「クロード、できたわ! これも良かったら食べて!」
テーブルに次々と並べられる料理の数々に、クロードは苦笑いを浮かべた。
「ありがとう。でも……だいぶ苦しいかな」
「どうしたの? やっぱりまだ疲れてる?」
「そこまでじゃないけど……まぁ、帰ってきたばかりだしね」
手に持っていたシルバーを置いて、クロードはソファに深く座り直した。
全ての戦いを終わらせてから、クロードはチサトを連れて地球に帰ってきた。基本的に惑星探査に向かう時はチサトが同行するのだが、今回は都合が悪く共にいられなかったのだ。久しぶりの再会に胸が躍ったチサトは、帰還日に合わせて腕によりをかけていた。
「今回は絶対一緒に行きたかったのにーーーっ!」
チサトが空中に文句を言いながら、クロードの隣に勢いよく座った。
「急な取材だったからね、仕方ないよ。それも大事な任務さ」
「わかってるわ……でも、正直淋しかった」
チサトは頭を傾けて、クロードの肩に乗せた。クロードがチサトの頭を撫でる。
「宇宙に出ると、なかなか帰ってこられないんだもの。色々、マイナスに考えてしまうこともあるのよ?」
「へぇ、例えば?」
「そうねぇ……例えば、ウワキとか?」
クロードが吹き出す。
「あの狭い艦内のどこでするって言うんだよ。もう皆に僕達の仲は知れ渡ってるのに」
「そうよね。……ねぇ、クロード?」
クロードがチサトに向き直る。
「私、今ここで二人でいられることが本当にうれしい。ほら……ネーデで旅している時は、あなたは絶対レナを選ぶと思っていたから」
「……チサト、でも僕は」
「わかってる、ラクアの夜のことは。もちろん信じてるわ。でも、結ばれた後の方が不安になるの。あなたを失うのが怖いから」
チサトがクロードの手に自分の手を重ねて笑う。
「私、あなたが思っている以上に、あなたのことを想っているのよ?」
「……わかってる。大丈夫、僕にはチサトだけだよ」
クロードは手を絡ませて、片手でチサトを抱きしめた。ふふ、と言ってチサトが抱きしめ返すと、身体を離す。
「それじゃ、その証明でもしてもらいましょうか?」
「……どうすればいい?」
クロードは少し声を低くして、片手でチサトのイヤリングを外しにかかる。チサトはクロードの目が野性的になったのを見て、スイッチが入ったと感じた。これから起こることを想像して身体の芯が熱を帯びる。
「じゃあ……まず私が一人でいた日数分キスしてもらおうかしら?」
「それは数えるのが大変だな……」
クロードは目を閉じたチサトをソファに寝かせて沈み込んでいく。チサトがクロードの首に両手を回す姿を最後に、二人の身体はソファの陰に隠れて消えていった。