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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    雨想。とりとめもない話

    #雨想
    fleetingThing

    傘の降る星 雨の代わりに傘が降ってくるようになって、久しい。
     つまりどれだけ濡れても構わないということだねー、と言うと、人は「それは何か違うだろう」と言って眉を顰める。だって、いつでも傘をさせるのだから、同じことだろうに。
     兄さんと暮らしているマンションの前の道路に、傘が積み上がっていた。雪かきのように、もしくはイチョウを掃くように端においやっているのは、雨彦さんだった。
    「おはよう、北村」
    「おはようございますー、どうしてここにいるのー?」
    「お前さんに会いたくてな」
     雨が降らない世界で、農作物は枯れていく。近いうちに人類は滅ぶのだろう、傘の焼却も追いつかない。雨彦さんは家業が忙しいとかで近頃会えなかったから、実は寂しくて、僕はこっそり祈っていた。だから、僕は傘に感謝した。家まで出迎えに来てくれたのだ。濡れなくてもいいし、僕はこれでいい。
    「ねえ。雨彦さんの傘ってどれー?」
    「家にあるさ。もう使う事もないだろう」
     一仕事した、と晴れやかな顔をしている雨彦さんと連れ立って、電車に乗った。電車に傘を持って乗っている人はひとりもいない。窓の外に広がる風景の、ほとんどが積み上がった傘だった。川がそろそろ氾濫しそうだ。
    「人々が、願ってやまなかったんだろうな。止まない雨はないだなんて言って、雨自体を疎んで」
    「……僕は、雨、好きだったよー。雨彦さんの名前だから」
     雨彦さんは照れた様に笑って、僕の頭をぽんぽんと撫でた。僕の名前は想楽、空だ。雨のない空なんて、からっぽだ。
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