Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ヰノ

    @tion130 落書きと進捗

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 28

    ヰノ

    ☆quiet follow

    尊重と愛情(苺の話)
    まだ途中です

    ##刀さに
    ##則さに

    午後も数時間過ぎた頃の事だ。
     一文字則宗が小腹を満たそうと厨を訪れると、今まさに夕餉の仕込みを始めた燭台切光忠がそれに気付いて「どうしたのかな」と声を掛けてきた。
    「いやなに、今日はおやつを貰い損ねてな。小腹が侘しいと鳴くものだから」
    「なるほど、じゃあちょうど良かった。申し訳ないんだけどこの苺、主の所に持っていって一緒に食べてくれないかな」
     そう言う燭台切が困ったように苦笑しながら差し出してきたのは、硝子の器に盛られた大粒の苺だ。赤く艷やかで、ひと目で上等なものだと分かる。何だこれは、と雄弁な視線を受け、燭台切は肩を竦めた。
    「ほら、うちの主、仕事いくらでも引き受けるでしょ。なんでも他の本丸の分まで抱え込んじゃったらしくって。肩代わりした本丸から使いが来て、お礼だって置いていったんだよね」
    「まーたあの子はそんな無茶をしているのか。…なるほどな、任せておけ」
     則宗が器の載った盆を受け取ると、燭台切は「頼んだよ」と眉を下げて笑った。
     ――つまりは、『審神者を休ませろ』ということだ。
     なんと光栄な任務だろうか。執務室へ向かう則宗の足取りは軽い。

     則宗にとって審神者とは、今代の主であり本丸の大将であり、愛しい子であった。
     そんな審神者は聡明で勤勉で人がよく、まさに『良い人』である。しかし欠点を挙げるとすれば、それは間違いなく仕事を抱え込みすぎるという点だろう。審神者は頼まれると断れない人種である上に期限内に確実に仕事を仕上げる几帳面さもあるため、政府からすると非常に都合の良い存在なのだ。監査官としてこの本丸のデータを洗ったときに、則宗は思わず苦笑したものだ。よくもまあ、一つの本丸に細々した仕事をこんなにも担当させるものだ、と。

    「入っていいかい」
     執務室前に着いた則宗が襖越しに声を掛けると、中から少し時間差があって「はい、どうぞ」と声がした。則宗がならばと遠慮なく襖を引くと、審神者はモニタにかじりついての作業中だった。
    「どうされました?」
    「どうもこうも、お前さんはいつからそうしてるんだ」
    「……これも仕事なので」
     にべもない言葉に則宗は肩を竦めつつ、後ろ手に襖を閉めた。それから審神者の脇まで歩を進め、片膝を立ててしゃがんだ。審神者はそれを横目でちらりと確認するが、それより眼の前の仕事を優先するようで、特に何を言うでもなく視線を前に戻す。
     則宗はそれが面白くない。実に面白くない。むっと口を尖らせると、白い指で真っ赤な苺を一粒つまみ上げた。
    「あーん、だ。そら」
    「……」
     目は完全にモニタに、耳は半分だけこちらに意識を向けているであろう審神者は、聞こえた言葉を脳に通して思考すること無く、ただ反射的にぽかんと口を開けた。それは紛れもなく幼い頃の習慣のせいである。そして、一文字則宗への無条件の信頼。

     当然、則宗はその開いた口に苺をぐいと押し込んだ。
    「!?」
     無意識に口を開けたところに急に何かを押し込まれた審神者は、咀嚼より先に飛び上がって驚いた。則宗を見ると、「旨いか?」と嬉しそうに笑っている。そこで審神者はそれが食べ物なのだと気づき、恐る恐る奥歯で噛み締めた。
    「……おいしい」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ヰノ

