「ねぇレオン、私ちょっとお願いがあるのですけれど……」
レオンが向かっている、辞書とレポートを交互に確認しながら書き綴っているデスクの上を、言いながらセリーヌはつぅ、と指先で撫でる。
「だめ」
顔を向いて言うこともなくレオンは即答した。
「……。せめて、こっちを向いて答えてくれませんこと?」
「……」
一呼吸置いて、レオンは椅子ごとセリーヌの方に向いた。
「また変なこと考えてるんでしょ? もう次はダメ」
「そんなこと……。ねぇ、レオン。お願いですの」
セリーヌは腰を屈め、両手を前に突き出し胸の谷間を強調するポーズを取り、艶のある潤んだ唇で上目遣いをした。レオンは長いため息をついた。
「あのさセリーヌ、僕たち何年の付き合いだと思ってるの?」
色仕掛けが効かないと悟り、セリーヌは拗ねた表情で答える。
「わかってますわよ……もう私の身体なんて見飽きてますわよね……」
「いやそうじゃなくて」
「レオン、最近ますます仕事が忙しいでしょう? 私との時間、全然作れてませんもの。私もいい年ですし、焦ってるって、自分でもわかってるのですけど……」
語尾が涙声で震えだす。
「レオンが良かったら、もっと若くてかわいらしい方と一緒になってくださいませね?」
頬に一筋涙が落ちてもなお、セリーヌは笑いかけていて。
「〜〜〜〜〜〜あぁもう!」
レオンは強引に抱き寄せ、セリーヌにキスをした。
「頑張って我慢してたのに、もう我慢できなくなったじゃないか!」
デスクの上のものを全て乱暴に放り出し、何もなくなったその上にセリーヌを組み敷いた。
「あっ……レオン、それは大事な資料じゃ」
「そんなの後! 悪いけど僕が満足するまで付き合ってもらうからね?」
余裕なさそうにネクタイを解くレオンを見上げ、セリーヌは背中がゾクゾクするのを感じた。
「……さっきの顔、絶対に僕以外の男に見せちゃダメだからね」
片手でセリーヌのシャツのボタンを外しながら、レオンは荒い息混じりで耳元で囁いた。
「………不要みたいで、良かったですわ」
独り言を小さく呟き、セリーヌはレオンの背中に腕を回した。
“新しい惚れ薬を試してほしいお願い”は次回のお楽しみにしておこう。セリーヌはレオンの頬にキスをして続きを促した。