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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    漣タケ、ファンクロ

    #漣タケ

    花冠 月が落っこちてくるとか言って、街は混乱していた。
     ばかだなあ、とボクは笑う。月なんて落っこちてくるわけがないのに。だって宇宙でプカプカ浮いて、太陽の光を反射しているだけの、無力な星なんだから。
    「ね、ファング、そう思うでしょう?」
     ベッドの隣に寝ころぶダーリンは、側に転がるシケモクを咥えて「ああ」と答えた。この人にとってボクを抱くことなんてただの作業でしかなくて、どうにも情は湧かないのだという。それでも吐精は出来るんだから、人間って面白いね。
    「月はもともと、いつ落ちてきてもおかしくねえんだ。今更慌てすぎなんだよ」
    「ええ、そうなの?」
     ファングがジョークを言う時は、死体を豚のように蹴り転がすときだけだと相場が決まっていた。テメェのイチモツを切り取ってお口に詰め込んで身体じゅうほじくってやろうか? なんて、下品なこと、ボクは言えないや。その時はマイナスドライバーで始末したっけ。うーん、センスがない。
    「クローは、月が落ちてくる前日、何をする?」
     めずらしい、彼が何かをボクに尋ねるだなんて。ボクは「ナンセンス!」と答えてから、うーん、と改めて考える。
    「ファングの腕の中を願うかなあ。一人よりも、空しくないでしょ」
    「一人で月に殺されるのは空しいか?」
    「そりゃあね。地球の子だもの」
     親の顔なんて知らないけれど。まあ、それでも、親に愛されなかった結果、今ここにいるということだけはわかる。死んでなくて悪かったね。人の命なんてあっけないのにさ。それこそマイナスドライバーで殺せる豚みたいに。
    「オレは」
     ファングはシケモクをペッと吐いた。似合わないんだからやめとけばいいのに。
    「オレは一人でいたい」
    「……なんで?」
    「やっと、帰れるから」
     ――それは、月に? ボクは口を噤んだ。ナンセンス、ナンセンスだよ。君だって地球の子じゃないか。それとも、違うの? 君だけは月から生まれたの?
    「連れてって」
    「は?」
    「ボクも。連れてって。月に」
    「……いいけど」
     ファングは僕の方に向き直って、優しい優しいキスをした。ほんのりとタバコの味、だからやめてほしかったのに。だけど僕らは辞められない。人殺しの後のセックスを。どこまでいっても、行き止まりだから。
    「そこには、花はある?」
    「あるぜ」
    「じゃあ、花冠、作ってあげるね。季節の花をふんだんに使って」
    「……似合わねえのにな」
     キスの合間に、夢を見る。二人とも花畑にいるのだ。僕らは花を掻き分けて抱き合う。ロマンチックじゃない?
     ――ありえない話。
     月が落っこちてきたら、みな余すことなく死ぬ。ファングも月から生まれてなんていないし、僕は花冠を作ってやることも出来ない。
     そもそも、月は落っこちてこない。
     その原因を排除したのはボクたちなのだから、誰よりも一番知っている。月が落っこちてくるだなんてホラで人を惑わせて、誘拐監禁猟奇的殺人。人の隙に付け込むのがうまいのだ、豚どもは。ねえ、保険金て知ってる? 月が落ちてきたときのための。
     一体誰が使うんだろうねえ。
     血に塗れたキスを繰り返して、ボクは窓の外を眺めた。月は煌々と輝いている。ボクらのことを監視しながら。
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    DOODLE雨想♀。一人称は僕。2人で温泉に行く話
    小春日和 しなびた胸だなあ、と思ってしまった。
     僕の行く末かもしれないのに、他人にそんなこと思ってしまうのは失礼だ、そんなことはわかっている。だけど、自分の若々しい張りのある肌が、いずれああなると思うと、どうしても途方もない時間が心を通り過ぎていく気がするのだ。
     雨彦さんと温泉に来たのは、別に商店街の福引があたったわけでも、プロデューサーの提案でもない。僕から言い出したことだった。電車で一時間くらいのところにスパ施設があるので、平日の昼間ならと誘ってみたら、意外にも彼はくいついてきた。メインイベントの風呂自体は別行動になるにも関わらず、二人でのそのそと出かけることとなった。
     のそのそと言うと亀のような、巣籠の熊のようなイメージがあるけれど、実際そんな感じだったので、言い得て妙かもしれない。乗り換えの駅で買い食いをしてみたり、あえて各停に乗ってみたり、僕たちはとにかく、のそのそと言うほかないほどのんびりと目的地に向かった。いつもは雨彦さんかクリスさん、プロデューサーの車に乗っての移動が多いから、こうして電車でゆっくり移動すること自体が久しぶり。僕は大好きな一人旅の時と同じような心地よい高揚感に包まれていた。
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