ただ真っ直ぐに君の目を見れたなら吸血鬼ロナルドとの邂逅
第一印象は微妙。
吸血鬼らしからぬ《綺麗な蒼の目》に、銀の髪。
珍しい見た目だな、とか。整った顔の色男なんじゃないの、まあ私に比べれば数段劣るけど、とか思う吸対ドラルク
捕まればVRCへ収容されると知っているロナルド
抵抗に次ぐ抵抗、喚いて暴れる。
ドラルク隊総出で散々な目に遭いながらも宥めすかして説得し、
「解った。君がそこまで嫌がるなら暫くの間、匿ってあげよう」
とドラルク
「このまま彷徨ったところで他の隊か、退治人に捕まるだけだ」
「ウチの隊においで」
警戒を解くため、殊更優しく声を掛ける
それまで顔を背けていたロナルドは漸く視線を合わせ、
じっとドラルクの目を見詰めた後こくりと頷く
◇
ドラルク隊で匿い、監視する内に恋に落とされるドラルク
隊員たちと仲良くするロナがあまりにも可愛い
だが何故かロナはドラルクにだけ冷たい
声を掛けると“すん……”って顔をするし、そっぽを向くし、お菓子を作ってみても絶対に受け取らない(他隊員経由なら受け取るし喜んで食べるのでその様子を遠くから楽しむしかない吸対ドラ)
悩めるダンピール。
「隊長がセロリで脅かしたからでしょ」とか言われる
あれは事故だろう、と主張するが客観的事実に基づく推察で論破され敗北を喫する
依然としてVRCでの収容や検査を拒み続ける吸ロナ
時折ドラルクの預かり知らぬところで強制収容の話が上がるも怪力の為押さえつける術もなく、
責任者であるドラルクを筆頭とする、ドラルク隊改め吸血鬼ロナルド親衛隊の尽力により上手いこと匿われている
(とはいえ“口煩い”本部長が度々揶揄い混じりの警告を飛ばしてくるので、誤魔化し続けるのは難しいとドラルクは考えている)
仮にVRCに収容されたら職員を恋に落としまくるのかなあ、嫌だなあ、VRC爆発しないかなあ、とか思う吸対ドラルク
敵も仕事も減って一石二鳥
暫くの後、遂に《対象吸血鬼の身柄をVRCへ引き渡すように》と事実上の命令が下る
『これは最終通告であり、拒む場合は対象吸血鬼の殺処分も視野に入れるものとする』
あの怪力をどうにかできるものならやってみろ、
と笑いたくなるドラルク
(けれど、彼は。あのお人好しは。『お前の死が誰かの為になる』と馬鹿げた甘言を囁かれたとき、拒めるだろうか)
ドラルク隊所属の隊員達は皆、ロナルドに嫌われたくない、泣かれたくないと報告を拒む
「隊長が言ってくださいよ。いいじゃないですか元から好かれてないんだから」
辛辣な言葉と事実に泣きつつ、
ドラルク自らロナルドと話をすることに
ドラルクが呼んだところでロナルドは来ないので、彼とやたら仲の良いへんな隊員(吸血鬼)を仲介役とする
ロナルドさんが居なくなったら寂しくなりますね、としょぼくれるへんな
ふと、疑問を口にするドラルク
「君、ヘテロだっただろう。随分と彼に熱を上げているようだが、何がきっかけだね」
はて、と悩むへんな
「不思議なんですよ、これが。ある日突然というヤツです。彼の……ああ、そうだ。彼の目がキラキラとして見えたんですよね。青空みたいなあの目が」
「瞬間、ビビッときたわけです。これは運命だ、愛だ、天啓だ!」
興奮気味に大変身を遂げるへんな。
様子がおかしい、と思うドラルク。
そこへ訪れる吸ロナ
「なんだよ、へんな。大事な話って──……」
ドラルクに気付き慌てて目を逸らすロナルド
「嘘つき」
とへんなを睨むロナ
「大事な話なのは本当です! 嫌わないで!」
半泣きへんな
ドラルクから無言の圧を掛けられすごすごと退散する
「ロナルドくん」
ドラルクが名前を呼ぶがロナルドはそっぽを向いたまま
「君をVRCに預けることになった。検査結果次第だが、特に問題がなければ二週間程で戻って来られるはずだ」
「……問題が、あったら?」
目を合わすことなくロナルドが問い掛ける
「ここ新横浜は、大抵の高等吸血鬼が野放しになっている魔都だ。何故か? 能力如何よりも、思想に比重を置いているからだよ」
「確かに君は尋常ならざる怪力と耐性を持つ。だが、その頭の中はどうだ。押しに弱くてヒトの頼みは断れないし、疑うことを知らない。自分の身を抛ってでも誰かを助けようとする。……危険思想とは無縁の存在が君だ」
「逆だよ」
「ほう。満月でも見ると人格が変わるのかね」
「俺は変わらない。でも、相手を変えることなら」
「意識に干渉して、無理矢理。俺への好意を作り出すことなら、出来る」
「満月も、血も必要ない。──目を。目を合わせて願うだけでいい。『どうか俺を愛してくれ』って、そう強請るだけでいいんだ」
「たったそれだけで皆俺を好きになってくれる。俺が血を飲みたいと言えば首を差し出してくれる。俺の為に死んでくれと乞えば──……」
「……誰かを、失ったことが?」
「殺しかけたことは、ある」
「お前、見ただろ。あの日、俺の目を。好きだなって思う俺の目を、お前に愛されてみたいと思った俺の目を見ただろう!」
「だからお前は勘違いをしたんだ。した、してる。今も、今もお前は俺の魅了に掛かったまま──」
「ご熱弁のところ悪いんだが。私に半分流れる竜の血は、それはもう一等のモノでね。その上……はあ、思い出すのも実に不愉快だが優秀でクソみたいな師のお陰で耐性があるんだよ」
「特に、魅了には」
「分かるかい? つまりだ。この感情は全て本物で、私は私の意思で君を好きになったし、手篭めにしたいし、VRCもお上も知ったことではないから自宅に持って帰って隠してしまいたいなと思っているんだ」
──────
一般的に、能力の発現は運だといわれている。生まれて早々、森羅万象を操る力に目覚める者もいる一方。発現しないまま数百年過ごしたかと思えば、ある日突然、利用価値を一切見出だせないカスみたいな能力に目覚める者もいる。
しかし、一部論者の間で完全な運ではないという説がある。親吸血鬼に影響を受けるだとか、己の強い願望が影響するだとか。もしもその話が事実なら、俺が得たこの力は後者に該当するのだろう。
愛されたい、と常々思っていた。
吸血鬼らしくない吸血鬼。そう言われる度、突き放されるような気持ちになった。陽光も、十字架も、純銀も、大蒜も、流水も。吸血鬼が苦手とするもの全て平気。でも血は苦手だ。生きる為に仕方なく口にはするが、鉄臭いソレなんかよりグレープソーダの方がずっと美味しい。
兄貴もヒマリも、気にしないでいいと言ってくれる。それでも尚、貪欲な心は満たされないままだった。
だが、百五十八歳を過ぎた頃。俺は唐突にある力を得た。