷めないうちに食べようぜ」
     頷きながら、そうだなと返す。
     
     本日の昼食は、お裾分けの甘口カレー。目の前にあるだけで、芳醇に香るスパイスが食欲をぐんぐん掻き立てる。いそいそとスプーンを握りしめる二人の声が、弾むように自然と揃った。
    「「いただきます!」」
     
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    いなほのほ

    DONE🍱⚖️。両片想いだけど倫理観がガチガチで付き合えない話の幻覚。コピペするメモ間違えてるとかいう信じられないミスがあったのであげ直し。
    Q:そんなことある???A:残念ながらありました。
    5回読み返したからもう平気だと思う。平気であってくれ…。
    それは、時間でしか解決できないその日、俺はリカオとカラオケに来ていた。
    リカオの隣に腰掛けたら、こいつは俺を遠ざけるみたいに、俺から離れるみたいに、10cmくらい遠くに座り直した。別にショックだったわけじゃねえけど、あぁまたか…とは思った。

    リカオが好きだ。でもリカオが俺をどう思ってるかは、正直全然分かんねえ。
    俺の気持ちはもう何十回と伝えてきたけど、でもその度にこいつは困った様に『そうか』とだけ言って話を切り上げるから。付き合うとか付き合わないとかの話、めちゃくちゃ避けられてる気がする。
    リカオからしたら俺はまだ子供だし、第一こいつは弁護士だから、そういうの、余計に難しいのかも知んねえけど。
    …それでもたまに、忙しいだろう仕事の合間を縫って弁当買いに来るし、こうやって誘えばカラオケなんかにもついてきてくれるから、俺は今日もこいつを諦められないままでいる。
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