樹木に湖の恵みを隔離中華街の入口に揺れる木が一本。
少女が上を見上げると葉がないはずの枯れ木に揺れる葉が存在していた。
「此処がこうなってて…ってあ〜なにしてんのばぁかそっち討伐者居るし死んじゃうよ雑魚なの♡」
ギィギィと木を鳴らし、髪の毛をはらいながらケラケラ暴言を吐く悪い子な謎のあやかしに蓮暁は顔を顰める。
「きみ!なんで酷い事叫んでるの酷いよごめんなさいして」
「は…あっ」
謎のあやかしは蓮暁を見下ろすと驚いた顔をし固まった。
謎のあやかし、戯畄からすれば当たり前の事をしていたら唐突に正義で頭を埋め尽くされた討伐者に殺す意思もなく怒鳴られているのだ。
髪を下ろしている為微弱にノイズがかかっているが面倒くさい雰囲気が醸し出されている。
「謝れって…僕君にそんなこと言ってないじゃん…てかまず誰…」
「蓮暁は蓮暁っていうの!人に馬鹿とか言っちゃダメだから」
「リェンシャオ…長、リェンで良いとりあえずキミのそのカナヅチしまって欲しいんだけど…」
唐突に出される鈍器に血の気が引き後退り、後退る。
「だめわるいこには鉄槌を下さないとなの」
蓮暁がそう叫んだ瞬間戯畄が木から飛び降り中華街の中へ消えていく、直後悪い子が逃げたと蓮暁も駆け出した。
多くのあやかしが居る大通りを走り抜ける。
『く…し…』 『が…ッッ』 『大…好』 『殺し…』
そんな声が脳内を反響していった。
目に映るあやかしが変わる度ブツ切れに聞こえる声が悲鳴を上げ、耐えきれなくなった戯畄は咄嗟に路地裏へ逃げ込んだがそこはただの行き止まり。
逃げてしまった戯畄は無理矢理塀を登ろうとしているのを蓮暁に引きずり落とされてしまい、途端に戯畄の足首が歪な音を立てる。足首が着地に失敗し捻った様だった。
完全に動けなくなった戯畄は降参し塀に寄りかかって頭上を見上げ蓮暁を見つめ口角をヒクつかせる。
(うわぁ…絶対僕と真逆な子だこの子…)
聴かずともその真っ直ぐな眼差しで理解し、俯いて目を瞑りながらゆっくりと問いかけた。
「リェンだっけ鉄槌とか言ってたけどなんで僕だけ他の奴らも悪い子だよ?」
「だってあなた悪い言葉大声で叫んでたから他のあやかし達は言ってないよなんでそんなこと言うの」
「質問を質問で返すなよ…あれが僕の仕事なの」
「お仕事でもダメもっと優しく言わなきゃ」
「っお前………え。」
そう叫んだ後顔を捕まれぐいっと屈んだ蓮暁へ向けられる。先程より近い距離でその黒い瞳に吸い寄せられ、その奥底に眠る自身と似てないようで似たような光景が写り戯畄は目を見開いた。
本人は覚えていないのか、思い出したくないのかは不明だが怪我も合わさり壊れたテレビの様にしか映し出されない。
(この子には、もう一度会わないと行けない。)
「」
蓮暁はキョトンとした純粋な目で戯畄を見つめる。
自分も覚えていない記憶を覗かれているとも知らずに。
「僕が…悪かったよ。リェン。」
「…分かってくれたのありがとうきみはえらいね」
ぱっと手を離し満面の笑みを向ける蓮暁。彼女はじぃっと戯畄を見つめ問いかける。
「そういえばお名前は何ていうの」
「名前僕は戯畄だよ、リェン。突然で悪いんだけどまた会ってくれない何時も中華街の屋上や高い所に居るから」
名前を述べながら横を向き、心の中では決まっている答えを蓮暁にも投げかけた。
少しの沈黙の後、大きな声が路地裏に響き渡る。
「もちろんいいよまたキルが悪い子になってないか見てなきゃだから」