そういえば今日は キスの日 らしい。
教室で女子達が話していた。
遠くに住んでいるから、あいつには会えるわけもないけれど。
丁度一区切りついた課題の手を止め、ツラヌキは軽く自分の唇に触れる。
思い出されるのは、ゴールデンウィークの連休に久々に会った恋人とのくちづけ。
何度か軽く唇を触れ合わせ、その後は、あの唇の奥からから覗く舌が……。
思い出し、身体が熱くなる。
ゴクリと息を呑むと、普段は意識なんてしない口内の感触に、あの粘膜の触れ合いを連想してしまう。
やるべき事があるのに、じゅわりと溜まる唾液。
会社を継ぐにしろ、好きな事を極めるにしろ、どっちにしたって大事な勉強。ちゃんと頑張ると決めたのに。
少しだけ…そう言い聞かせ、唇に触れていた指はそっと下へ…。
その時響くバイブ音。画面を見れば、今ちょうど脳裏にいた人物からだ。
ビデオ通話を要求し、震え続けるケータイ。
今こんな顔して出たら、どうなってしまうか。
僅かな不安と、それよりきっと勝ってしまう期待を胸に、そっと通話ボタンを押した。