大学で同級生の両片思いモブ霊「霊幻くん、この前言ってた講義のレジュメ、持ってきたよ」
「わりぃなモブ、助かった」
茂夫が差し出した2枚のレジュメを、新隆は少しだけ眉を下げて受け取った。A4サイズのそれは夕陽を受けて、茜色に染まっている。
「最近バイトが忙しくてさ」
「学生の本分は学業だと思うけど……」
「だよなあ」
新隆は茂夫の顔を見ると、目を僅かに細めて優しく笑った。なんでそんな顔をするのだろう、と茂夫が思っていると、冷たくて心地よい秋風がふわりと吹いて、微かな煙草の匂いを運んできた。
「……霊幻くん、煙草吸うんだっけ」
「悪い、嫌いだった?」
「ううん」
心臓が、ひっそりと痛みを訴えてくる。
(なんだか、寂しい匂いだ)
茂夫の浮かべる表情から何を読み取ったのか、新隆はデニムのポケットから紙製の箱を取り出した。
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