もう少し、このまま『スタッフさんたち、なんだかぐいぐいでしたね。少し恥ずかしかったわ。あなたも調子に乗って顔近づけたりするんやから。まったく』
俺たちの特集を組んでくれた雑誌のグラビア撮影。適度な絡みもある写真を撮るのは正直興奮してしまった。照れているのを人前だから誤魔化すお前が、とにかく可愛くて。
『おいしいですね、パスタ。そういえば神谷がこのパスタは海外で食べたと言っていましたよね。またその話、聞かせてくれますか?』
いつだか話した何気ない会話も。お前はしっかり覚えていてまた聞きたいと笑顔を向けて。
『このスイーツ…見てください神谷。こちらのデコレーション。すごく参考になります』
パティシエとしての性でおいしい凝ったスイーツに出会えば声色が少し明るくなって早口で俺に聞いてくれとはしゃぐ姿が。
『人も少ないですから。特別ですよ』
隣を歩く帰り道、人通りが少なくなったからと手を繋いだ俺にまんざらでもなく指を絡め返したその優しさ。
『明日のオフは何して過ごしましょう。たまにはゆっくり部屋で過ごすのもええですね』
くすりと微笑んで俺と過ごす休日を幸せだと表情から伝えてくれる。
お前が好きだ。
「!?ちょっ神っ…はよ部屋入りますよ」
東雲の家に着いたらもう我慢なんて出来なかった。これが外なら危ない方向性のスキャンダルにもなるだろう。扉一枚隔てただけの空間。もう人目は気にしなくていい、二人きりの時間。もう少しだけ、離れたくない。ぐりぐりと顔を擦り付けて甘える。
「やだ」
子供じみているなと自分で感じつつ、俺は最愛の恋人に一言そう返した。