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    ベッターに載せてた鍵付きのタラマル駄文の派生

    🕸と🎀の幸福な生活なんとなく今日はタランザの機嫌が良さそうだったから、鼻歌を口ずさむタランザににこりと微笑んで「タランザ、好きなのサ」と伝えてみた。
    タランザはチラリとボクを一瞥してハァ、と溜息を吐いた。
    タランザが無表情だったから少しだけドキリと心臓が跳ねる。
    その次の瞬間タランザに鳩尾を強く殴られた。
    痛い、痛いよ。
    でもタランザはボクが泣いたり声を発するともっと怒るから我慢しなくちゃ。
    「うぐ…」痛い箇所を押さえる為の腕なんかなくて唇を噛み締めて痛みに耐える。
    タランザ、ボクはどうすれば良かったの?


     真夜中は嫌いだ。
    セクトニアを失ったあの日を思い出してしまうから。
    暗闇の中手探りで人形を探して、手繰り寄せるように六つの腕の中に閉じ込める。
    「ヒッ…」と息を詰まらせるような悲鳴が聞こえ、人形の体が小刻みに震える。
    人形は喋らないのに…ワタシは小さく舌打ちをしてありったけの力を込めて人形はの小さな体を抱きしめてあげた。
    「い”っいだい”っ…」
    喉が潰れたような掠れた苦しげな悲鳴をあげて、この圧迫感から脱れたがり震える人形。
    骨が軋む音がする、心も音を立てて崩れていく。
    ノコノコやってきたマホロアを拒んでワタシを選んだんだ、良い加減自分の立場を弁えて欲しいのね。


    「偶には洗って綺麗にしてあげるのね」タランザはそう言ってマルクを抱えて風呂場に連れて行った。
    暖かい風呂に入れてくれるのか、と思いきや冷水を乱暴にかけられる。
    まるで固い氷柱のようで、鋭い針のようで体が悲鳴をあげる。
    「色落ちしちゃうから陰干ししてあげるのね」タランザはマルクの体をぽんぽんと叩くように拭くと、暗い奥の部屋の椅子の上に座らせ、部屋の外に出て行った。
    「や、やめてっやめてっ」
    寒い、暗い、怖い…ゾワゾワと体を撫でる冷気を必死に堪えていたマルクの精神は、つい限界を迎えた。
    「タランザッタランザぁぁッ」思い出したくない、独りぼっちだった真っ暗闇な過去がマルクを襲い、マルクは半狂乱になって泣き叫ぶ。
    タランザが再びその部屋に入ったのは二日後だった。


    酸素を求めて口を開閉する金魚の如く苦しそうなボクを、タランザは刺すような視線で見下している。
    声なんてもう出ない、二日間叫びすぎて喉が潰れてしまった。
    ただ体が熱い、意識が朦朧とする。きっと風邪を引いたのだ。
    ごめんね、視線で訴える。
    タランザにこんなことをさせてしまってごめんね。
    ボクがもっと上手く人形になれたら、タランザは笑ってくれるのに。
    ごめんね、枯れたはずの涙が目尻に溜まり、頬を伝う。
    マホロアにあんな顔をさせてしまってごめんね。
    救ってくれたオマエを拒まなければ、マホロアは笑ってくれたのに。
    ごめんねごめんねごめんねごめんね…同じ言葉を反芻する。
    もう声にもならない、伝える術もない、どうにもなってくれない。
    ボクはどうなればよかったのか、もうわからない。


    「マルク、もう何処へでも行っていいのね。会いたいならマホロアに会いに行けばいいし、此処へはもう戻ってこなくていいのね」
    やっと熱が引いたある日、髪をとかしてもらっている最中、ふとタランザがまるで息を吐くようにそう告げた。
    熱は下がったが喉が潰れて声は出ない。勝手に動くと怒られるから身動きの取れないまま、マルクは体を硬直させ耳を疑った。
    「今までごめんね。もうキミは必要無いから」
    どうして、どうしてそんなこと言うの?ボクはタランザに捨てられたってこと?人形になりきれなかったから?タランザに捨てられたらボクは何処へ行けばいいの?拒絶してしまったしマホロアはきっとボクのことを受け入れてくれない。ボクはどうすればいいの?ボクは、ボクは…独りぼっちだ。
    「…マルク?マルクしっかりするのね!?」
    胸が苦しい、息ができない…マルクは過呼吸になって悶える。どんなに苦しくてもそれを伝える術も助けを求める為の腕もない。
    ボクには、もう、何もない。


    「マルク、今日は良い天気なのね」
    「マルク、庭の薔薇が綺麗に咲いたのね」
    「マルク、今日は少し暑いのね。半袖にしよう」
    「マルク、アフタヌーンティーの準備ができたのね。砂糖四つ入れるでしょう?今持ってくるから」
    「マルク、今日のお茶菓子はマドレーヌだよ」
    「マルク、日が陰ってきたからそろそろ屋敷に入ろう。体が冷えてしまうのね」
    「マルク、疲れちゃったのね?連日ドリフレで大忙しなの?無理しちゃ駄目なのね」
    「マルク、何故無視するの。怒ってるの?こっちを向いて欲しいのね」
    ねぇ、マルク、マルク、マルク、マルクマルクマルクマルクまるくまるくまるくまるくまるくまるくまるくまるくまる


    「ネェ、一体何をしてるノ?タランザ」
    ふと声をかけられたから、邪魔をするなと諌めようと声の主を睨みつける。
    マホロアが得体の知れない何かを見るかのように呆然と立ち尽くしている。
    マホロアにしがみつくように寄り添っている…あれ?
    「見ての通り、マルクと幸せに暮らしているのね」
    目の前の”マルク”によく似た少年は気まずそうにタランザから視線を逸らし、キュッとマホロアのマントの裾を握り締める。
    「…タランザ、ごめ」
    「お前は誰なのね。よくもまぁワタシの人形の真似をして…なんて下品な。で、要件は済んだのね?マルクとのアフタヌーンティーの邪魔だからさっさと帰るのね」
    フン、とマホロアと”マルク”によく似た少年から目を離し、自分に寄り添うように座るマルクにうっとりと手をかける。
    それは、マホロアと…マルクにはボロボロに擦り切れた人形にしか見えなかった。


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