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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    コーギーを追いかける漣タケ

    #漣タケ

    コーギー、あるいは食パン 目の前を食パンが歩いていた。
     いや、違う。犬だ。コーギーと言ったか。短い足で一生懸命に歩いている姿がかわいらしい。
    「なんか食パンみてー」
     隣のアイツも同じ発想のようだ。見てると腹が減るな。赤いリードの先の、いわゆる「お母さん」みたいな人は歩くのがゆっくりめで、コーギーは先へ先へと走りたそうで、散歩を代わってやりたかった。俺ならいくらでも走らせられるから、あなたは休んでいてくれていい、と声をかけたいのを我慢し、隣のアイツのあくびを聞く。
    「あー、腹減る」
    「おい、聞こえるから」
     歩くスピードは俺たちの方が早い。コーギーとお母さんを追い抜かす時、少し名残惜しかった。ずっとあの食パンを見ていたい。
     その時、ブチッと、何かが切れる音がした。
    「ペヤング!!」
     女性の叫び声に、何事かと振り向く。さっきのお母さんだ。見るとリードが地面に落ちている。
    「ペヤング!!戻ってきなさい!!」
    「おい、待ちやがれ!!」
     アイツが走り出す。その先にはさっきのコーギーが走っていた。俺も咄嗟に駆け出した。ペヤング。なんでそう名付けたんだ。
    「待て、ペヤング!!」
     俺も叫ぶ。この先は大通りだ。車との事故だけは防ぎたかった。
    「ペヤング!」
    「おい!犬!」
     二人で全力で走った。ふかふかのおしりは追いかけっこを楽しむように、たまに振り返ってはごきげんだ。それどころじゃない事態なのに。
     ああ、大通りが見えてきた。このままじゃ危ない。俺は大声で叫ぶ。
    「ストップだ!!ペヤング!!」
     ペヤングは、ぴた、と止まった。信号が青に変わり、トラックが走り出す。ペヤングはおすわりをしてこちらを見ていた。俺とアイツはなんとかペヤングに追いつき、確保する。
    「待てじゃなくて、ストップで躾けられてたんだな。間に合ってよかった……」
     ペヤングのハッハッという息遣いに、俺とアイツのぜえぜえという息もあわさる。アイツがペヤングを抱き抱え、俺たちはお母さんのところへ戻った。
     お母さんに泣きながら感謝をされ、家まで送り届けた際、俺たちはお礼として高級食パンを貰った。
     腹が減ってたから、ちょうどよかった。
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    DOODLE漣タケ
    うかうか 電車で隣に座った人が、花束を持っていた。
     横を見なければ気づかないほどこぢんまりとした素朴な花束で、一輪、ひまわりだけが目を引くように鮮やかだった。
     隣の人はそれを嬉しそうに、大事そうに何度も抱え直すものだから、自然と目が引き寄せられてしまう。きっと、じっと動かない人であれば、花束を持っていたことにも気づかなかっただろう。
     花束は、職業柄、よく貰う。ドラマのクランクアップが主だ。ライブや舞台でもフラワースタンドを貰うが、持って帰れるものではない。手の中にすっぽりとおさまるサイズだと、家や事務所に飾れてささやかに嬉しくなる。
     花は、一過性の美しさだ。あっというまに枯れてしまうし、それは手入れを怠れば尚のこと早まる。綺麗にドライフラワーにできれば長く楽しめるのだろうけど、自分はそこまで器用ではない。そんな一瞬の美しさを、わざわざ俺のために贈ってくれる存在がいるということは、なんと嬉しいことだろうか。右隣のひまわりを見ながら、そんなことを思う。きっとこの花たちは、帰宅後、速やかに花瓶に生けられるのだろう。存分に愛されてから散るに違いない。儚い栄華。俺は自分の右手の甲を見た。
    1908