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    akua_yuu

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    akua_yuu

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    従者を召喚した時のそれぞれの反応です。レナータは本編の文章を少し改造しただけ。ほぼ三人同時に別々の場所で従者召喚を行いましたが、反応が似てたり逆に思うことが違かったりで可愛いなと思っています。

    『従者召喚』──レナータ・ヴィシュヌ──

    「『忠実なる下僕よ、我が呼びかけに応え、我の剣となり盾となりこの身をを守れ』」

    レナータが呼びかけると、すぐに変化があった。広い謁見の間に、白い魔法陣が浮かび上がる。その数は──八つ。

    「──な?! レナータ様?!」

    ルイスが立ち上がり心配そうにレナータを見上げる中、心配ないと彼に笑いかける。自分の体からどんどん何かが削られていくおぞましい感覚に耐えながら、レナータは呼吸を荒らげた。

    ──苦しい。
    精神力を削りすぎると発狂していまうというのも、分かる気がした。それ程までの苦痛に、思わず歯を食いしばる。冷や汗が額に浮かび、視界も徐々に歪んでくる。しかし目の前の魔法陣から人型の光が浮かび上がるのを見て、ふらつく体に鞭を打ち目を見開いた。
    精神力という目には見えないものだが、自分の一部を削って従者達が、生命が生まれる瞬間をちゃんと目に焼き付けておきたかったのだ。耐えて、耐えて耐えて、しっかりと前を見据える。

    「レナータ様! ご無理をなさらないで下さい! このままで発狂してしまいます!」
    「だいっ…じょうぶ! 必ず……召喚してみせる!!」

    八つの魔法陣から浮かび上がった人型の光が、完全に人を象る。その時やっと苦しさがなくなり、倒れ込むように椅子に座って肩で息をした。まるで本当の出産のようだ。実際出産経験などないが、恐らくこれに近いものだろう。生きていて良かったと安堵する。

    「ちゃんと、召喚できた?」

    レナータの声に反応するように、八人の従者が一斉に跪き、第一声を発する。

    「レナータ・ヴィシュヌ女王陛下。我ら従者、この身が朽ちるまで貴方様に絶対なる忠誠を捧げる事を誓います」

    そして皆がさらに深々と頭を下げた。
    感動の瞬間だ。少し無茶はしたが、少しでも多く召喚したいというレナータの願いは叶った。師を失い一人で過ごしてきた日々を、孤独だった日々を思い返す。もうそんな暗闇とは無縁の人生を送ることができるだろう。そんな希望を胸に抱いた。

    そんな、感動の瞬間のはずなのだが──。

    「みんなまず……服、着ようか」

    最初の感想はそれだった。
    確かに生命皆、誕生した直後は衣服は身につけていないだろう。常識だ。だが、召喚という普通とは違う生まれ方をしたならば何か簡単なものでも着させてあげてもいいのでは。そう思いながら、レナータは全裸の従者達から視線を逸らす。

    「何か……誰か毛布とか持ってない?」

    この場にはルイスと従者達しかいないが、あまりの動揺に居ないものに毛布を求める。ウロウロとさまよった手はルイスの方向へ向けられ、それを受けたルイスは深く頭を下げた。

    「レナータ様。初めに頂く衣服は従者様方にとって特別な物となります。もし、お心遣い頂けるならレナータ様が選ばれた物を頂けると良いのですが……城には多くの衣服がありますゆえ」

    従者達にとって特別。恐らく王から従者に送られる生命の次の贈り物、それが衣服になるからだろう。従者達は顔を伏せているが、期待してると言うのが雰囲気で伝わった。それなら、とおもむろに翼を出し窓に駆け寄ると、レナータは縁に足をかける。

    「悪いけどちょっと待ってて!30分!……いや、10分で済ます!」
    「レナータ様!?」

    足に力を込め思い切り空へ飛ぶ、王になって強くなった自分の体にあまり慣れていなかったので、少し窓枠がミシッと音を立てた気がしたが、今は聞かなかったことにした。
    暗い空をびゅうびゅうと風を切る音がうるさく聞こえるほどのスピードを出し、向かう場所は洞窟だった。他にも周る所がある。

