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    北村Pの漣タケ狂い

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    リクエスト 待ち合わせに遅れる漣タケ

    #漣タケ

    まちあわせ 朝のロードワーク中に、それは訪れる。何度事務所で見た光景か、靴紐が切れたのだ。俺は無様にもバランスを崩し、顔面から転ぶ。
    「いっつ……」
     顔を拭うと、微かに血がついていた。ああ、アイドルなのに顔に傷をつけちまった。これは早く手当しなければ。急いで家に帰ろうとするも、膝もすりむいており、じんじんと痛みを孕んでいて、歩くのがやっとだった。
     やっちまったな、と呟きながら、ゆっくりゆっくり家に帰った。よれよれになりながら帰宅し、シャワーを浴びて砂と血を落とし、消毒をする。酷く沁みるのは罰のように感じた。絆創膏をひざと鼻に貼った。鼻のあたまに絆創膏を貼るのは久しぶりだ。
    「あ、やべ」
     今日はアイツと待ち合わせをしているんだった。とはいえどこかにメシを食いに行こうというだけで、予約をするようなデートではない。ただ時間と場所を決めて、一緒に歩いていこうという、それだけだった。
     念のため、スマホに「遅れる」とメッセージを入れるが、アイツのことだから見もしないだろう。俺はひざをかばいながら支度をし、ゆっくりと歩いて行った。ダンスレッスンがしばらくなくて本当によかった。
     ズボンの内側に熱を帯びながら、待ち合わせ場所に到着すると、予想通りアイツは先に着いてイライラと待っていた。
    「おせーよ! オレ様がどれだけ待ってやったと思ってんだ」
    「悪い、怪我しちまって。LINKは送ったんだが」
    「知らねーよそんなん……なにどんくせーことしてんだよ」
     アイツはイライラをそのままに俺の頬に手を伸ばし、鼻の頭に親指をあてた。ひりひりして痛い。なにすんだ、と退けると、「あとは」と聞かれる。
    「足か」
    「ああ。ひざ、やっちまって」
    「くはは、だっせーの」
     アイツは笑ったあと、ん、と言って俺の腕を取ろうとするもんだから、俺は慌ててしまった。肩を貸されるとは思っていなかったのだ。
    「い、いい。そんなことしなくても歩ける」
    「そんなチンタラ歩いてたら日が暮れるだろ。腹減ってんだよ」
    「じゃあ……悪い」
     大人しくアイツの腕につかまって、ゆっくりゆっくりと歩き出した。情けないような恥ずかしいようなでアイツの顔をうまく見れなかったが、アイツもなぜか大人しかった。もう少し騒ぐかと思ったのに。
     けど、まあ、知っている。ときどき優しいことを。いつもこうならいいのにと憎まれ口を叩くのは我慢した。さりげなく遅刻を許してくれたお礼だ。
     さて、何を食おうか。この道だとファミレスに向かう。腹いっぱい食って、とっとと怪我を直そう。次の待ち合わせには遅れないように。
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