『いたずら』「やあ、ツインズ。」
検査室に入ろうとしたふたつの背中に向かって声を掛ける。
「なあに?」「なに?」
それぞれ白のズボンに緑のパーカー、黒のズボンに紫のパーカーを着た双子たち。
同時に振り向いた2組の双眸が、じっと俺を見上げた。
「今から検査でしょ?そのまま行っても構わないけど、ちゃんと自分が『どっち』なのか自己申告しないと、みんな分からないと思うよ。」
自分の服をトントンと指で示しながら、言う。
俺の言葉に、目の前のふたりは顔を見合わせた後、鏡合わせのような動作で首を傾げた。
「おかしなことを言うんだね、先生。おれはシオンだよ。」
「で、ぼくがハル。…珍しいね、ぼくたちのこと見分けられないの?」
心底不思議そうに口を揃えるふたりに、そっと首を横に振る。
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