露台の一番星例えばベランダで咲いた小さな黄色い花。
青空を真っ二つに横切る飛行機雲。
濃い日蔭から見上げる木々の隙間。
昨日までは気にも留めず通り過ぎていたものが
こんなにもきらきらして見えるのは
あんたに出会ったからだ
***
「今日は暑かったね。これで少し涼しくなってくれるといいのだけど」
ファウストの柔らかい眼差しと優しい言葉を受けるのは、もちろん俺ではない。
玄関を抜けると、いつものように真っ直ぐベランダに向かい、小さなミニトマトの鉢植えに水をあげてくれた。
ミニトマトの鉢植えをバイト先の店長の奥さんから貰った時は正直一瞬迷った。
植物を育てるなんて俺には向いてないと思うし、枯らしたら虚しいからだ。まあでも、自家菜園なら多少興味があったから、結局譲り受けることにした。
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