    「じゃあ、素材狩りといきますか」

    王が体内に持つ神器と呼ばれる特殊武器を体から取り出し、軽く振る。驚くほど身に馴染むその双剣を初めに使うのは、従者達の衣服の素材を手に入れる為の狩りだ。

    鼓動は早まり、希望に胸をふくらませた。



    ──アンディート・ブラフマー──

    「『忠実なる下僕よ、我が呼びかけに応え、我の剣となり盾となりこの身をを守れ!』」

    アンディートはとある一点へ手のひらを向けると、祈りを込めるようにそう呼びかけた。それに応じるように、魔法陣が五つ展開された。そこにぼんやりと光が集まり、それは徐々に人を象っていく。精神力が減ったのが分かり、アンディートは短く息を吐いた。自分の中の何かが確かに抉り取られる感覚、それに吐き気すら感じる。もう精神力に余裕はなく、あと一人と欲張ったなら発狂して死んでいた可能性もある。ぐらぐらと揺れる頭、霞む視界。しかしこの苦痛も全ては、最高の結果のためだ。意識が飛びそうになる苦しみに耐えつつ、従者の誕生を見守った。
    光はとうとう完全に人の形となり、色づき始める。ただの光の塊だったそれから確かに人の気配を感じ、五つのの生命体はアンディートを一度見上げるとすぐに跪いた。

    「アンディート・ブラフマー陛下。我ら従者、この身が朽ちるまで貴方様に絶対なる忠誠を捧げる事を誓います」

    一番年上だろう従者が代表してそう宣言し、頭を垂れた。他の四人もその言葉に同調するように頭を下げる。五人の従者を召喚したのは、歴代でも両手で数える程もいないだろう。そんな偉業を成し遂げた達成感に、アンディートは苦痛から解放されたのもあり深く玉座に座った。これで、一番の王への一歩は踏み出せただろうか。他の運命に選ばれし王よりは確実に多いだろうと自信を持ち、頭を下げたままの従者達に顔を上げるよう命令する。

    「つーか……服とかねぇのかよ」

    皆こうなのだろうか、召喚した従者達は誰一人として衣服を身につけていなかった。確かに生命みな生まれた瞬間は衣服をつけてない。が、何故そこになぞらえてしまったのか。流石に気まずいというのもあり、傍に控えていた執事長のフェレディに視線を向ける。服を用意してやれ、そう伝わったはずだが、フェレディは首を横に振った。

    「恐れながら申し上げます。従者様方が王から最初に頂く衣服は何よりも大切な物となります。ですので、どうか王自らお選び頂くことは出来ませんでしょうか」
    「……は? 俺が?」
    「は、はい……っ」

    凄んだことによって縮こまってしまったフェレディに、ため息を吐いたあと舌打ちをする。何となく、従者が期待しているのが分かった。それにまた心の中で大きなため息を吐く。服のセンスなんて恐らく無いし、自分は着られるものがあるだけで幸せと言える環境にあった。どうしたものかと部屋を見渡すと、警備をしている兵士の服が目に入った。

    「城兵が使っている制服を支給しろ。こいつらは俺を守るための一兵に過ぎねぇからな、それでいいだろ」
    「ありがとうございます」

    フェレディは感謝の意を述べて頭を下げると、命令通り城兵の制服を取りに行った。嬉しそうにしている従者達を見下ろすと、アンディートは立ち上がる。

    「一応服はやるが好きにしろ。それを着ても着なくてもいい」

    フェレディが急いで持ってきた制服を受け取った従者達はアンディートの言葉に頷きつつ微笑んでいた。これだけ喜ばれるのだから、本当に大切なものになるのだろう。適当に選んだことに若干の罪悪感を感じつつ、早速今後の方針を決めようと階段を降り始めた。