    PROGRESS尊重と愛情(苺の話)
    まだ途中です
    午後も数時間過ぎた頃の事だ。
     一文字則宗が小腹を満たそうと厨を訪れると、今まさに夕餉の仕込みを始めた燭台切光忠がそれに気付いて「どうしたのかな」と声を掛けてきた。
    「いやなに、今日はおやつを貰い損ねてな。小腹が侘しいと鳴くものだから」
    「なるほど、じゃあちょうど良かった。申し訳ないんだけどこの苺、主の所に持っていって一緒に食べてくれないかな」
     そう言う燭台切が困ったように苦笑しながら差し出してきたのは、硝子の器に盛られた大粒の苺だ。赤く艷やかで、ひと目で上等なものだと分かる。何だこれは、と雄弁な視線を受け、燭台切は肩を竦めた。
    「ほら、うちの主、仕事いくらでも引き受けるでしょ。なんでも他の本丸の分まで抱え込んじゃったらしくって。肩代わりした本丸から使いが来て、お礼だって置いていったんだよね」
    「まーたあの子はそんな無茶をしているのか。…なるほどな、任せておけ」
     則宗が器の載った盆を受け取ると、燭台切は「頼んだよ」と眉を下げて笑った。
     ――つまりは、『審神者を休ませろ』ということだ。
     なんと光栄な任務だろうか。執務室へ向かう則宗の足取りは軽い。

     則宗にとって審神者とは、今代 1326

    ヰノ

    MAIKING刀剣TRPGシナリオ書き始めてるんですけどこれでいいんですか…?合ってる…?本丸で迎える朝。
    【自室】
    障子から差し込む光が瞼に透け、あなたは目を覚ます。
    夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。
    同室は今日は厨当番らしく、既に姿はない。そうしてのろのろと[PCによってはしゃっきりと]身を起こした。
    朝食まであまり時間はない。

    【廊下】
    「(PC名)さん、おはようございます!」
    広間へ向かう道中、前田藤四郎[PCが前田の場合、他の刀剣]に声を掛けられる。
    「今日の朝食は何でしょうか?」
    *ここで<目星>
    -成功
     魚の焼ける匂いから、朝食は焼き魚であることを察する。
    -失敗
     あなたは鼻が詰まっているらしく、うまく匂いを嗅ぎ取れなかった。

    【広間】
    広間についたあなたは、盆を受け取り、うまく空いている席を見つけるだろう。
    正面には五虎退が座っていて、「おはようございます」と声を掛けてくる。
    大体の刀剣が揃ったところで、今日の近侍が「いただきます」の号令を掛ける。
    朝食は味噌汁、ほうれん草のおひたし、白米、焼き鮭だ。

    <目星>よく見ると焼き鮭の骨が一本飛び出ていて、そのまま口にしていたら舌に刺さったかもしれない。取り除こう。
    <聞き耳>昨日の酒宴の 764

    ヰノ

    MAIKING不思議なお店の話の冒頭の草案
    猫がいる本丸と南泉一文字
    その店は、万屋街の外に居を構えていた。
    小さな花屋の隣、ともすれば見落としてしまうほどのささやかな玄関。看板もないその店の存在に南泉一文字が気付いたのは、店先を掃除している一振りの短刀がいたからだ。
    「お困りですね」
    箒を持ったまま五虎退がいやに断定的な言葉を掛けてきた。
    南泉は何の事かと思ったが、すぐに自身が持つ『困りごと』の存在を思い出し、戸惑う。
    そんな様子を意に介さず、五虎退はアンティーク調のノブを引き、店内へ導いた。
    「どうぞ。お茶を用意します」
    誘われるままに踏み込んだ店は、洋風のアンティークなカフェを思わせる内装の、少し薄暗い雑貨屋だった。古臭くはあるが、煤けてはいない。手入れの行き届いた上品さがある。
    五虎退が勧めるソファに掛けると、その座面の柔らかさに驚いた。南泉がこれまでの刃生で座ったことのあるどのソファよりも(彼の本丸にソファはないので、彼は今まで政府施設の布張りのベンチをソファだと信じていた)柔らかいのだ。
    何故か連れ込まれた店内で持て余した時間を、ガラス瓶を逆さにしたようなランプが吊り下がっているのを眺めて潰していると、紅茶とクッキーをトレイに載せた愛染国俊 1728

    recommended works