    「ア、アンディート様、つきましては従者様方にお名前も頂戴出来ませんでしょうか、と……」
    「……俺が?」
    「も、申し訳ございません! 出来れば御身自ら……!」

    ぺこぺこ頭を下げるフェレディに、また期待した様子でこちらを見つめる従者達。アンディートは大きく息を吸い込んで一気に吐き出すと、脱力してそのまま階段に座り込んだ。

    なんて面倒な幕開けなのだろうか。



    ──ムームア・シヴァ──

    「『忠実なる下僕よ、我が呼びかけに応え、我の剣となり盾となりこの身をを守れ!』」

    ムームアの呼び掛けに、玉座の間に二つの魔法陣が浮かんだ。そこにぼんやりと光が集まり、それは徐々に人を象っていく。精神力が減ったのが分かり、ムームアは大きく息を吐いた。自分の中の何かが確かに抉り取られる感覚、それに冷や汗すらかいている。まだ精神力の余裕があるが、これを一気に消費して大人数を同時召喚していたら、最悪死んでいただろう。そう思うほどの苦しみに耐えつつ、従者の誕生を見守った。
    光はとうとう完全に人の形となり、色づき始めた。ただの光の塊だったそれから確かに人の気配を感じ、二つの生命体はムームアを一度見上げるとすぐに跪いた。

    「ムームア・シヴァ陛下。我ら従者、この身が朽ちるまで貴方様に絶対なる忠誠を捧げる事を誓います」

    金色の瞳をした従者が、代表してムームアにそう宣言すると頭を垂れる。それに同調するように、スカイブルーの瞳をした従者も頭を下げた。
    王が身を守るために為す従者の召喚。ただの人では決して体験のできない出来事だが、ムームアは感動するより前に感じたことを口に出した。

    「こういう時って服きてないんだ……」

    確かに生命みな生まれた瞬間は衣服を身につけていないものだ。しかし従者という特殊な命なら別に最初から服を身につけててもいいのでは、そう思いながら全裸の男女二人を見下ろした。
    確か従者が王から最初に授かる衣服は、彼らにとって特別なものになる。面倒だと思いながら、ムームアは玉座から立ち上がると二人の側まで階段を降りた。
    これから彼らの人生には選択肢が沢山あるだろうが、それを決めるのは全て自分である。そんな優越感を感じながら、ムームアは窓の方へ近づいた。

    「……」

    ガラスに手を添えると、窓の外を眺める。すると綺麗に輝く星と月の下に、森が見えた。月光を反射したナイフが、憎しみに表情を歪めた兄が、一気にフラッシュバックする。恐怖、怒り、絶望。それらが押し寄せる中で、ムームアは思わずそばにあったカーテンを掴んだ。

    自分は兄を愛していた。そして兄も確かに自分を愛していたはずだ。しかし、結果はこうなってしまった。兄が自分を殺そうとした事実は変えられず、自身で兄を殺した事実もまた、変えられず。
    ただ幸せに暮らしたかった。温かいご飯を食べて、柔らかいベッドで寝て、愛してくれる家族に囲まれて。そんな普通が、なぜ自分には無いのだろうか。

    ムームアはそんなことを思いながら、手に篭もる力を強めていった。ふらつきそうになる体をどうにか抑えて、その激情に任せてそのまま強く手を引く。すると、ビリビリッ、とカーテンの破れる音が響き、ムームアはそれを従者二人の方へ投げ捨てた。

    「ボクの世界を守るためなら、なんでもやってやる……。絶対に裏切るな。ボクに従え……''スターシャ''、''ルナティス''」

    名を呼びながら、それぞれに視線が投げられる。名ずけられたことに喜んだ従者、スターシャとルナティスは投げつけられたカーテンで体を覆いながら深く頭を下げた。
    今日という日を決して忘れない。こんなに綺麗な満月が照らしている世界に、大きな絶望が生まれたこの日を。それを抱えたまま生きる決意を、星と月の名がつけられた従者を見ながら強く思った。

    この星空を、決して忘れることは無い。
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